業界ダイジェスト
楽天グループ株式会社 の会社詳細
楽天グループ株式会社
楽天グループ
2026年12月期 第1四半期

楽天グループ・2026年12月期Q1、営業利益303億円で黒字転換——モバイル損失縮小とフィンテック躍進が寄与

楽天グループ
黒字転換
楽天モバイル
フィンテック
楽天エコシステム
生成AI
流通総額
損失縮小
IFRS
4755
第1四半期累計期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

6,436億円

+14.4%

営業利益

304億円

純利益

-18,648百万円

営業利益率

4.7%

楽天グループが発表した2026年12月期第1四半期決算は、売上収益が前年同期比 14.4%増6,435億円 となり、営業利益は 303億円 の黒字(前年同期は154億円の赤字)に転換した。主力のフィンテック事業が大幅な増収増益を記録したほか、長年の課題であったモバイル事業の赤字幅が大幅に縮小したことが全体を押し上げた。親会社株主に帰属する四半期利益は 186億円の赤字 となったものの、前年同期の734億円の赤字からは劇的に改善しており、グループ全体の収益化に向けた転換点 を示す内容となった。

業績のポイント

当第1四半期の連結業績は、売上収益が 6,435億8,300万円(前年同期比 +14.4%)、営業利益が 303億9,400万円(前年同期は 154億4,400万円の損失)と、四半期ベースでの営業黒字化を実現した。この好転の背景には、強固な顧客基盤を持つフィンテックセグメントの成長に加え、モバイル事業における通信品質の改善と契約回線数の着実な増加がある。また、グループ全体で推進しているAIを活用したオペレーション効率化がコスト抑制に寄与し、収益性が底上げされた。

一方で、純損益は 186億4,800万円の赤字(前年同期は 734億7,100万円の赤字)を計上した。これは主に金融費用の負担によるものだが、損失幅は前年同期から 548億円 も縮小しており、通期での黒字化に向けた足取りは着実だ。特に、キャッシュフロー創出力を示すEBITDAは 1,087億9,100万円(前年同期比 +36.2%)と大台を突破しており、本業で稼ぐ力が急速に高まっていることが確認できる。

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計

セグメント別動向

主力3セグメントすべてにおいて増収を達成し、収益構造の改善が進んだ。インターネットサービスでは、国内EC(楽天市場)の流通総額が成長し、インバウンド需要の回復を受けた「楽天トラベル」も好調を維持した。フィンテックは引き続きグループの稼ぎ頭として機能しており、特に証券サービスが活発な株式市況を背景に大幅な増収増益を記録した。

セグメント売上収益前年同期比セグメント利益前年同期比
インターネットサービス3,176億円+4.0%211億円+65.6%
フィンテック2,753億円+23.1%585億円+33.8%
モバイル1,311億円+18.5%△380億円改善

注目のモバイル事業は、契約回線数の増加に伴い売上収益が 1,311億5,700万円(前年同期比 +18.5%)へと拡大した。マーケティング費用の投入は継続しているものの、通信品質の向上による解約率の低下や、既存ユーザーの楽天エコシステム利用による「モバイルエコシステム貢献額」の増加が寄与し、セグメント損失は前年同期から 133億円改善 した。「AIエンパワーメントカンパニー」への進化を掲げ、各セグメント間でAIを活用したクロスユースの促進が利益率の改善を主導している。

セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
インターネットサービス3,176億円44%212億円6.7%
フィンテック2,753億円38%585億円21.3%
モバイル1,312億円18%-38,026百万円-29.0%

財務状況と資本政策

総資産は、前連結会計年度末比で 5,096億円増加 し、29兆3,140億円 となった。これは主に銀行事業における貸付金や、証券事業での金融資産の増加によるもので、事業規模の拡大を反映している。連結自己資本比率は 4.4% と、金融事業を内包する構造上、低い水準を維持しているが、非支配持分を含めた資本合計1兆2,766億円 を確保している。

キャッシュ・フロー面では、営業活動によるキャッシュ・フローが 4,870億6,300万円のマイナス となったが、これは証券事業における金融資産の増加(流出)などの影響が大きく、前年同期の 7,377億2,000万円のマイナス からは大幅に改善している。配当については現時点で未定としているが、将来の成長投資と財務健全性の維持を優先する経営判断を下している。今後は社債の償還スケジュールに合わせ、最適な資本構成の構築と資金調達の多様化を継続する方針だ。

通期見通し

2026年12月期の通期見通しについて、同社は証券サービスを除く連結売上収益で「一桁後半の成長」を目指すとしている。利益面では、Non-GAAPおよびIFRSベースの両営業利益において、前期を上回る増益(黒字化)を目標に掲げている。特にモバイル事業の収益改善がグループ全体の利益水準を大きく左右する見通しであり、ネットワーク品質のさらなる向上と法人顧客の開拓が成長のカギとなる。

項目2026年12月期 予想2025年12月期 実績備考
売上収益一桁後半の成長2兆591億円証券サービスを除く
営業利益大幅な増益303億円(Q1実績)通期での黒字化を志向
1株当たり配当未定0.00円財務基盤を優先

リスクと課題

今後の成長における主なリスクとして、会社側は以下の点を挙げている。

  • モバイル事業の投資回収: 通信品質改善のための設備投資が継続しており、契約者獲得ペースが鈍化した場合の収益化遅延リスク。
  • 金利変動リスク: 金融事業(銀行・カード・証券)の割合が大きいため、日銀の政策金利動向が資産運用収益や資金調達コストに及ぼす影響。
  • 競争環境の激化: 国内EC市場における競合他社とのシェア争いや、ポイント経済圏における優位性の維持。
  • 財務健全性: 過去の先行投資に伴う有利子負債の管理と、社債の借り換えにかかる金融市場の環境変化。
AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、モバイル事業という「巨大な重石」が取れ始め、グループ全体の営業黒字化が現実のものとなった点です。特にNon-GAAPベースだけでなく、厳格なIFRSベースでも営業利益を計上できたことは、投資家にとって大きな安心材料となるでしょう。

フィンテックセグメントの稼ぐ力は極めて安定しており、銀行事業では金利上昇を追い風にした利ざや改善も見込まれます。焦点は引き続きモバイル事業の「継続的な契約者増」と「ARPU(1ユーザーあたりの平均売上)の向上」にあります。

また、経営陣が強調する「AIによるコスト削減」が、単なるスローガンではなく具体的な利益率改善として数字に現れ始めている点は評価できます。今後は、多額の社債償還をいかに円滑に進めるかという財務戦略と、楽天シンフォニーを通じた海外展開の成否が、株価の本格的な回復を左右するポイントになるでしょう。