リンナイ・2026年3月期Q3、売上・営業益ともに過去最高——国内高付加価値品が牽引、中南米企業の買収で攻勢
売上高
3,394億円
+2.1%
通期予想
4,700億円
営業利益
371億円
+5.9%
通期予想
500億円
純利益
275億円
+20.4%
通期予想
330億円
営業利益率
10.9%
リンナイが発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)決算は、売上高が前年同期比 2.1%増 の 3,393億9,100万円 、営業利益が 5.9%増 の 371億3,200万円 となり、いずれも第3四半期累計として過去最高を更新した。国内でハイブリッド給湯器やガス衣類乾燥機などの高付加価値商品が好調に推移したほか、米国や豪州での販売伸長が中国市場の減速を補った。純利益についても、ブラジル子会社における独禁法関連の和解成立に伴う引当金戻入益の計上もあり、 20.4%増 の 275億3,800万円 と大幅な増益となった。
業績のポイント
当期間の業績は、原材料やエネルギー価格の高騰という逆風を受けながらも、徹底した原価低減と商品ミックスの改善によって過去最高の利益水準を達成した。特に国内市場において、省エネ性能に優れたハイブリッド給湯暖房システム「ECO ONE」や、家事の時短ニーズを捉えたガス衣類乾燥機「乾太くん」が、新設住宅着工の減少を跳ね返す勢いで売上を伸ばした。
利益面では、売上高営業利益率が前年同期の 10.5% から 10.9% へと改善した。これは、高利益率な新製品の販売比率が高まったことに加え、オーストラリアでの買収企業のシナジー効果が発現したためである。親会社株主に帰属する四半期純利益は 275億3,800万円 (前年比 +20.4% )となり、一株当たり純利益も 197.54円 と前年同期の 161.22円 から大きく上昇している。
| 指標 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,323億円 | 3,393億円 | +2.1% |
| 営業利益 | 350億円 | 371億円 | +5.9% |
| 経常利益 | 388億円 | 418億円 | +7.6% |
| 四半期純利益 | 228億円 | 275億円 | +20.4% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
日本セグメントは、売上高 1,546億2,700万円 (前年同期比 +2.3% )、営業利益 210億6,800万円 (同 +11.6% )と、グループ全体の成長を力強く牽引した。物価高により新築市場が停滞する中で、リフォーム需要をターゲットとした戦略が的中し、高付加価値商品の販売が拡大した。浴室暖房乾燥機の無償修理費用の発生というマイナス要因を、増収効果と原価改善で十分に吸収した形だ。
海外市場では地域ごとに明暗が分かれた。米国では住宅市場の不透明感が続くものの、主力のコンデンシング給湯器が好調で、売上高は 8.5%増 の 517億9,800万円 を確保した。一方、中国セグメントは景気低迷と政府の補助金政策終了が直撃し、売上高は 17.1%減 の 371億7,400万円 と苦戦を強いられた。しかし、現地での機動的な生産調整や経費抑制により、営業利益の減少幅を 6.7%減 に留めるなど、粘り強い経営を見せている。
オーストラリアは非常に好調で、売上高が 24.0%増 、営業利益が 77.5%増 と爆発的な成長を記録した。現地での脱炭素化の流れに乗り、ヒートポンプ式給湯器の販売が急増したことが主因である。また、後述するM&Aの効果も現れ始めており、海外事業の新たな柱としての存在感を高めている。
| セグメント | 売上高 (前年比) | 営業利益 (前年比) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 1,546億円 (+2.3%) | 210億円 (+11.6%) | 高付加価値品が牽引 |
| アメリカ | 517億円 (+8.5%) | 11億円 (+12.3%) | 高効率給湯器が好調 |
| オーストラリア | 324億円 (+24.0%) | 18億円 (+77.5%) | 電化シフト・M&A効果 |
| 中国 | 371億円 (△17.1%) | 57億円 (△6.7%) | 景気低迷の影響大 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1,546億円 | 46% | 211億円 | 13.6% |
