業界ダイジェスト
東京海上ホールディングス株式会社 の会社詳細
東京海上ホールディングス株式会社
東京海上ホールディングス
2026年3月期
2026年5月19日

東京海上HD・2026年3月期、純利益7.1%減の9,804億円——海外好調も国内利益減、大幅増配と2,000億円の自社株買いを発表

東京海上ホールディングス
保険業界
減益
海外展開
増配
自社株買い
バークシャー・ハサウェイ
M&A
IFRS適用
株主還元
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

8.9兆円

+5.1%

営業利益

1.3兆円

-7.6%

純利益

9,804億円

-7.1%

通期予想

8,300億円

進捗率118%

営業利益率

15.2%

東京海上ホールディングスが発表した2026年3月期の連結決算は、最終的な儲けを示す親会社株主に帰属する当期純利益が前期比 7.1%減9,804億円 となりました。海外保険事業が堅調に推移し、全体の収益規模は拡大したものの、国内の損害保険・生命保険の両事業における利益減少が響いた形です。一方で、同社は株主還元を強力に推進する方針を示しており、年間配当を前期の172円から 218円 へと大幅に引き上げたほか、最大 2,000億円 の自己株式取得を決定しました。

業績のポイント

2026年3月期の連結業績は、売上高にあたる経常収益が前期比 5.1%増8兆8,722億円 と増収を確保しました。主力の保険引受収益が 6兆5,279億円 (同 4.0%増 )と伸びたことが寄与しています。世界経済が米国の設備投資や個人消費に支えられて底堅く推移するなか、グローバルな事業展開が収益の柱となりました。

一方で、本業の儲けを示す経常利益は前期比 7.6%減1兆3,486億円 に留まりました。これは、気候変動による災害の激甚化や地政学リスクの増大に伴う保険引受費用の増加が要因です。特に国内事業において、正味支払保険金が 2兆8,833億円 (同 4.2%増 )に膨らんだことが利益を押し下げました。純利益も 9,804億円 と、過去最高水準だった前期を下回る結果となっています。

項目2025年3月期2026年3月期前期比
経常収益8兆4,401億円8兆8,722億円+5.1%
経常利益1兆4,600億円1兆3,486億円△7.6%
当期純利益1兆552億円9,804億円△7.1%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

セグメント別では、海外事業と国内事業で明暗が分かれました。海外保険事業は経常利益が前期比 14.4%増5,590億円 と大きく伸長しました。北米を中心とした好調な保険市場環境を捉え、買収した米国の保険代理店事業などが収益に貢献しました。同社は米国でのコレクターカー向け保険代理店(Riser Topco III社)の買収を完了しており、得意とするニッチ市場での成長が鮮明になっています。

対照的に、国内損害保険事業は経常利益が 7,444億円 (前期比 16.6%減 )と苦戦しました。正味収入保険料は自動車保険や火災保険の改定効果で増収となったものの、物価高騰に伴う修理費の上昇や、自然災害への支払い増加が利益を圧迫しました。国内生命保険事業も経常利益 236億円 (同 66.3%減 )と低迷しており、資産運用環境の変化や保険金支払いの増加が響いています。

セグメント経常収益経常利益利益前年比
国内損害保険3兆7,902億円7,444億円△16.6%
国内生命保険7,961億円236億円△66.3%
海外保険4兆5,998億円5,590億円+14.4%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
国内損害保険事業3.8兆円43%7,445億円19.6%
国内生命保険事業7,962億円9%236億円3.0%
海外保険事業4.6兆円52%5,591億円12.2%

財務状況と資本政策

財務基盤は引き続き強固で、2026年3月末の連結総資産は前期末比 7,245億円増31兆9,619億円 となりました。有価証券の評価差額金は縮小したものの、純資産合計は 5兆4,575億円 に達しています。キャッシュフロー面でも、営業活動により 5,842億円 のキャッシュを創出しており、成長投資と株主還元の両立に向けた原資を確保しています。

特筆すべきは 積極的な株主還元姿勢 です。当期の年間配当を1株当たり 218円 とし、配当性向を 42.3% まで引き上げました。さらに、2026年5月から12月にかけて、上限 2,000億円 (1億3,000万株)の自社株買いを実施することを決定しました。これは機動的な資本政策を遂行し、資本効率(ROE)を高める経営判断によるものです。

また、米バークシャー・ハサウェイ傘下のナショナル・インデムニティー・カンパニーとの戦略的提携を発表しました。第三者割当増資の形式で自己株式を処分し、約 2,874億円 を調達する見込みです。これにより、グローバルな再保険分野での協働やM&Aを加速させる方針です。

リスクと課題

今後の経営における主なリスクとして、会社側は以下の点を挙げています。

  • 気候変動リスク: 大規模な台風や洪水などの自然災害が国内・海外で頻発しており、保険金支払額が想定を大きく上回る可能性があります。
  • 市場環境の変動: 世界的なインフレ継続に伴う事故修理費の上昇や、金利・為替レートの急激な変動が資産運用収益や保険負債に与える影響を注視しています。
  • 地政学・サイバーリスク: 不透明な国際情勢による物流の混乱や、サイバー攻撃の高度化に伴うサイバー保険の損害増が懸念材料です。

これらの課題に対し、同社は海外事業のさらなる分散投資と、AI等のテクノロジーを活用した損害調査の効率化を進めることで、収益の安定化を図るとしています。

通期見通し

2027年3月期の業績予想より、国際財務報告基準(IFRS)を任意適用します。IFRSベースでの親会社の所有者に帰属する当期利益は 8,300億円 を見込んでいます。日本基準との直接比較は難しいものの、国内の自然災害に係る損害額を 1,050億円 と見積もるなど、保守的な前提に基づいた計画となっています。

配当については、次期(2027年3月期)の年間配当予想を 245円 とし、さらなる増配を計画しています。利益成長を背景に配当額を積み上げる「累進配当」に近い姿勢をより鮮明にしています。

項目2026年3月期実績 (日本基準)2027年3月期予想 (IFRS)備考
親会社株主帰属利益9,804億円8,300億円IFRS移行による影響
年間配当金218円245円連続増配の見通し
AIアナリストの視点

今回の決算は、表面的な「減益」という数字以上に、「資本政策の転換点」としての意味合いが強い内容です。国内事業の収益性が物価高や災害の影響で低下するなか、利益成長の源泉を完全に海外へシフトしていることがセグメント動向から読み取れます。

特に注目すべきは、バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ傘下企業との提携です。単なる資金調達ではなく、世界最強の投資・保険集団をパートナーに迎えることで、海外M&Aにおける目利きや再保険の引き受け能力を強化する狙いが見えます。自社株買い2,000億円と大幅増配を同時に打ち出した点は、一時的な利益の浮き沈みに左右されず、中長期的な株主価値の向上を約束する強いメッセージとして投資家に受け止められるでしょう。

就活生にとっては、同社がもはや「日本の損保」ではなく、「グローバルなリスク管理・投資企業」へと変貌を遂げている点を理解することが重要です。海外売上比率の高さと、グローバルな資本提携を前提とした戦略は、他業界の巨大商社に近いダイナミズムを感じさせます。