カシオ計算機、英子会社の再販維持行為巡る集団訴訟が終結、業績への影響は軽微
カシオ計算機は16日、英国子会社Casio Electronics Co. Ltd.(Casio UK)に対して提起されていた損害賠償請求の集団訴訟が、原告の自発的取り下げにより終結したと発表した。同訴訟は英国の消費者団体「Which?」が、2013年から2018年にかけての楽器製品の再販売価格維持行為を巡り、消費者が不当に高い価格を強いられたとして損害賠償を求めていたもの。カシオ本体への申立てはなく、子会社のみが当事者だった。同社は今期業績への影響は軽微としている。原告取り下げで訴訟終結という幕切れとなった。
訴訟の背景:再販維持疑いで集団提訴
本件訴訟は、2013年2月から2018年4月まで英国で行われた当社楽器製品の販売に関し、Casio UKが再販売価格維持行為(RPM)を行ったとする英国競争・市場庁(CMA)の決定に端を発する。2023年8月、消費者団体Which?が代表する原告Elisabetta Sciallis氏が、英国競争審判所(CAT)に損害賠償を求める集団訴訟を提起。RPMとは製造業者が小売業者に対し、商品の販売価格を指示・強制する行為で、英国競争法の下では重大な違法行為とみなされる。本件では、カシオ本体は申立書の送達を受けておらず、あくまで英国子会社のみが訴訟当事者であった点が特徴的だ。欧州では近年、集団訴訟制度の拡充が進み、消費者団体が主導する訴訟が増加しており、日本企業の海外子会社も標的となるリスクが高まっている。今後、グローバル企業は現地競争法コンプライアンスの一層の強化が求められる。
訴訟取り下げの舞台裏と早期終結の要因
原告Which?は訴訟を取り下げる決定をし、2026年7月13日付で英国競争審判所(CAT)がこれを承認、本件訴訟は終結した。取り下げの理由は明らかにされていないが、訴訟追行の困難さや、RPMによる損害の立証の難しさ、あるいは和解交渉の可能性などが考えられる。カシオ側は「原告による訴訟取り下げ」とだけ発表しており、和解金の支払いがあったかどうかについては言及していない。本件の早期終結は、長期化が予想された訴訟リスクが予期せぬ形で解消したことを意味する。欧州の集団訴訟では、原告側が十分な証拠を集められずに取り下げるケースも少なくない。訴訟終結の結果、同社は法務コストの増加やブランドイメージの毀損を回避できたと評価できる。
今期業績への影響と市場の受け止め
同社は今回の訴訟終結による今期連結業績への影響について「軽微」と明言している。そもそも訴訟の中心が子会社であり、かつ損害賠償額が特定されていなかったことから、財務への直接的な影響は限定的と見られていた。アナリストの間では、訴訟リスクの消滅を好感する見方がある一方、再販維持行為の疑いが完全に晴れたわけではないため、欧州規制当局の監視は継続する可能性が指摘されている。実際、CMAは過去のRPM事案に対して高額の制裁金を課しており、企業の価格戦略には慎重さが求められる。訴訟リスクの早期除去により、経営資源を本来の事業成長に集中できる環境が整ったと言える。今後の為替変動や地政学リスクを踏まえつつ、堅調な電子楽器事業や時計事業への注力が期待される。
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カシオ計算機にとって本件は、欧州での子会社リスクマネジメントの試金石となった。原告の自発的取り下げという結果は、訴訟戦略としての早期解決を評価する声が多いが、根底にある競争法違反の疑念が完全に払拭されたわけではない。グローバルコンプライアンス体制のさらなる強化が不可欠であり、今後の海外事業展開における教訓として社内共有されることが望まれる。

