セコム・2026年3月期Q3、営業利益10.4%増の1,107億円で過去最高——全セグメント増収、本業の価格改定が寄与
売上高
9,098億円
+5.2%
通期予想
1.3兆円
営業利益
1,107億円
+10.4%
通期予想
1,500億円
純利益
785億円
-1.2%
通期予想
1,034億円
営業利益率
12.2%
警備最大手のセコムが発表した2026年3月期第3四半期連結決算は、売上高・営業利益ともに第3四半期として過去最高を更新した。主力のセキュリティサービスでの価格改定や「大阪・関西万博」関連の警備需要が業績を強力に牽引し、営業利益は前年同期比 10.4%増 の 1,107億円 に到達した。一方で、米国などにおける投資事業組合の運用益減少が響き、純利益は微減となったものの、本業の収益性は着実に向上している。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の売上高は前年同期比 5.2%増 の 9,098億円、営業利益は 10.4%増 の 1,107億円 となり、増収増益を達成した。特に営業利益に関しては、全セグメントでの増収に加え、主力のセキュリティ事業における適切な価格改定(値上げ)が浸透したことが利益を押し上げた。雇用・所得環境の改善を背景とした設備投資の回復も、法人の警備需要を後押しする格好となっている。
一方で、経常利益は前年同期比 1.2%減 の 1,277億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は 1.2%減 の 784億円 とわずかに前年を下回った。これは、前年同期に好調だった米国などにおける投資事業組合の運用益が 130億円 減少したことが主な要因である。本業の儲けを示す営業利益が過去最高を記録した一方で、外部環境に左右される投資収益が全体利益の伸びを抑える形となった。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,646億円 | 9,098億円 | +5.2% |
| 営業利益 | 1,002億円 | 1,107億円 | +10.4% |
| 経常利益 | 1,293億円 | 1,277億円 | △1.2% |
| 四半期純利益 | 794億円 | 784億円 | △1.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力のセキュリティサービス事業は、売上高が前年同期比 5.3%増 の 4,885億円、営業利益は 6.4%増 の 917億円 と堅調だった。事業所向けおよび家庭向けのオンライン・セキュリティシステムの販売が伸びたほか、常駐警備サービスにおいて「大阪・関西万博」会場の人的警備やセキュリティロボット「cocobo」の導入が大きく貢献した。また、原材料費や人件費の上昇を背景とした価格改定が順調に進んだことも利益率の維持に寄与している。
防災事業およびその他のセグメントも総じて好調に推移した。防災事業は火災報知設備などの販売が増加し、原価率の改善も相まって営業利益が 21.4%増 の 112億円 と大幅な増益を記録した。地理空間情報サービス事業においては、国内公共部門の受注が伸び、前年同期の 14億円の赤字 から 7億円の黒字 へと劇的なV字回復を果たしている。BPO・ICT事業もサーバーなどの機器販売やグループ会社のTMJが好調で、増収増益を確保した。
| セグメント名 | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| セキュリティ | 4,885億円 | +5.3% | 917億円 | +6.4% |
| 防災 | 1,251億円 | +5.5% | 112億円 | +21.4% |
| メディカル | 689億円 | +6.2% | 48億円 | +11.5% |
| 保険 | 469億円 | +8.5% | 72億円 | +18.6% |
| 地理空間情報 | 393億円 | +3.8% | 7億円 | 黒字転換 |
| BPO・ICT | 966億円 | +2.3% | 63億円 | +6.2% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| セキュリティサービス | 4,885億円 | 54% | 917億円 | 18.8% |
| 防災 | 1,251億円 | 14% | 112億円 | 9.0% |
| メディカルサービス | 689億円 | 8% | 48億円 | 7.0% |
| 保険 | 470億円 | 5% | 73億円 | 15.5% |
| 地理空間情報サービス | 393億円 | 4% | 7億円 | 1.9% |
| BPO・ICT | 967億円 | 11% | 63億円 | 6.5% |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は、前連結会計年度末から 52億円 増加し、2兆1,507億円 となった。流動資産では現金護送用の現金が増加した一方、有価証券や現預金の組み換えが行われている。負債合計は 104億円 増の 7,083億円 となったが、これは現金護送用の預り金増加などが要因であり、健全な財務体質を維持している。自己資本比率は 58.6% と、前年度末の 59.2% から微減したものの、依然として高い水準を保っている。
資本政策においては、株主還元と流動性の向上を積極的に進めている。2024年10月1日付で実施した 1株につき2株の株式分割 に伴い、期末配当予想を 50円(分割前換算で100円)とし、年間配当は実質増配となる見込みだ。また、当期間中に約 600億円 規模の自己株式取得(自社株買い)を実施しており、機動的な資本効率の向上を図る姿勢を鮮明にしている。利益剰余金も 373億円 増加しており、成長投資に向けた余力は十分といえる。
リスクと課題
好調な業績の裏で、外部環境の変化に伴うリスクも顕在化している。会社側は特に以下の点を懸念材料として挙げている。
- 投資収益のボラティリティ: 経常利益を押し下げた要因である投資事業組合の運用損益は、米国の金融政策や市場動向に左右されやすく、本業が好調であっても全体業績を揺さぶるリスクがある。
- 物価上昇の長期化: インフレに伴う実質賃金の伸び悩みは、個人向けセキュリティサービスの解約増加や、新規契約の抑制につながる可能性がある。
- 建設業界の動向: 防災事業や建築設備工事などは建設需要の影響を強く受ける。工期の遅れや人件費の高騰が、期末に集中しやすい収益構造の重荷となるリスクがある。
- 為替変動の影響: インド等の海外展開を強化しているため、為替の急激な変動が連結業績に及ぼす影響を注視する必要がある。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、2025年5月に公表した数値を据え置いた。売上高は前期比 4.3%増 の 1兆2,510億円、営業利益は 4.0%増 の 1,500億円 を見込む。第3四半期までの進捗率は売上高で 72.7%、営業利益で 73.8% と概ね計画通りに推移している。地理空間情報事業や防災事業は、官公庁や建設業界の年度末決算期に合わせて収益が集中する傾向があるため、第4四半期でのさらなる積み増しが期待される。
| 項目 | 前回予想(2025/5) | 通期予想(据置) | 前期実績 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆2,510億円 | 1兆2,510億円 | 1兆1,996億円 | +4.3% |
| 営業利益 | 1,500億円 | 1,500億円 | 1,442億円 | +4.0% |
| 経常利益 | 1,687億円 | 1,687億円 | 1,751億円 | △3.7% |
| 当期純利益 | 1,034億円 | 1,034億円 | 1,081億円 | △4.4% |
今回の決算で特筆すべきは、セコムが警備業界特有の「コスト増」という課題を、価格改定(値上げ)によって見事に克服し、本業の収益性を高めている点です。特にセキュリティサービスと防災事業の利益率改善は、業界リーダーとしての価格決定権の強さを示しています。
また、不採算セグメントであった地理空間情報サービスが黒字化したことは、構造改革が進んでいる証左として評価できます。一方で、投資事業組合の運用益減少が経常利益を押し下げた点は、機関投資家にとっては業績の「ノイズ」として映るかもしれません。しかし、営業利益ベースでの過去最高更新は、就活生にとっても「盤石な収益基盤を持つ成長企業」という強いメッセージになるでしょう。
今後は、万博後の特需剥落をどうカバーするか、またインドなど海外病院事業(メディカル)の成長スピードがどこまで本業を補完できるかが焦点となります。
