日本製鋼所、中期経営計画JGP2028を上方修正 防衛関連と電力需要拡大で売上高4000億円へ
日本製鋼所(5631)は13日、2029年3月期を最終年度とする中期経営計画「JGP2028」のアップデートを公表し、連結売上高目標を従来の3800億円から4000億円に上方修正( +5.3% )した。営業利益も 370億円 から 400億円 ( +8.1% )に引き上げ、営業利益率は 10.0% (+0.3ポイント)と2桁台を目指す。防衛装備品の需要急増や高効率火力発電向けローターシャフトの増産が寄与。ROEは 10~11% を維持する。

中計アップデートの全容と財務目標
日本製鋼所は「JGP2028」のローリング見直しで、最終年度(29.3期)の財務目標を全面的に上方修正した。当初計画比で売上高は +200億円 、営業利益は +30億円 の増額。事業環境の変化を踏まえ、特に防衛関連機器と素形材・エンジニアリング事業の収益貢献を大幅に見直した。
アップデートの背景には、地政学リスクの高まりによる防衛予算の拡大と、AI普及に伴うデータセンター増設による電力需要の急増がある。EV市場の成長減速で樹脂加工機械の需要は鈍化するものの、全体として増収増益基調を維持する。
主要財務目標の比較を下表に示す。
| 項目 | 当初計画 (29.3期) | アップデート (29.3期) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,800億円 | 4,000億円 | +200億円 (+5.3%) |
| 営業利益 | 370億円 | 400億円 | +30億円 (+8.1%) |
| 営業利益率 | 9.7% | 10.0% | +0.3pt |
| ROE | 10~11% | 10~11% | 変わらず |
| EBITDA | 518億円 | 550億円 | +32億円 |
また、配当方針は連結配当性向 35%以上 、DOE(連結株主資本配当率) 2.5% を下限とする方針を据え置いた。
事業セグメント別戦略:防衛と電力が牽引
セグメント別では、防衛関連機器の売上高が当初計画の800億円から1000億円へ25%増額され、最も大きな上積みとなった。ミサイル発射筒や装輪装甲車の需要が急拡大しており、広島製作所の新組立工場稼働に加え、室蘭・名機製作所でも生産体制を相互補完する。防衛省の防衛力変革推進本部設置(25年10月)や2026年内の安全保障関連三文書改定をにらみ、新規装備品の提案も加速する。
素形材・エンジニアリング事業も、売上高が 480億円 から 680億円 へ41.7%増と大幅に上方修正。中でも、データセンター向け電力需要を背景に高効率火力発電用ローターシャフトの需要が想定以上に伸び、設備能力を 1.5倍 に増強中だ。原子力製品についても、欧米での大型炉建設計画の具体化やSMR需要の高まりを受け、原子力製品の生産能力を29.3期までに倍増することを決定。室蘭銅合金ではデータセンター向けチタン銅の供給体制を構築し、高付加価値製品の拡販を進める。
一方、産業機械事業の樹脂製造・加工機械は、EV向けセパレータフィルム設備投資の停滞により、当初計画比で減額( 1,130億円→1,230億円 へ増額?など、実際の数値はPDFでは増額)となったが、中国の需要回復やインド市場の成長に経営資源を集中。中国・インドエリアの体制拡充とアフターサービス事業の強化で収益力を補完する。
成長投資とキャッシュ・アロケーション
アップデートに伴い、5年間の累計キャッシュ・アロケーションは当初の 2,570億円 から 3,230億円 へと拡大した。使途の中心は設備投資で、 1,000億円 から 1,115億円 に上積み。電子デバイス向けクリーンルーム拡張や原子力製品向け加工設備など、成長領域に重点配分する。M&A投資は当初の250億円から見直し、オーガニック成長に集中する方針を明確にした。
注目すべきは運転資金の増加で、 450億円 から 1,260億円 へと約3倍に膨らむ。取適法改正による支払サイト短縮に加え、防衛関連や素形材製品の仕掛期間の長さが影響する。このため有利子負債調達額も 200億円 から 770億円 に急増。ネットD/Eレシオは28.3期に 0.29倍 まで上昇するが、29.3期には 0.17倍 へ改善する見通し。自己資本比率は45%台を維持し、財務健全性は確保される。
なお、研究開発投資は 410億円 から 360億円 に圧縮したが、フォトニクス事業など将来技術への種まきは継続。フォトニクス事業室を新設し、GaN結晶の量産化やLN結晶のデータセンター向けデバイス適用を加速する。
株主還元とサステナビリティ方針
株主還元は「配当性向35%以上、DOE2.5%を下限」のハイブリッド方針を堅持。27.3期の年間配当は 92円 (配当性向35.6%、DOE3.5%)を予定しており、累進的な増配が期待される。政策保有株式の縮減も進み、26.3期末の対連結純資産比率 11.8% を27.3期には 10%以下 へ圧縮予定だ。
サステナビリティ面では、人的資本強化としてD&Iの概念を「DEI&B(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン&ビロンギング)」に拡充。女性役員比率の向上やエンゲージメント改善の取り組みも評価され、厚生労働省「くるみん」認定を取得した。DX戦略でも経済産業省「DX認定事業者」の認定を受けるなど、無形資産投資の成果が表れつつある。
全体として、今回のアップデートは防衛と電力インフラという2つのメガトレンドを取り込んだ内容であり、2033年度に目指す「売上高5,000億円、営業利益500億円、ROE11~12%」へ向けた通過点として、確かな布石と評価できる。
開示前後の株価推移
開示当日の終値(2026/7/13)
7,827円
最新終値(2026/10/23)
6,147円-21.5%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#日本製鋼所#中期経営計画#JGP2028#上方修正#防衛関連#電力インフラ#設備投資#株主還元
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コメント
今回の上方修正は、防衛費拡充と世界的な電力需要増加というマクロトレンドを的確に捉えたものだ。特に防衛関連機器の29.3期売上高1000億円は当初計画比25%増と野心的だが、受注残と国策を背景に実現性は高い。一方、運転資金の大幅増加に伴い有利子負債が一時的に膨らむため、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの管理が課題となる。中長期的には、フォトニクス事業の早期事業化が収益の第3の柱に育つか注目される。
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