レゾナック・2025年12月期、コア営業利益18.4%増の1,091億円——AI半導体向け材料が牽引、構造改革で純利益は大幅減
売上高
1.3兆円
-3.2%
通期予想
1.3兆円
営業利益
467億円
-47.6%
通期予想
1,050億円
純利益
290億円
-60.5%
通期予想
770億円
営業利益率
3.5%
レゾナック・ホールディングスが13日に発表した2025年12月期連結決算は、本業の稼ぐ力を示すコア営業利益が前期比 18.4%増 の 1,091億円 となった。AI(人工知能)向けの先端半導体材料の販売が大きく伸びた一方、不採算事業の整理に伴う減損損失を計上したことで、純利益は同 60.5%減 の 290億円 に沈んだ。会社側は「稼ぐ力」の回復を強調し、次期2026年12月期はコア営業利益 1,400億円 へのさらなる拡大を見込んでいる。

業績のポイント
2025年12月期の売上収益は、前期比 3.2%減 の 1兆3,471億円 となった。不採算事業の譲渡や一部市況の低迷が響き、全体では微減となったものの、半導体・電子材料セグメントが牽引し、利益構造は改善傾向にある。非経常的な要因を除いたコア営業利益は 1,091億円(前年比 +18.4%)に拡大し、コア営業利益率は前期の 6.6% から 8.1% へと大きく向上した。
一方で、法定上の営業利益は 466億円(前年比 47.6%減)と大幅な減益となった。これは、樹脂成形品事業や電気機械器具事業の譲渡決定に伴い、計 510億円 の減損損失を計上したことが主な要因である。親会社の所有者に帰属する当期利益も 290億円(前年比 60.5%減)に留まった。ただし、これらは事業ポートフォリオを先端材料へ集中させるための「痛み」を伴う構造改革の一環であり、将来の収益安定化に向けた経営判断の結果といえる。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆3,915億円 | 1兆3,471億円 | △3.2% |
| コア営業利益 | 921億円 | 1,091億円 | +18.4% |
| 営業利益 | 890億円 | 467億円 | △47.6% |
| 当期利益 | 735億円 | 290億円 | △60.5% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の「半導体・電子材料」セグメントが業績を下支えした。売上収益は 5,063億円(前年比 13.7%増)、コア営業利益は 1,084億円(同 47.0%増)と、全社利益の大部分を稼ぎ出している。特にAI等の先端半導体向けの「後工程材料」の販売数量が増加したほか、データセンター向けのハードディスク(HD)メディアも堅調に推移し、増収増益に貢献した。一方、パワー半導体向けのSiCエピタキシャルウェハーは、EV市場の成長鈍化を受け、横ばいの推移となった。
対照的に「ケミカル」セグメントは苦境が続いている。売上収益は 1,744億円(前年比 14.0%減)となり、コア営業損益は 55億円の赤字(前期は18億円の黒字)に転落した。これは、主力製品の一つである黒鉛電極の市況が低迷し、販売数量と販売価格がともに下落したことが要因である。また「モビリティ」セグメントについても、一部事業の譲渡や国内需要の減少により、売上収益は 1,784億円(同 10.9%減)、コア営業利益は 44億円(同 30.7%減)と低調だった。
| セグメント名 | 売上収益 | 前年比 | コア営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 半導体・電子材料 | 5,063億円 | +13.7% | 1,084億円 | +47.0% |
| モビリティ | 1,784億円 | △10.9% | 44億円 | △30.7% |
| イノベーション材料 | 922億円 | △4.9% | 104億円 | △8.1% |
| ケミカル | 1,744億円 | △14.0% | △55億円 | - |
| クラサスケミカル | 3,003億円 | △8.9% | 47億円 | △45.5% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 半導体・電子材料 | 5,063億円 | 38% | 1,084億円 | 21.4% |
