ファーストリテイリング・2026年8月期Q1、営業利益34%増の2,109億円——海外ユニクロ好調で通期予想を上方修正
売上高
1.0兆円
+14.8%
通期予想
3.8兆円
営業利益
2,109億円
+33.9%
通期予想
6,500億円
純利益
1,474億円
+11.7%
通期予想
4,500億円
営業利益率
20.5%
ファーストリテイリングが発表した2026年8月期第1四半期(2025年9〜11月)決算は、売上収益が前年同期比14.8%増の1兆277億円、営業利益が同33.9%増の2,109億円と、大幅な増収増益となった。国内外のユニクロ事業が全ての地域で増益を達成し、グローバルでの成長が加速している。好調な業績進捗を反映し、同社は通期の業績予想を上方修正するとともに、年間配当を前回予想から40円引き上げ、前期比40円増の540円に増額する方針を発表した。

業績のポイント
当第1四半期は、主力の「ユニクロ」事業が世界各地で需要を捉え、四半期ベースでの売上収益が初めて1兆円の大台を突破した。営業利益は前年同期の1,575億円から2,109億円へと急拡大しており、営業利益率は20.5%(前年同期は17.6%)と大幅に向上している。この増益の背景には、売上総利益率が55.2%(同0.7ポイント改善)に上昇したことに加え、売上高販管費比率が35.2%(同1.7ポイント改善)と効率的な経営が奏功したことがある。金融収益もネットで157億円のプラスとなり、税引前四半期利益は同15.3%増の2,266億円を計上した。
経営陣は、世界中の顧客から信頼される「グローバルNo.1ブランド」を目指し、インフレ時代に対応した経費構造の改革と、商品開発・ブランディングの強化に注力している。特に、収益の柱が多様化したことで、特定の地域に依存しない強固な収益基盤が構築されつつある。また、親会社の所有者に帰属する四半期利益も同11.7%増の1,474億円となり、四半期としての過去最高益を更新した。今回の決算は、同社が掲げる世界トップレベルの成長シナリオが着実に進展していることを裏付ける内容となった。
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別では、海外ユニクロ事業が全体の成長を強力に牽引した。売上収益は6,038億円(前年同期比20.3%増)、事業利益は1,173億円(同38.0%増)と驚異的な伸びを見せている。北米と欧州では、ブランド認知の高まりにより新規顧客が拡大し、ともに2桁の増収増益を記録した。懸念されていた中国大陸についても、10月後半からの気温低下に伴う冬物の好調や、eコマースプラットフォーム「JD.com」との協業開始による新規客増により、増収および2桁増益を確保した。東南アジア・インド・豪州地区も、旅行ニーズに合わせた在庫戦略が的中し、好調を維持している。
国内ユニクロ事業も、売上収益2,990億円(前年同期比12.2%増)、事業利益624億円(同20.2%増)と極めて堅調だった。既存店売上高は同11.0%増となり、スウェットやジーンズといった秋物から、気温低下後のヒートテックやパフテックなどの冬物へスムーズに需要が移行した。ジーユー(GU)事業については、売上収益913億円(同0.8%増)と微増にとどまったが、事業利益は114億円(同20.0%増)と大幅な増益となった。これはトレンド商品の不足という課題があったものの、品番数の絞り込みと売れ筋商品への在庫集中により、欠品防止と値引率の抑制に成功したためである。
| セグメント | 売上収益 | 前年同期比 | 事業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 国内ユニクロ | 2,990億円 | +12.2% | 624億円 | +20.2% |
| 海外ユニクロ | 6,038億円 | +20.3% | 1,173億円 | +38.0% |
| ジーユー | 913億円 | +0.8% | 114億円 | +20.0% |
| グローバルブランド | 330億円 | △7.6% | 17億円 | △14.8% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 国内ユニクロ事業 | 2,991億円 | 29% | 629億円 | 21.0% |
| 海外ユニクロ事業 | 6,039億円 | 59% | 1,183億円 | 19.6% |
| ジーユー事業 | 914億円 | 9% | 117億円 | 12.8% |
