クスリのアオキHD・2026年5月期Q3、売上高13.7%増の4,228億円——「フード&ドラッグ」戦略で増収増益、年間56円の大幅増配へ
売上高
4,228億円
+13.7%
通期予想
5,600億円
営業利益
214億円
+7.4%
通期予想
230億円
純利益
154億円
+10.3%
通期予想
155億円
営業利益率
5.1%
株式会社クスリのアオキホールディングスが発表した2026年5月期第3四半期(2025年5月〜2026年2月)の連結決算は、売上高が前年同期比 13.7%増 の 4,228億7百万円、営業利益が同 7.4%増 の 214億20百万円 となり、着実な増収増益を達成した。物価高を背景に消費者の節約志向が強まる中、生鮮食品を強化した 「フード&ドラッグ」型店舗 への転換とドミナント出店が功を奏した。また、設立40周年の記念配当を含め、年間配当を前期の4倍となる 56円 とする計画を据え置いている。
業績のポイント
クスリのアオキHDは、ドラッグストア業界で激化する競争を背景に、規模の拡大と利便性の追求を加速させている。第3四半期累計の売上高は 4,228億7百万円(前年同期比 13.7%増)に達し、本業の儲けを示す営業利益も 214億20百万円(同 7.4%増)と伸長した。親会社株主に帰属する純利益は 153億76百万円(同 10.3%増)となり、すべての段階利益で前年を上回る結果となった。
好業績の原動力となっているのは、ドラッグストアに生鮮食品等の食料品を組み合わせた「フード&ドラッグ」型の店舗戦略だ。消費者が一箇所で買い物を済ませたいという 「ワンストップショッピング」 への需要を的確に捉え、既存店の客数増加に繋げた。前期に計上された株式報酬費用の反動(今期は計上なし)という特殊要因はあるものの、これを除いたベースでも営業利益は 5.3%増 と、実質的な収益力は向上している。
業績推移(通期)
セグメント別動向
同社は「近隣型小売事業」の単一セグメントを運営しているが、商品部門別の売上動向を見ると、特に「フード(食品)」部門が成長を牽引していることが鮮明だ。食品部門の売上高は 2,238億8,100万円(前年同期比 19.1%増)と、全体の伸びを大きく上回る勢いを見せた。売上構成比でも 53.0% を占め、もはやドラッグストアの枠を超えた「地域のインフラ」としての立ち位置を強めている。
地域別では、強固なドミナント(集中出店)を形成する北信越に加え、四国エリアでの躍進が目立つ。2025年6月には香川県の食品スーパー「株式会社ミワ商店」を完全子会社化し、西日本での拠点網を強化した。この結果、四国地方の売上高は前年同期比 88.2%増 の 139億2,200万円 と急拡大。北信越・関東・東海の既存エリアを軸にしつつ、新エリアへの進出が着実に成果を上げている。
| 商品部門 | 販売実績(百万円) | 前年同期比 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| フード(食品) | 223,881 | +19.1% | 53.0% |
| ライフ(日用品) | 71,120 | +7.2% | 16.8% |
| ビューティ(化粧品) | 48,493 | +6.3% | 11.5% |
| 調剤 | 44,551 | +15.6% | 10.5% |
| ヘルス(医薬品) | 34,760 | +3.9% | 8.2% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 近隣型小売事業(単一セグメント) | 4,228億円 | 100% | 214億円 | 5.1% |
財務状況と資本政策
財務面では、積極的な成長投資と大胆な株主還元が同時に進められている。当第3四半期末の総資産は前期末比 361億13百万円増 の 3,885億78百万円 となった。これは新規出店に伴う建物及び構築物の増加(110億16百万円増)や、建設仮勘定の増加(55億70百万円増)など、店舗ネットワーク拡大のための設備投資が主因だ。
一方、資本政策においては 大規模な自己株式の取得と消却 を実施した。経営陣は資本効率の向上を重視し、第3四半期累計で約340億円規模の自己株式を消却。これにより自己資本比率は前期末の 41.4% から 35.7% へと低下したが、ROE(自己資本利益率)を意識した資本構成への移行を図っている。
また、投資家にとって最大の注目点は配当の大幅増額だ。2026年5月期の年間配当は前期の14円から一気に 56円 へと引き上げられる。これは普通配当(8円)に加え、設立40周年の 記念配当40円 を実施するためであり、安定した利益成長を背景に株主への利益還元を一段と強化する姿勢を示した。
リスクと課題
順調な拡大を続ける同社だが、経営環境にはいくつかのリスク要因も挙げられている。
- 商圏の狭小化: 同業他社によるM&Aや大量出店が続いており、店舗間の競合が激化している。これにより1店舗あたりの商圏が縮小し、顧客獲得コストが上昇するリスクがある。
- 物価高騰と消費動向: 円安や資源高を背景とした物価上昇に対し、消費者の節約志向がさらに強まる可能性がある。食品等の低利益率商品の比率が高まる中、いかに全体の採算性を維持するかが課題となる。
- 人材の確保: 出店スピードを維持するためには、薬剤師や店長候補などの優秀な人材確保が不可欠であり、労務コストの増加が利益を圧迫する懸念がある。
通期見通し
2026年5月期の通期連結業績予想については、従来公表していた数値を据え置いた。売上高は前期比 11.7%増 の 5,600億円 を見込む。営業利益は同 13.5%減 の 230億円 となる見通しだが、これは前期に株式報酬費用に関わる一過性の戻り利益があったことの反動であり、実質的な事業成長は継続していると会社側は説明している。
| 項目 | 前回予想(25/7/3公表) | 今回予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 560,000 | 560,000 | 501,478 |
| 営業利益 | 23,000 | 23,000 | 26,589 |
| 経常利益 | 22,700 | 22,700 | 27,511 |
| 親会社株主に帰属する純利益 | 15,500 | 15,500 | 17,798 |
クスリのアオキHDの決算で最も注目すべきは、ドラッグストアという業態を「スーパーマーケット化」させることで成長スピードを維持している点です。食品部門の売上構成比が53%に達している事実は、同社がもはや薬局ではなく、生鮮食品をフックに集客する「地域密着型のディスカウンター」に変貌していることを物語っています。
投資家的な視点では、3Q時点で営業利益が214億円に達しており、通期予想の230億円に対する進捗率は 93.1% と極めて高い点がポイントです。通期予想を据え置いたのは4Qにコスト増を見込んでいるか、あるいは相当に保守的な見通しを立てている可能性が高いでしょう。
また、自己株式の消却と記念配当を組み合わせた総還元性向の高さも特筆に値します。北信越のガリバーが西日本へ攻め上る中、ミワ商店のような地域密着型スーパーの買収は今後も続くと予想され、規模の利益をどこまで追求できるかが中長期的な焦点となります。
