日本発條株式会社 の会社詳細
日本発條株式会社
ニッパツ
2026年3月期 第3四半期

ニッパツ・2026年3月期Q3、営業利益10.9%減の313億円——HDD向け回復も自動車用減産が響く

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ニッパツ
日本発条
HDDサスペンション
自動車部品
減収減益
価格転嫁
半導体設備投資
データセンター関連
配当維持
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

5,964億円

+0.6%

通期予想

8,000億円

進捗率75%

営業利益

314億円

-10.9%

通期予想

470億円

進捗率67%

純利益

252億円

-15.7%

通期予想

400億円

進捗率63%

営業利益率

5.3%

ニッパツ(日本発条)が12日に発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 0.6%増5,963億円、営業利益が同 10.9%減313億円 となった。データセンター向け高容量HDD(ハードディスク駆動装置)用部品の需要回復が追い風となった一方、主要顧客である日系自動車メーカーの減産 や、米国による追加関税の先行負担、将来を見据えた設備投資に伴う減価償却費の増加が利益を押し下げた。通期予想は据え置いたものの、自動車関連事業の苦戦を情報通信関連の伸長で補う構図が鮮明となっている。

業績のポイント

当第3四半期累計期間の業績は、微増収ながらも各段階利益で前年を下回る結果となった。売上高は 5,963億円(前年同期比 +0.6%)と、HDD向けサスペンションの数量増加により、過去最高水準を維持した。しかし、本業の儲けを示す営業利益は 313億円(同 △10.9%)に減少し、親会社株主に帰属する四半期純利益も 251億円(同 △15.7%)と苦戦を強いられている。

利益面での下押し要因となったのは、主に自動車関連市場での生産台数減少と、コスト増の発生である。特に国内およびタイにおける 日系メーカーの減産影響 が大きく、主力製品であるシート事業の採算が大幅に悪化した。また、情報通信分野では高容量HDD向け需要が回復したものの、米国での追加関税負担やインド拠点の連結化に伴う立ち上げ費用、半導体プロセス部品への積極的な設備投資による償却負担が重なり、増収分を利益に結びつけにくい構造となっている。

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主要セグメント別では、情報通信関連の回復と自動車関連の低迷が対照的な動きを見せた。HDD用サスペンションを扱うDDS事業は、データセンター需要の拡大により売上高が 920億円(前年同期比 +14.0%)と大きく伸長した。一方で、自動車用シート事業は売上高 2,135億円(同 △5.8%)、営業利益 39億円(同 △45.1%)と、主要顧客の車種構成変化や減産の影響を直撃する形となった。

セグメント売上高営業利益前年同期比 (売上/利益)
懸架ばね1,230億円4.3億円△1.7% / 黒字転換
シート2,135億円39億円△5.8% / △45.1%
精密部品777億円25億円+2.6% / △12.4%
DDS(HDD用部品)920億円191億円+14.0% / +0.4%
産業機器ほか900億円53億円+6.7% / △20.6%

懸架ばね事業については、国内需要が減少したものの、タイにおける 原材料価格上昇分の製品価格への転嫁 が進展し、前年同期の営業損失から黒字へと転換した。産業機器ほか事業では、半導体プロセス部品の需要は継続的に拡大しているが、将来の需要増に対応するための設備投資負担が先行し、利益率を押し下げる結果となった。

セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
懸架ばね1,245億円20%4億円0.3%
シート2,146億円35%39億円1.8%
精密部品789億円13%25億円3.2%
DDS920億円15%192億円20.8%
産業機器ほか1,002億円16%54億円5.3%

財務状況と資本政策

当第3四半期末の総資産は、前期末比 347億円 増の 7,310億円 となった。これは将来の成長に向けた設備投資による有形固定資産の増加や、保有上場株式の時価上昇に伴う投資有価証券の増加が主な要因である。自己資本比率は 58.3%(前期末比0.2ポイント低下)と、依然として高い水準を維持しており、強固な財務基盤を継続している。

株主還元については、年間配当予想を 66円(中間33円、期末予想33円)としている。前年度の実績である69円(特別配当6円を含む)と比較すると表面上は減配に見えるが、普通配当ベースでは実質的に維持 されている。また、当期間中に自己株式の取得(約22億円)を実施しており、機動的な資本政策を通じて株主利益の還元と資本効率の向上を図る姿勢を示している。

リスクと課題

今後の経営課題として、外部環境の変化への対応力が問われている。特に以下の3点が主要なリスクとして挙げられる。

  • 日系自動車メーカーの生産動向: 国内および東南アジア(タイ)における主要顧客の生産調整が継続する場合、シート事業および懸架ばね事業の収益回復が遅れるリスクがある。
  • 米国の通商政策: 精密部品事業において、米国による 中国製品への追加関税 の先行負担が発生しており、米中対立や保護主義的な政策がさらなるコスト増を招く懸念がある。
  • 固定費の抑制と投資回収: 半導体プロセス部品や高容量HDD向けに積極的な設備投資を行っているが、需要の立ち上がりが想定を下回った場合、増加した減価償却費が利益を圧迫し続ける可能性がある。

通期見通し

2026年3月期の通期連結業績予想については、従来予想を据え置いた。自動車分野での減産影響は残るものの、DDS事業におけるHDD向け需要の堅調な推移を見込んでいる。

項目前回予想今回修正前期実績前期比
売上高8,000億円8,000億円8,014億円△0.2%
営業利益470億円470億円521億円△9.9%
純利益400億円400億円481億円△17.0%

下期にかけては、懸架ばね事業での価格転嫁の継続や、産業機器分野での高付加価値製品の販売拡大により、利益率の改善を目指す方針だ。

AIアナリストの視点

ニッパツの今決算は、まさに「自動車の冬とITの春」が混在する内容となりました。特筆すべきはDDS事業の売上高が 14%増 と、データセンター投資の恩恵を直接的に受けている点です。同社は世界シェアの高いHDD用サスペンションに強みを持ち、AIサーバー向けの需要回復が下支えとなっています。

一方で、利益面での最大の懸念は、米国追加関税の負担(精密部品事業)と、半導体関連への先行投資負担です。これらは「将来のためのコスト」という側面もありますが、足元の自動車減産という本業の不振をカバーしきれていない現状があります。

投資家目線では、自己資本比率58%超 という盤石な財務を背景に、どれだけ早期に自動車関連の不採算を是正し、半導体・HDDという成長分野を利益の柱に育て上げられるかが、今後の株価再評価の鍵となるでしょう。