コスモエネルギーHD、新中計で経常利益1,900億円目標 「Oil & New」で脱炭素と資源確保両立へ
コスモエネルギーホールディングス(5021)は18日、2026~2028年度を対象とする第8次連結中期経営計画を発表し、2028年度の経常利益目標を1,900億円(2025年度実績から14.7%増)に設定した。長期ビジョン「Vision 2035」をアップデートし、「Oil & New エネルギーと、その先へ。」をスローガンに、石油事業の収益力最大化と次世代エネルギー、NEXTグロースへの挑戦を強化する方針。3ヵ年で2,900億円の成長投資を行うとともに、総還元性向60%以上、配当165円/株以上を継続する積極的な株主還元も明示した。
第7次中計の総括と新中計への移行
コスモエネルギーホールディングスは、2023~2025年度の第7次連結中期経営計画において、在庫影響を除く経常利益1,657億円、ROE(自己資本利益率)14.4%を達成し、目標(経常利益1,650億円、ROE10%以上)を上回る堅調な実績を示しました。PBR(株価純資産倍率)も平均1.1倍、2025年度実績で1.2倍と1倍を超過し、企業価値向上を進めています。一方で、新領域への投資については目標の1,400億円に対し実績550億円にとどまり、一部投資を見送る結果となりました。この3年間で、インフレや金利上昇によるコスト増加、AI・デジタル化の加速、脱炭素社会への移行期間の長期化、そして中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー安全保障の重要性向上など、事業環境は大きく変化しています。こうした変化を踏まえ、同社は長期ビジョン「Vision 2030」を「Vision 2035」へアップデート。新長期ビジョンでは「石油と次世代エネルギーの取り組み一体化」「資源開発の拡大」「電力サプライチェーンの再構築」「NEXTグロースへの挑戦」を掲げ、持続的な企業価値向上を目指します。
第8次中期経営計画の主要数値目標と収益構造
2026~2028年度を対象とする第8次連結中期経営計画では、2028年度の経営目標として、在庫影響を除く経常利益1,900億円、当期純利益860億円、ROE12%以上、ROIC(投下資本利益率)7%以上を設定しました。これは2025年度実績の経常利益1,657億円から14.7%の増益、当期純利益855億円から0.6%の増益を見込むものです。前提となる原油価格は75ドル/バレル、為替レートは155円/ドル(2028年度)と設定されています。収益改善の要因として、電力サプライチェーン拡大、原油生産量最大化、製油所稼働率最大化、NEXTグロースの拡大、AI・デジタル活用などによる+650億円の収益改善を見込む一方、インフレや燃料油需要減退といった環境要因による▲400億円の逆風を織り込んでいます。セグメント別では、石油開発事業が2025年度の653億円から2028年度には860億円へと31.7%増益となり、全体の収益増を牽引する見込みです。これはUAEでの原油生産量が2025年度の43kB/Dから2028年度には51kB/Dへと18.6%増加する計画が大きく寄与します。
| 項目 | 2025年度実績 | 2028年度目標 | 増減率 | 前中計目標 | 業界水準・参考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 1,657億円 | 1,900億円 | +14.7% | 1,650億円 | - |
| 当期純利益 | 855億円 | 860億円 | +0.6% | 600億円以上 | - |
| ROE | 14.4% | 12%以上 | - | 10%以上 | - |
| ROIC | 8.2% | 7%以上 | - | 6%以上 | - |
成長戦略と重点投資「NEXTグロース」への布石
新中計では、3ヵ年累計で2,900億円を成長投資に充て、うち300億円を戦略投資枠として設定し、新規に創出される投資機会を機動的かつ柔軟に取り込む方針を明示しました。重点投資領域としては、資源開発に950億円、電力サプライチェーンに550億円、AI・デジタルに350億円、石油/次世代エネルギーに750億円を配分します。特に、AI・半導体・データセンターなど電力需要増加を牽引する市場におけるNEXTグロース領域に220億円(総投資額の内数)を投資し、高成長市場への本格参入を目指します。具体的には、半導体・電子部品材分野において、フォトレジスト用樹脂の販売量を2028年度までに2025年度比で1.3倍に、非シリコーン系グリースの販売量を同4倍に拡大する目標を掲げ、生産設備増強や商品ラインナップ拡充を進めます。また、熱対策材や重要鉱物(リチウム開発調査)への参入も視野に入れています。電力サプライチェーンにおいては、2025年度の23億kWhから2028年度には31億kWhへの小売販売量拡大(+34.8%)を目指すほか、風力発電容量を440MW(2025年度比+24.6%)、太陽光発電容量を50MW(2025年度比+354%)、系統用蓄電池容量を20MW(2025年度比+400%)へと大幅に拡大する計画です。
