ABC-Mart・2026年2月期、売上高3,786億円で過去最高を更新——国内事業が牽引、次期は初の4,000億円大台へ
売上高
3,786億円
+1.7%
通期予想
4,008億円
営業利益
633億円
+1.2%
通期予想
656億円
純利益
463億円
+2.2%
通期予想
464億円
営業利益率
16.7%
シューズ販売最大手のエービーシー・マートが8日に発表した2026年2月期連結決算は、売上高が前期比1.7%増の3,786億2,400万円となり、過去最高を更新しました。国内市場で高付加価値商品の販売やインバウンド需要の取り込みが奏功し、営業利益も632億8,700万円(前年比+1.2%)と増益を確保しています。同社は積極的な店舗投資を継続するとともに、次期の年間配当を80円へと増額する方針を示し、強固な財務基盤を背景とした株主還元と成長の両立を強調しました。
業績のポイント
2026年2月期の連結業績は、売上高が3,786億2,400万円(前期比1.7%増)、営業利益が632億8,700万円(同1.2%増)、純利益が463億4,600万円(同2.2%増)といずれもプラスを確保しました。国内における個人消費の緩やかな回復と、訪税売上の拡大が収益を支える構図となりました。一方で、海外事業は韓国の政治混乱や米国の関税政策といった外部要因に翻弄され、全体として増収増益ながらも伸び率は小幅にとどまっています。
特筆すべきは、シューズ以外のカテゴリーや高単価商品の好調です。手を使わずに履ける「ハンズフリーシューズ」などの機能性商品が幅広い層に支持されたほか、アパレル部門の拡充が客単価の上昇(前期比3%以上増)に寄与しました。また、営業外収益において有価証券売却益を11億7,700万円計上したことも、経常利益の押し上げ要因となっています。
| 指標 | 2025年2月期実績 | 2026年2月期実績 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,722億円 | 3,786億円 | +1.7% |
| 営業利益 | 625億円 | 632億円 | +1.2% |
| 営業利益率 | 16.8% | 16.7% | △0.1pt |
| 親会社株主帰属純利益 | 453億円 | 463億円 | +2.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
国内事業は、売上高が前期比5.4%増の2,731億6,400万円、セグメント利益が同6.3%増の564億4,100万円と、グループ全体の成長を力強く牽引しました。SNSを活用した著名タレントによるプロモーションがナショナルブランドのスニーカー販売を加速させたほか、旗艦店モデル「GRAND STAGE」の店舗数を127店舗(18店舗増)まで拡大したことが奏功しています。特にインバウンド需要による免税売上は金額ベースで1割以上増加しており、観光地周辺の店舗が収益を大きく押し上げました。
一方で海外事業は、売上高が前期比4.5%減の1,113億7,800万円、セグメント利益は同25.8%減の70億3,100万円と苦戦を強いられました。韓国市場では政治不安による消費停滞が上半期に響きましたが、下半期にはインバウンド需要の急回復により持ち直しの兆しを見せています。米国事業については、関税政策の変更に伴う不透明感が購買心理を抑制し、売上高は同7.3%減の290億円にとどまりました。ただし、新たにフィリピンへ進出するなど、東南アジア圏での将来の成長の種まきは着実に進められています。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | セグメント利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 国内事業 | 2,731億円 | +5.4% | 564億円 | +6.3% |
| 海外事業 | 1,113億円 | △4.5% | 70億円 | △25.8% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 国内 | 2,732億円 | 72% | 564億円 | 20.7% |
| 海外 | 1,114億円 | 29% | 70億円 | 6.3% |
財務状況と資本政策
財務状態は極めて健全であり、自己資本比率は87.5%という業界内でも突出した高水準を維持しています。総資産は前期末比364億円増の4,552億200万円となりました。これは積極的な店舗展開に伴う有形固定資産の増加(81億円増)に加え、機動的な商品確保を目的とした棚卸資産の積み増し(150億円増)が主な要因です。
資本政策においては、安定的な配当維持と増額を基本方針としています。2026年2月期の年間配当は前期から5円増配の75円(配当性向40.1%)を実施しました。さらに次期の2027年2月期についても、業績のさらなる拡大を見込んで年間80円への増配を計画しており、株主還元への積極的な姿勢を打ち出しています。豊富な現金及び現金同等物(2,071億円)を背景に、成長投資と株主還元のバランスを柔軟に取っています。
通期見通し
2027年2月期の連結業績予想について、売上高は初の4,000億円突破となる4,008億円(前期比5.9%増)を見込んでいます。国内では引き続き「GRAND STAGE」を軸としたドミナント出店を加速させるほか、韓国では「ABC-MART SPORTS」など新業態の展開により収益性の向上を図ります。営業利益についても656億円(同3.7%増)と、緩やかながら着実な成長が続く見通しです。
| 項目 | 2026年2月期実績 | 2027年2月期予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,786億円 | 4,008億円 | +5.9% |
| 営業利益 | 632億円 | 656億円 | +3.7% |
| 経常利益 | 671億円 | 674億円 | +0.4% |
| 親会社株主帰属純利益 | 463億円 | 464億円 | +0.1% |
リスクと課題
順調な業績の裏で、同社は複数のリスク要因に直面しています。一つは為替変動の影響です。円安の進行は海外仕入れコストの上昇に直結し、粗利益率を圧迫する要因となります。二つ目は、米国の通関政策やエネルギー価格の高騰に伴う物流コストの上昇です。特に海外事業においては各国の物価動向が消費マインドを冷え込ませるリスクがあり、機動的な在庫管理と価格戦略が求められています。
また、国内における人手不足と人件費の上昇も課題です。同社は店舗のDX化(デジタル売上比率の向上)やセルフレジの導入、大型複合業態への集約などを進め、運営の効率化を図ることでコスト上昇を吸収する方針を掲げています。
今回の決算で最も注目すべきは、国内市場における「高付加価値化」の成功です。デフレマインドが根強い小売業界にあって、客単価を3%以上向上させたことは、単なる値上げではなく「ハンズフリー」や「限定モデル」といった消費者の利便性や所有欲に訴求する戦略が機能している証拠と言えます。
また、財務面での安定感は特筆ものです。自己資本比率87.5%という数値は、外部環境が悪化しても成長投資の手を緩めない「攻めの守り」を可能にしています。就活生にとっては、安定性と成長性の両面を兼ね備えた企業として魅力的に映るでしょう。
今後の焦点は、伸び悩んでいる海外事業の立て直しです。特にフィリピンなど東南アジアでの展開が、国内市場の成熟を補う第2の成長エンジンとしてどこまで機能するかが、中期的な株価・企業価値を左右するポイントになると見ています。
