日本製鋼所、中期経営計画「JGP2028」をアップデート、電力・原子力事業で目標を上方修正
日本製鋼所は2026年7月7日、2029年3月期を最終年度とする中期経営計画「JGP2028」のアップデートを発表し、連結売上高目標を当初計画から200億円増の4,000億円に、営業利益目標を30億円増の400億円にそれぞれ上方修正しました。市場環境の変化に対応した事業戦略の見直しと、特に電力・原子力製品の需要増加が素形材・エンジニアリング事業を大きく牽引し、計画達成を後押しする見通しです。
中期経営計画JGP2028、財務目標を上方修正
日本製鋼所が今回発表した中期経営計画「JGP2028」のアップデートは、2033年度に売上高5,000億円、営業利益500億円、ROE11〜12%を目指す長期ビジョン達成に向けた中間点として位置づけられています。今回のアップデートでは、最終年度である2029年3月期の連結財務目標を、当初計画から以下の通り引き上げました。
| 指標 | 当初計画 (2024.6開示) | アップデート | 増減額 | 増減率/差分 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,800億円 | 4,000億円 | +200億円 | +5.3% |
| 営業利益 | 370億円 | 400億円 | +30億円 | +8.1% |
| 営業利益率 | 9.7% | 10.0% | +0.3pp | |
| ROE | 10〜11% | 10〜11% | - | |
| EBITDA | 518億円 | 550億円 | +32億円 | +6.2% |
売上高は当初計画比で5.3%増、営業利益は同8.1%増と、収益性の改善が際立っています。ROEは当初目標レンジを維持しており、株主資本効率についても引き続き重視する姿勢を示しています。特に営業利益率は10.0%へと0.3ポイント改善する見込みで、高収益体質への転換を進める経営努力が数字に表れています。この目標達成に向け、同社は市場環境の変化を的確に捉え、既存事業の強化と新規事業の創出に加えて、人財投資とガバナンス強化を基本方針として掲げています。
市場環境変化に対応、事業戦略を重点的に見直し
日本製鋼所は、中期経営計画策定時からの市場環境の大きな変化を踏まえ、事業戦略の抜本的な見直しを実施しました。EV市場ではバッテリーセパレータフィルムの設備過剰や自動車メーカーの設備投資停滞が見られる一方で、地政学リスクの高まりは経済のブロック化を進行させ、各国での投資姿勢に影響を与えています。しかしながら、中国やインドといった新興国では投資回復の動きも見られます。
エネルギー政策においては、エネルギー安全保障の観点から高効率火力発電や原子力発電の需要が増大する見込みであり、脱炭素社会実現に向けた動きが同社の事業に新たな機会をもたらしています。さらに、AIの急速な普及とデータセンターの需要増加は、関連する電子デバイスや素材製品への需要を押し上げています。
こうした複合的な市場環境の変化に対し、同社は事業ポートフォリオの最適化と重点領域への経営資源配分を加速します。特に素形材・エンジニアリング事業では、電力・原子力製品の需要増に対応するため、タービン・発電機用ローターシャフトの設備能力を1.5倍に、原子力発電関連の生産能力を倍増させるなど、積極的な設備投資を決定。構造転換と新領域開拓を鮮明に打ち出しています。
セグメント別戦略と進捗、収益構造の変化
今回の財務目標上方修正の主な牽引役は、素形材・エンジニアリング事業です。2029年3月期の同事業の売上高目標は、当初計画の525億円から800億円へと約52.4%増の大幅な上方修正となりました。営業利益目標も当初計画の130億円から160億円へと約23.1%増、EBITDAも同48.0%増の222億円に引き上げられ、電力・原子力製品が成長を牽引する形です。これは、脱炭素社会への移行期において高効率火力発電や原子力発電の需要が高まるという見通しに基づき、同事業が持つ製造技術と実績が改めて評価された結果と言えるでしょう。
一方、産業機械事業は、EV市場の成長減速や設備投資の停滞を受け、2029年3月期の売上高目標は当初計画の3,180億円から3,150億円へと微減の1%減と下方修正されました。しかしながら、利益面では、電子デバイス他や防衛関連機器の売上増加に加え、樹脂製造・加工機械における中国、インド・中東市場への資源重点配分、セパレータフィルムの高性能化、アフターサービス強化などにより、収益性の維持・改善を図っています。2027年3月期までの進捗を見ると、売上高は当初計画を下回るものの、営業利益は上回る見込みであり、同社全体の収益構造が変化しつつあることを示しています。フォトニクス事業についても、窒化ガリウム(GaN)結晶やニオブ酸リチウム(LN)結晶の顧客評価・量産化対応を加速し、早期事業化を目指すとしています。
株主還元と経営基盤強化
日本製鋼所は、株主還元の基本方針として、連結配当性向35%以上を目標とし、同時に連結株主資本配当率(DOE)2.5%を下限として配当を実施する方針を継続します。2027年3月期予想の年間配当は92.0円と、2026年3月期と同水準を維持する見込みです。これは、安定的な株主還元と業績連動の両面を重視する姿勢を示しており、投資家にとって評価される点です。
また、持続的な企業価値向上を支える経営基盤の強化にも注力しています。具体的には、事業戦略に適合した多様な人材の獲得や、エンゲージメント向上による人的資本戦略を推進。研究開発費として2年間で累計118億円を投じ、革新技術の開発と新規事業の創出に繋げるとしています。
コーポレートガバナンスの強化では、社外役員比率を50%(社外取締役、社外監査役ともに)、女性役員比率を20%(女性取締役、女性監査役ともに25%)へと大幅に向上させ、多様な視点を取り入れた経営体制を構築しています。さらに、政策保有株式の縮減も進め、2026年3月期の対連結純資産比率11.8%から、2027年3月期には**10%以下**への縮減を目指す方針を掲げ、資本効率の改善を図ります。
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日本製鋼所の中期経営計画アップデートは、市場ニーズの変化に合わせた事業構造転換の加速を示唆します。特に素形材・エンジニアリング事業における電力・原子力製品への大胆な経営資源の集中は、同社の強みを活かし、脱炭素社会の事業機会捕捉を的確に捉える戦略的判断として注目されます。産業機械事業の再編と新規事業(フォトニクス)の早期事業化に向けた取り組みも着実に進展しており、高収益体質への転換と持続的な成長への期待が高まります。