| アメリカ | 518億円 | 15% | 12億円 | 2.3% |
| 中国 | 372億円 | 11% | 57億円 | 15.4% |
| オーストラリア | 324億円 | 10% | 18億円 | 5.7% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は、前年度末比で 120億円 減少の 5,945億5,100万円 となった。これは主に、現金及び預金が事業投資や配当支払により減少したことによるものである。一方で、負債も順調に圧縮が進んでおり、自己資本比率は前年度末の 66.9% から 68.8% へと上昇し、極めて強固な財務基盤を維持している。
株主還元については、増配方針を堅持している。2026年3月期の年間配当は、前期実績の80円から20円増額となる 100円 (中間50円・期末予想50円)を予定している。これは、同社が掲げる持続的な成長と株主への利益還元の両立を具現化したものであり、投資家にとってもポジティブな材料といえる。自己株式についても、発行済株式総数の減少を通じた1株当たり価値の向上を図っている。
戦略トピック:中南米市場の深耕とM&A
当四半期の特筆すべき動きとして、2025年10月に実施したペルーの「MT Industrial S.A.C.」の全株式取得(子会社化)が挙げられる。取得価額は約 111億7,600万円 で、中南米エリアにおける事業規模拡大を目的とした戦略的な投資である。これにより、同社は給湯器だけでなく厨房機器や衛生設備など、幅広い住設機器の販売網を南米全域に広げる足掛かりを得た。
この買収に伴い、暫定的に 87億3,700万円 ののれんを計上した。今後は現地法人の販売リソースとリンナイの製品開発力を融合させ、成長余力の大きい新興国市場でのシェア拡大を急ぐ方針だ。また、ブラジル子会社における独禁法関連の訴訟についても、現地当局との和解が成立したことで不透明感が解消され、攻めの経営に転じる環境が整ったといえる。
リスクと課題
堅調な決算の一方で、経営陣は以下のリスク要因を注視している。
- 中国市場の長期停滞: 不動産市況の回復が遅れており、消費マインドの冷え込みが続くリスクがある。
- 原材料・エネルギー価格の再騰: 落ち着きを見せているものの、地政学リスクによる供給網の混乱や価格変動は依然として予断を許さない。
- 各国の政策転換: 米国での関税政策の変更や、各国での環境規制(脱炭素化)のスピード感が事業環境に与える影響は大きい。
特に、豪州や欧州で加速する「脱ガス・電化」への対応は急務であり、ヒートポンプ式給湯器など次世代型製品へのシフトをどれだけ迅速に進められるかが今後の競争力を左右する。
通期見通し
リンナイは、2026年3月期の通期業績予想について、前回発表数値を据え置いた。第3四半期時点での営業利益進捗率は 74.3% と順調であり、第4四半期に需要の端境期を迎える業界特性を考慮しても、計画達成は十分に射程圏内にあると考えられる。国内の底堅いリフォーム需要と、豪州などの成長市場が中国の不振を補う構造が続く見通しだ。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 (据置) | 前期実績 (2025/3) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,700億円 | 4,700億円 | 4,603億円 |
| 営業利益 | 500億円 | 50,000百万円 | 460億円 |
| 純利益 | 330億円 | 33,000百万円 | 297億円 |
今回の決算で特筆すべきは、国内市場における「価値転嫁」の成功です。住宅着工数が減少する逆風下で、単なるガス給湯器から「ECO ONE(ハイブリッド)」や「乾太くん」といった高付加価値品へのシフトを鮮烈に実現しており、これが営業利益を過去最高に押し上げました。
一方で、中国市場の依存度低下と、代わってオーストラリアが第2の成長エンジンとして台頭している点は、地域リスクの分散という観点から非常に評価できます。また、ペルー企業の買収によって手薄だった中南米市場を補完したことは、長期的な成長ポテンシャルを高める一手となるでしょう。
注目すべきは「電化シフト」への対応力です。豪州でのヒートポンプ給湯器の成功例を、今後欧州や他の地域へどう横展開していくかが、ガス機器メーカーとしてのリンナイの真の正念場になると見ています。
