アンドエスティHD・2026年2月期通期、売上高3,043億円で増収増益——EC会員2,170万人到達、米国撤退で構造改革急ぐ
売上高
3,044億円
+3.8%
通期予想
3,140億円
営業利益
165億円
+6.5%
通期予想
172億円
純利益
95億円
-1.2%
通期予想
105億円
営業利益率
5.4%
アパレル大手のアンドエスティHD(旧アダストリア)が発表した2026年2月期通期決算は、連結売上高が前期比 3.8%増 の 3,043億5,100万円 、営業利益が同 6.5%増 の 165億2,400万円 となりました。自社ECプラットフォーム「and ST」の会員数が 2,170万人 を突破し、国内のカジュアルファッション需要を底堅く取り込んだ一方、米国事業からの撤退に伴う特別損失の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は同 1.2%減 の 94億9,800万円 に留まりました。同社は「Play fashion!プラットフォーマー」への進化を掲げ、M&Aによるブランド拡充と事業ポートフォリオの最適化を加速させています。
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、国内の雇用・所得環境の改善を背景に、主力のカジュアルファッション事業が堅調に推移しました。売上高は 3,043億5,100万円 (前年比 +3.8% )、営業利益は 165億2,400万円 (前年比 +6.5% )となり、原材料費や人件費の高騰を増収効果と販管費の効率化で跳ね返しました。
一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は 94億9,800万円 (前年比 -1.2% )とわずかに減少しました。これは、不採算となっていた米国の連結子会社「Velvet, LLC」の持分譲渡に伴う関係会社株式売却損や、店舗・のれんの減損損失を特別損失として計上したことが要因です。戦略的な「負の遺産」の整理を断行した形となります。
期初予想に対しては、4月と9月の天候不順による季節衣料の苦戦が響き、売上・利益ともに 未達 での着地となりました。しかし、自社ECと店舗を融合させた「and ST」会員数は前期末比で 200万人増 と大幅に伸長しており、国内における顧客基盤の盤石さを示す結果となりました。
| 項目 | 前期実績 | 当期実績 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,931億円 | 3,043億円 | +3.8% |
| 営業利益 | 155億円 | 165億円 | +6.5% |
| 経常利益 | 159億円 | 168億円 | +5.4% |
| 当期純利益 | 96億円 | 94億円 | -1.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の アパレル・雑貨関連事業 は、売上高 2,897億7,000万円 (前年比 +4.0% )、セグメント利益 173億100万円 (前年比 +3.7% )とグループ全体の成長を牽引しました。グローバルワークやニコアンドといった主力ブランドに加え、M&Aで取得した「カリマー」や「トゥデイズスペシャル」の新規連結が寄与しています。特に海外では、中国大陸でのクロスチャネル戦略や台湾でのマルチブランド戦略が奏功し、米国撤退の影響を除けば着実な成長を遂げました。
一方、飲食事業を含む その他(飲食事業) セグメントは、売上高 147億5,900万円 (前年比 +1.0% )となったものの、 4億7,400万円 のセグメント損失(前期は7億1,700万円の損失)を計上しました。外食産業特有の原材料価格や光熱費の上昇が利益を圧迫しており、赤字幅は縮小しているものの、依然として 収益性の改善が急務 となっています。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | セグメント利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| アパレル・雑貨 | 2,897億円 | +4.0% | 173億円 | +3.7% |
| その他(飲食等) | 147億円 | +1.0% | △4.7億円 | — |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| アパレル・雑貨関連事業 | 2,898億円 | 95% | 173億円 | 6.0% |
| その他(飲食事業) | 148億円 | 5% | -474百万円 | -3.2% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比 65億7,900万円増 の 1,396億8,800万円 となりました。現金及び預金が 37億6,900万円 増加したほか、新規連結に伴う資産増が影響しています。自己資本比率は 58.3% と前期の 57.9% から微増し、高い財務健全性を維持しています。
株主還元については、1株当たり年間配当を前期と同じ 90円 (中間45円・期末45円)としました。連結配当性向は 43.7% となっています。また、新たな資本政策として DOE(連結自己資本配当率)4.5%を下限 とすることを基本方針に追加しました。これは、純利益の変動に左右されず、株主に対して 安定的な還元を継続する 姿勢を鮮明にしたものです。
リスクと課題
同社が直面する主なリスクは以下の通りです。
- 気象条件の変動: 4月や9月に見られたような天候不順は、季節衣料の販売機会ロスに直結し、在庫管理の難易度を高める要因となります。
- 外部環境の不透明感: 原材料価格の高騰、物流コストの上昇、円安の進行が、アパレル・飲食両事業の原価率を下押しするリスクがあります。
- 海外事業の再構築: 米国事業からの撤退を完了した一方で、東南アジアやグレーターチャイナでの投資加速が計画通りに収益化できるかが焦点となります。
- 労働力不足: 国内外の店舗運営における人件費上昇や人材確保の難化が、収益性を圧迫する懸念があります。
通期見通し
2027年2月期の通期連結業績は、売上高 3,140億円 (前期比 +3.2% )、営業利益 172億円 (同 +4.1% )と、 増収増益 を見込んでいます。不採算の米国事業を整理したことで、利益体質の改善が期待されます。配当は引き続き年間 90円 を予定しており、株主還元を維持しながら、成長余地の大きい東南アジア市場への投資や国内店舗の大型化を推進する方針です。
| 項目 | 2026年2月期実績 | 2027年2月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,043億円 | 3,140億円 | +3.2% |
| 営業利益 | 165億円 | 172億円 | +4.1% |
| 当期純利益 | 94億円 | 105億円 | +10.5% |
今回の決算で特筆すべきは、不採算だった米国事業「Velvet」からの完全撤退を決断したことです。これにより、グローバル戦略を「グレーターチャイナ」と「東南アジア」に絞り込む姿勢が明確になりました。
また、自社EC会員数が2,000万人を超え、もはや単なる衣料品小売ではなく、顧客データを活用した「プラットフォーマー」への移行が着実に進んでいる点は、就活生にとっても将来性を感じるポイントでしょう。
懸念点は、飲食事業の赤字が継続していることです。原材料高騰という逆風下で、いかにブランド価値を毀損せずに収益化を図るかが、新体制(アンドエスティHDへの持株会社移行後)の真価を問われる部分となります。
