イオン・2026年2月期、営業収益10兆円突破で過去最高——ツルハ連結化とDXが利益を牽引

小売国内最大手のイオンは9日、2026年2月期の連結決算を発表した。営業収益は前期比 5.7%増 の 10兆7,153億円 となり、国内小売業として初めて10兆円の大台を突破した。営業利益も 13.8%増 の 2,704億円 と過去最高を更新。ドラッグストア大手ツルハホールディングスの連結子会社化や、PB「トップバリュ」の好調、さらにDX活用による店舗オペレーションの効率化が収益力の底上げに大きく寄与した。
決算の数字通期
1年間の確定値(前年比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 今期予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 10.7兆円 | +5.7% | 12.0兆円 |
| 営業利益 | 2,705億円 | +13.8% | 3,400億円 |
| 純利益 | 727億円 | +167.5% | 730億円 |
| 営業利益率 | 2.5% | ||
業績のポイント
当連結会計年度の連結業績は、営業収益、営業利益、経常利益のすべてにおいて過去最高を更新する歴史的な決算となった。売上高にあたる営業収益は 10兆7,153億円(前期比 +5.7%)、営業利益は 2,704億円(同 +13.8%)に達した。親会社株主に帰属する当期純利益は 726億円(同 +167.5%)と、前期から大幅な増益を記録している。
この好調を支えたのは、主力の小売事業における構造改革の進展と、戦略的なM&Aの成果である。特にヘルス&ウエルネス事業では、2026年1月にツルハホールディングスを連結子会社化したことが、収益規模の拡大と段階取得に係る差益の計上につながった。また、物価上昇に伴う消費者の節約志向に対し、価格訴求力の高いプライベートブランド(PB)「トップバリュ」の拡充が奏功し、客数の確保と荒利益率の改善を同時に実現したことが、増収増益の大きな要因となった。
| 項目 | 2025年2月期実績 | 2026年2月期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 10兆1,348億円 | 10兆7,153億円 | +5.7% |
| 営業利益 | 2,377億円 | 2,704億円 | +13.8% |
| 経常利益 | 2,242億円 | 2,430億円 | +8.4% |
| 当期純利益 | 271億円 | 726億円 | +167.5% |
セグメント別動向
全セグメントにおいて積極的な投資と改革が進んだ。主力のGMS(総合スーパー)事業は、営業収益 3兆6,918億円、営業利益 214億円(前期比 +31.0%)と伸長した。衣料品での専門店モデル展開や、ネットスーパーの物流効率化が寄与し、不振が続いていた部門の黒字化が定着した。SM(スーパーマーケット)事業は、いなげやの連結寄与により営業収益 3兆857億円 を確保したが、人件費や物流費の上昇が響き、営業利益は 298億円(同 8.2%減)の減益となった。
最も成長が著しかったのはヘルス&ウエルネス事業である。ウエルシアとツルハの経営統合を見据えた体制構築により、営業収益は 1兆6,333億円(前期比 +23.5%)、営業利益は 523億円(同 +45.4%)と爆発的な成長を見せた。一方、ディベロッパー事業も既存モールのリニューアルやインバウンド需要の取り込みが奏功し、営業利益 709億円(同 +33.7%)とグループの稼ぎ頭としての地位を強固にしている。金融・サービス各部門も、キャッシュレス決済の拡大や映画事業の回復により安定した収益を維持した。
| セグメント名 | 営業収益 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| GMS事業 | 3兆6,918億円 | 214億円 | 0.6% |
| SM事業 | 3兆857億円 | 298億円 | 1.0% |
| ヘルス&ウエルネス | 1兆6,333億円 | 523億円 | 3.2% |
| 総合金融事業 | 5,675億円 | 608億円 | 10.7% |
| ディベロッパー事業 | 5,224億円 | 709億円 | 13.6% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| GMS事業 | 3.7兆円 | 35% | 214億円 | 0.6% |
| SM事業 | 3.1兆円 | 29% | 299億円 | 1.0% |
| ヘルス&ウエルネス事業 | 1.6兆円 | 15% | 524億円 | 3.2% |
| 総合金融事業 | 5,675億円 | 5% | 609億円 | 10.7% |
| ディベロッパー事業 | 5,224億円 | 5% | 709億円 | 13.6% |