| モビリティ | 1,784億円 | 13% | 44億円 | 2.5% |
| イノベーション材料 | 922億円 | 7% | 104億円 | 11.2% |
| ケミカル | 1,744億円 | 13% | -5,484百万円 | -3.1% |
| クラサスケミカル | 3,003億円 | 22% | 47億円 | 1.6% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は 2兆1,067億円 となり、前期末比で 659億円 減少した。これは事業譲渡やのれん等の無形資産の減少によるものである。負債合計も有利子負債の削減が進んだことで 1,015億円 減少し、1兆3,791億円 となった。この結果、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率に相当)は 33.2% と、前期末の 30.6% から向上しており、財務基盤の健全化が着実に進んでいる。
株主還元については、2025年12月期の期末配当を1株当たり 65円 とした。次期(2026年12月期)も同額の 65円 を予定している。純利益が一時的に減少しているものの、キャッシュフローの状況を鑑み、安定的な配当を維持する方針だ。また、営業活動によるキャッシュフローは 1,303億円 の黒字を確保しており、これをAI半導体向け材料などの成長分野への設備投資に充当する方針を明確にしている。
リスクと課題
会社側は今後のリスク要因として、以下の項目に言及している。これらは世界的な地政学リスクと市場環境の変化が中心となっている。
- 米国の通商政策による影響: 米中対立の激化に伴う輸出規制や関税措置が、半導体材料のサプライチェーンに及ぼすリスク。
- EV市場の成長鈍化: 電気自動車向け需要の伸び悩みにより、SiCエピタキシャルウェハー等の関連材料の普及が想定より遅れる可能性。
- 市況変動リスク: 原燃料であるナフサ価格の変動や、ケミカル分野における製品市況(特に黒鉛電極)のさらなる悪化。
- インフレと需要回復の不透明感: 世界的なインフレに伴う個人消費の抑制や、企業の設備投資意欲の減退による販売数量の減少。
通期見通し
2026年12月期は、構造改革の成果が表面化し、大幅な増益に転じる見通しだ。売上収益は事業譲渡の影響で微減を見込むものの、コア営業利益は 1,400億円(前期比 28.3%増)と高い成長を計画している。特に、構造改革に関連した一過性の減損損失がなくなることで、親会社の所有者に帰属する当期利益は 770億円(同 165.2%増)と、V字回復を果たすシナリオを描いている。引き続き、半導体・電子材料へのリソース集中を進める方針だ。
| 項目 | 2025年12月期実績 | 2026年12月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆3,471億円 | 1兆3,100億円 | △2.8% |
| コア営業利益 | 1,091億円 | 1,400億円 | +28.3% |
| 営業利益 | 467億円 | 1,050億円 | +125.0% |
| 当期利益 | 290億円 | 770億円 | +165.2% |
レゾナックの決算は、表面的な「純利益の大幅減」以上に、「実力値(コア営業利益)の向上」を評価すべき内容といえます。旧昭和電工と旧日立化成の統合以降、同社は徹底した「ポートフォリオ改革」を掲げてきましたが、今回の決算で多額の減損を計上したことは、不採算事業との決別と先端材料への特化に向けた最後の大掃除に近いニュアンスを感じさせます。
特に注目すべきは以下の点です。
- 半導体材料の収益性: セグメント利益率が約21.4%に達しており、汎用ケミカルメーカーから先端材料メーカーへの変貌を数値で証明しています。
- AI半導体への集中: 後工程材料というAI時代に不可欠なニッチトップ製品を抱えている強みが明確に出ています。
- 財務健全化の継続: 減損を出しながらも自己資本比率を高めており、リスク耐性が向上しています。
懸念点としては、ケミカル事業の黒鉛電極が依然として赤字に沈んでおり、市況頼みの側面が残っていることです。就活生にとっては、同社が「化学の力で世界トップクラスを目指す」というビジョンに向け、古い事業を切り出し、AIやEVといった成長分野にリソースを集中させている「動的な会社」であることが強く印象づけられる決算でしょう。