| 投資領域 | 2026-2028年度 成長投資額 | 重点施策例 |
|---|---|---|
| 資源開発 | 950億円 | ムバラス/ヘイル油田増産策、Offshore Block 4探鉱、リチウム開発調査 |
| 石油/次世代エネルギー | 750億円 | SAF供給拡大、岩谷産業との水素事業具体化、フォトレジスト用樹脂拡大、放熱材拡大 |
| 電力サプライチェーン | 550億円 | 陸上風力/蓄電池拡大、その他電源開発 |
| AI・デジタル | 350億円 | 製油所デジタルプラント化加速、バックオフィス領域のAI徹底活用 |
| 戦略投資枠 | 300億円 | 新規に創出される投資機会を積極的かつ柔軟に取り込み(M&A含む) |
生産性向上とGX戦略
同社は、AI・デジタル技術を徹底活用し、事業・経営基盤を一体で強化することで生産性向上を加速します。具体的には、バックオフィス領域の50%効率化や、業務AIの実装部門を100%にすることを目指し、AI・デジタル活用コア人材を現在の1,194名から1,300名へと増強します。これらのAI・デジタル施策により、3ヵ年累計で100億円規模の効果創出を目標としています。人材戦略(HRX)では、社員の主体的な挑戦と成長意欲を促す組織風土づくりを重視し、サーベイに基づく挑戦指数80ポイント、エンゲージメント指数70ポイントを目標に設定しました。年間21万円/人の教育投資を通じて、経営人材やマネージャー層の育成、AI活用能力の強化を図ります。環境戦略(GX)においては、2050年カーボンネットゼロ実現に向けたGHG排出削減目標を強化しています。2030年度には2013年度比で21%〜削減(第7次中計の2025年度実績19%から更なる削減目標)、2035年度には46〜60%削減、2040年度には73%削減を目指し、複数の将来シナリオを想定した柔軟なロードマップで外部環境の不確実性に対応していく方針です。これにより、エネルギー供給責任と脱炭素社会への貢献を両立させ、持続的な成長基盤を構築します。
「三位一体の資本政策」と株主還元
コスモエネルギーホールディングスは、第7次中期経営計画から継続する「三位一体の資本政策」(株主還元、財務健全性、資本効率)を堅持し、これらをバランスよく高めることで企業価値の持続的な向上を目指します。株主還元では、3ヵ年累計の総還元性向60%以上を継続するとともに、1株当たり配当金は165円/株以上を下限として成長に応じた安定配当を実施する方針です。これは第7次中計の配当実績(165円/株)を維持する水準であり、エネルギー業界全体で見ても安定した高水準の株主還元と言えるでしょう。財務健全性については、外部環境の不確実性を考慮しつつ、自己資本を6,500億円〜7,500億円のレンジで目標とすることで、強固な財務基盤を維持します。また、ネットD/Eレシオ(有利子負債純額/自己資本)は1.0倍を維持する目標です。資本効率では、ROE(自己資本利益率)12%以上を目指し、長期ビジョン「Vision 2035」で掲げた最終目標(ROE15%以上)の前段階であるVision 2030の目標(ROE12%以上)を前倒しで達成することで、資本効率の継続的な改善を図ります。
| 項目 | 2025年度実績 | 2028年度目標 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 総還元性向 | 60%以上(3ヵ年累計) | 60%以上(3ヵ年累計) | 在庫影響を除く当期純利益ベース |
| 配当 | 165円/株 | 165円/株以上 | 成長に応じた安定配当を継続 |
| ネットD/Eレシオ | 0.7倍 | 1.0倍維持 | 財務健全性の維持 |
| 自己資本 | 6,062億円 | 6,500〜7,500億円 | 外部環境の不確実性を踏まえた目標レンジ |
| ROE | 14.4% | 12%以上 |
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コスモエネルギーHDの新中計は、変化するエネルギー市場において、既存の石油開発事業で安定した収益を確保しつつ、成長が見込まれるNEXTグロース領域や電力サプライチェーンへの投資を加速するポートフォリオ戦略が明確です。特にAI・デジタル活用による全社的な生産性向上と100億円規模の効果創出目標は、事業構造変革への強い意欲を示しています。高水準の株主還元と堅実な財務目標は、短期的な株主価値向上と中長期的な成長投資のバランスを取る意図が読み取れ、投資家にとって魅力的な計画と言えるでしょう。エネルギー転換期の不確実性への対応として、GHG排出削減目標に複数のシナリオを想定している点も注目されます。