財務状況と資本政策
総資産は、ツルハホールディングスの連結化や新規出店、DX投資の拡大を背景に、前期末比 1兆5,363億円増 の 15兆3,696億円 となった。自己資本比率は、金融事業を除いたベースで 14.3%(前期は14.2%)と、大規模なM&Aを継続しながらも健全な財務水準を維持している。キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュ・フローが 1兆1,265億円 と大幅なプラスを確保しており、これを原資に機動的な成長投資を続けている。
株主還元については、連結配当性向 30% を目標に掲げ、安定的な増配を目指す方針を継続している。2025年9月1日付で実施した1株につき3株の株式分割を考慮した実質的な年間配当は、前期比で増配となる見通しだ。内部留保資金については、将来の事業発展に不可欠なデジタルトランスフォーメーション(DX)や、ベトナムを中心としたアジア圏への投資、さらには店舗の脱炭素化に向けた環境投資に優先的に配分する経営判断を下している。
リスクと課題
過去最高益を更新した一方で、外部環境には不透明感が残る。会社側は以下のリスク要因を注視している。
- コストプッシュ圧力: 原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇、さらには全国的な賃上げに伴う人件費の増加が、利益を圧迫する要因となっている。
- 消費動向の変化: 物価上昇による実質購買力の低下が続いており、消費者の節約志向が一段と強まる可能性がある。PB商品の価格優位性を維持しつつ、価値訴求型のサービスをいかに提供できるかが鍵となる。
- 地政学・環境リスク: 中東情勢やウクライナ情勢の長期化による物流混乱リスク、および脱炭素社会に向けた環境規制への対応コストが将来的な重石となる懸念がある。
- 競争環境の激化: 業界再編が進む中で、EC事業者や他業態との競争は激化しており、デジタルとリアルの融合(OMO)の成否が長期的な競争力を左右する。
通期見通し
2027年2月期の通期連結業績予想については、さらなる増収増益を見込む。営業収益は前期比 12.0%増 の 12兆円、営業利益は 25.7%増 の 3,400億円 を計画している。これはツルハグループとのシナジー創出が通期で寄与することに加え、首都圏・近畿圏でのSM事業再編による効率化効果を織り込んだものである。戦略トピックとして、イオンモールやイオンディライトの完全子会社化による「グループ内ガバナンスの強化と迅速な意思決定」を掲げ、資本効率のさらなる向上を図る方針だ。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想(27/2期) | 前期実績(26/2期) |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | ― | 12兆円 | 10兆7,153億円 |
| 営業利益 | ― | 340,000百万円 | 270,459百万円 |
| 親会社株主に帰属する純利益 | ― | 73,000百万円 | 72,677百万円 |
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/4/8)
1,960.5円
最新終値(2026/10/23)
1,181円-39.8%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#イオン#8267#増収増益#過去最高益#ツルハホールディングス#ドラッグストア再編#10兆円突破#株式分割#トップバリュ#小売業界
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コメント
今回の決算で最も注目すべきは、国内小売業として初の「営業収益10兆円突破」という象徴的なマイルストーンを達成した点です。単なる規模の拡大だけでなく、営業利益率の改善が伴っている点に評価が集まるでしょう。
特に、かつての「お荷物」であったGMS(総合スーパー)事業が構造改革を経て利益貢献し始めていること、そしてツルハを傘下に収めたことで、食品(SM)に次ぐ第二の成長エンジンとして「ヘルス&ウエルネス」が完全に確立されたことが、投資家にとってのポジティブな材料です。
就活生にとっても、従来の「小売業」の枠を超え、金融、不動産開発、そしてIT・デジタルを駆使した生活インフラ企業への変貌を遂げている姿が数値に現れており、非常にダイナミックな成長フェーズにある企業と言えます。今後は、ツルハ・ウエルシアの統合シナジーをいかに具体化し、アジア圏での成長を加速させられるかが、次なる株価上昇の焦点となるでしょう。
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