エービーシー・マート、2027年2月期Q1は営業利益8.3%増の203億円、インバウンドや海外事業の復調が貢献

靴小売国内最大手のエービーシー・マートが発表した2027年2月期第1四半期(3〜5月)連結決算は、売上高が前年同期比8.0%増の1,054億83百万円、営業利益が同8.3%増の203億16百万円となった。好調なインバウンド需要や高単価なスニーカーの販売拡大に加え、低迷していた海外事業が復調に転じたことが業績を大幅に押し上げた。通期の業績予想や年間配当80円の計画は据え置いている。
決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,055億円 | +8.0% | 4,008億円 | 26% |
| 営業利益 | 203億円 | +8.3% | 656億円 | 31% |
| 純利益 | 143億円 | +10.4% | 464億円 | 31% |
| 営業利益率 | 19.3% | |||
業績のポイント
エービーシー・マートの2027年2月期第1四半期決算は、国内外で堅調な需要を捉え、増収増益の好スタートを切った。売上高は前年同期比8.0%増の1,054億83百万円、営業利益は同8.3%増の203億16百万円、経常利益は同10.3%増の210億30百万円となった。親会社株主に帰属する四半期純利益についても、同10.4%増の142億96百万円と、各利益項目で前年を上回る推移を見せている。
この好業績を牽引した要因は、国内における旺盛なインバウンド消費の恩恵と、商品展開の多角化だ。世界的な健康志向の高まりからランニングやウォーキング用シューズの需要が増加したほか、手を使わずに履ける「ハンズフリー」スニーカーなどの高付加価値商品が急速に浸透した。物価高による消費者一人当たりの買い上げ点数減少は見られるものの、ナショナルブランドを中心とした高単価スニーカーの好調な販売がカバーした格好である。
セグメント別動向
国内事業は、売上高が前年同期比7.2%増の776億61百万円、セグメント利益は同7.2%増の189億22百万円と堅調に推移した。著名アーティストを起用したプロモーションにより、高単価なスニーカーやアパレルの販売を強化した。また、ららぽーと豊洲への「GRANDSTAGE」と「ABC-MART」の新業態のハイブリッド型店舗のオープンや、アウトドア・スポーツ専門店「OSHMAN'S」の新規出店など、集客力の高い立地への投資が功を奏した。
海外事業は、売上高が前年同期比10.1%増の278億22百万円、セグメント利益が同29.1%増の13億87百万円と、利益面で飛躍的な成長を見せた。特に主力の韓国市場では、為替の円安効果に加え、韓国市場のランニング強化を目的とした「GRANDSTAGE」店舗の展開が順調に推移し、業績を大きく底上げした。米国市場ではインフレによる不透明感が続いているものの、直営チャンネルを中心に比較的底堅い推移を維持している。
| セグメント | 売上高(百万円) | 前年同期比 | セグメント利益(百万円) | 前年同期比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内 | 77,661 | +7.2% | 18,922 | +7.2% | 24.4% |
| 海外 | 27,822 | +10.1% | 1,387 | +29.1% | 5.0% |
| 調整額 | △1,382 | — | 7 | — | — |
| 連結合計 | 105,483 | +8.0% | 20,316 | +8.3% | 19.3% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 国内 | 777億円 | 74% | 189億円 | 24.4% |
| 海外 | 278億円 | 26% | 14億円 | 5.0% |
財務状況と資本政策
当第1四半期末における総資産は、前期末に比べ116億38百万円増加し、4,668億40百万円となった。この主な要因は、夏物商戦や今後の販売拡大に備えて「棚卸資産(在庫)」が前期末比で105億9百万円増加したことによる。負債についても、仕入活動の活発化に伴い「電子記録債務」が86億83百万円増加したことなどから、合計で625億8百万円(前期末比83億6百万円増)となった。
一方で、純資産は利益剰余金の積み上げを主因に、前期末比33億31百万円増の4,043億32百万円に拡大した。財務の健全性を示す自己資本比率は前期末の87.5%から1.5ポイント低下したものの、依然として業界最高水準である自己資本比率86.0%を維持している。年間配当予想は、前期比5.00円の増配となる1株当たり80.00円(中間40.00円・期末40.00円)とする期初計画を据え置いており、安定的な株主還元姿勢を維持している。
リスクと課題
足元の業績は極めて好調だが、中長期的な課題も浮き彫りとなっている。国内市場では、長引く物価高騰の影響から顧客1人当たりの「買い上げ点数」が減少傾向にある。現状は高単価なナショナルブランド製品やアパレルの販売比率を上げることで客単価を補っているが、実質賃金の伸び悩みなどにより消費者の節約志向が一段と強まれば、国内店舗の成長率鈍化につながる懸念がある。
さらに、米国市場をはじめとする海外市場での事業環境の不確実性も残る。米国では高いインフレと不透明な関税政策の影響により、消費環境が激しく変動している。また、仕入コストの上昇や、為替相場の急激な変動に対するリスク管理も、今後の収益力を維持する上での重要な経営課題である。
通期見通し
同社は、2027年2月期の通期業績予想について、期初時点の見通しを据え置いている。通期の連結売上高は前期比5.9%増の4,008億円、営業利益は同3.7%増の656億円、当期純利益は同0.1%増の464億円を見込んでいる。
当第1四半期時点における進捗率は、売上高が26.3%、営業利益が31.0%に達しており、極めて順調なペースで推移している。今後の経済動向や海外市場の回復度合いによっては、期中での業績上方修正も期待できる立ち上がりとなった。
| 項目 | 通期予想(百万円) | 前期比(%) | Q1実績(百万円) | 対通期進捗率(%) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 400,800 | +5.9% | 105,483 | 26.3% |
| 営業利益 | 65,600 | +3.7% | 20,316 | 31.0% |
| 経常利益 | 67,400 | +0.4% | 21,030 | 31.2% |
| 当期純利益 | 46,400 | +0.1% | 14,296 | 30.8% |
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/7/8)
2,924.5円
最新終値(2026/10/23)
3,016円+3.1%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#増収増益#インバウンド需要#スニーカー市場#海外事業復調#韓国市場好調#自己資本比率#増配予定#高単価シフト
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コメント
エービーシー・マートのQ1決算で特筆すべきは、これまで構造改革の途上にあった海外事業の収益力強化が数字として顕著に現れた点です。韓国での高価格帯店舗「GRANDSTAGE」の展開とランニング需要の確実な取り込みは、海外セグメントの営業利益を前年同期比29.1%増と急拡大させ、同社の新たな成長エンジンとしての地位を確立しつつあります。
懸念されるのは、国内店舗における「買い上げ点数の減少」という定性的な変化です。インバウンドによる旺盛な消費や、単価アップ(プロパー販売の強化やプレミアム商品のヒット)で現状は増収増益をキープしていますが、一過性の観光ブームや為替の巻き戻し(円高反転)が起きた際、国内の基礎的な購買力低下が表面化するリスクを孕んでいます。今後は新業態「GRANDSTAGE」やアパレルを融合した複合型店舗の出店などにより、国内における「リピーター客の獲得」をいかに継続できるかが、持続的な成長への分岐点となるでしょう。
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