| グローバルブランド事業 | 331億円 | 3% | 19億円 | 5.7% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比4,270億円増の4兆2,864億円に拡大した。この主な要因は、積極的な投資活動の一環としてその他の短期金融資産が1,601億円増加したほか、デリバティブ金融資産が991億円増加したことによるものである。親会社所有者帰属持分比率は58.4%(前期末は58.9%)と、高い自己資本水準を維持しつつ、成長投資と株主還元のバランスを保っている。1株当たり親会社所有者帰属持分は8,161.23円に達し、着実に株主価値が積み上がっていることが示された。
キャッシュ・フロー(CF)面では、営業活動によるCFが1,917億円の収入(前年同期は876億円)となり、利益成長に伴いキャッシュ創出力が大幅に向上している。投資活動では定期預金の預入や有形固定資産の取得により844億円の支出となったが、これは将来の店舗網拡大を見据えた前向きな投資である。株主還元については、業績の上方修正に伴い、中間配当と期末配当をそれぞれ前回予想から20円ずつ引き上げ、各270円(年間540円)とする予定だ。同社は持続的な成長と安定的な還元を経営の最重要課題と位置付けており、今回の配当増額はその姿勢を象徴している。
通期見通し
第1四半期の好実績を受け、2026年8月期の通期連結業績予想を上方修正した。通期の売上収益は前期比11.7%増の3兆8,000億円(前回発表比500億円増)、営業利益は同15.2%増の6,500億円(同400億円増)を見込む。特に海外ユニクロ事業の全地域での好調な推移が、修正の大きな原動力となっている。一方で、為替レートの変動やグローバルな地政学リスク、原材料価格の動向などは不透明であり、下期以降も機動的な在庫管理と経費コントロールが求められる状況だ。
| 指標 | 前回発表予想 | 今回修正予想 | 前期実績 | 修正幅 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3兆7,500億円 | 3兆8,000億円 | 3兆4,005億円 | +500億円 |
| 営業利益 | 6,100億円 | 6,500億円 | 5,642億円 | +400億円 |
| 親会社所有者帰属純利益 | 4,350億円 | 4,500億円 | 4,330億円 | +150億円 |
| 1株当たり当期利益 | 1,417.92円 | 1,466.64円 | 1,411.44円 | +48.72円 |
リスクと課題
同社が直面している主なリスクとして、以下の点が挙げられる。第一に、為替相場の変動である。海外売上比率が拡大する中で、円安は売上高の押し上げ要因となる一方、輸入コストの上昇による売上総利益率の低下を招く可能性がある。第二に、商品トレンドの不一致だ。ジーユー事業で一部マストレンド商品の不足が指摘されたように、消費者の好みの変化を早期に捉え、生産・在庫計画に反映させる機動力が不可欠である。
また、サステナビリティに関するリスクも無視できない。同社はサプライチェーンにおける温室効果ガス排出削減目標を30%に引き上げるなど、環境配慮への取り組みを強化しているが、これらの対応コストが利益を圧迫する可能性がある。さらに、グローバル展開を加速させる上で、各国の労働環境や人権保護、競争環境の変化といった多角的なリスクマネジメントが、持続的な成長を実現するための重要な鍵となる。
ファーストリテイリングの決算は、まさに「グローバル企業」への脱皮が完了したことを強く印象づける内容でした。
- 海外ユニクロの圧倒的な勢い: かつて収益の柱だった日本国内の比率が低下し、今や海外ユニクロが売上の約6割、利益の半分以上を稼ぎ出す構造になっています。特に欧米でのブランド浸透と、一時期停滞した中国市場の再成長は、成長持続性に対する懸念を払拭しました。
- 利益率の質的向上: 単に売上が伸びているだけでなく、販管費比率の改善(-1.7pt)が非常に大きい。インフレ下でコストが増加する中、無駄を削ぎ落とす経営改革が数字として結実しています。
- GUの効率化: 売上が横ばいに近い中で20%の増益を達成したことは、値引きに頼らない「売り切る力」が向上したことを示しています。
今後の注目点は、この高い利益率を維持しながら、柳井社長が掲げる「売上10兆円」という長期目標に向け、さらに北米やインドなどの巨大市場をどこまで深掘りできるかにあるでしょう。為替影響を除いても実力値で成長している点は、投資家にとって非常にポジティブな材料と言えます。
