空調・衛生設備工事3社、2027年3月期Q1比較、増収の裏で開いた利益格差と勝者の強さ
3社の売上高は、前年同期比で新日本空調と朝日工業社が伸び、高砂熱学は前年の大型案件の反動で減少しました。一方、営業利益は増益と大幅減益に分かれ、工事量だけでなく採算が明暗を左右しています。受注の強さと利益の質は別問題であり、純利益には株式売却益の影響も表れました。
今期の総括
受注と売上が伸びても利益格差は拡大
業界全体の動き
結論として、3社の売上高の前年同期比は平均で+5.4%でしたが、営業利益は増益2社、減益1社と分かれました。工事の受注や進捗が売上を支える一方、完成工事の採算や前年の大型案件の反動が利益を左右しています。
- 工事需要: 朝日工業社の連結受注高は+15.9%、高砂熱学も+1.7%でした。新日本空調は受注工事高が-6.7%となり、会社ごとに受注の勢いに差が出ました。
- 利益のばらつき: 朝日工業社は設備工事の増収と利益率改善で増益でした。新日本空調は完成工事総利益の減少と販管費の増加が響きました。
- 高い前年ハードル: 高砂熱学は前年同期に産業設備の大型案件が進捗した反動で減収減益でした。今期の受注高と受注残高は堅調です。
- コスト環境: 資機材価格や労務費の上昇が続きます。受注を確保するだけでなく、工事採算を守る力が問われます。
| 会社 | 売上高 前年比 | 営業利益 前年比 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 新日本空調 | 355億円、+15.9% | 10億円、-51.6% | 粗利益減と販管費増 |
| 朝日工業社 | 195億円、+10.2% | 22億円、+16.8% | 設備工事がけん引 |
| 高砂熱学 | 849億円、-9.9% | 85億円、-16.2% | 大型案件の反動 |
3社平均の売上高は466.3億円、営業利益は39億円、営業利益率は8%です。高砂熱学は規模が大きく、朝日工業社は設備工事の採算改善が進みました。新日本空調は売上の伸びが営業利益に結び付かず、業界共通のコスト上昇に対する価格転嫁や施工管理が重要になっています。
売上高ランキング
売上高 前年同期比
勝者と敗者
最も好調なのは、設備工事の増収増益と高い利益率を示した朝日工業社です。対照的に、売上が伸びても本業の利益が大きく減った新日本空調は、採算改善が課題として浮かびました。高砂熱学の減益には、前年同期の大型案件による高い比較基準が影響しています。
- 朝日工業社: 売上高は+10.2%、営業利益は+16.8%でした。設備工事事業は売上高が+14.1%、営業利益が+17.3%となり、売上総利益率も改善しました。
- 新日本空調: 売上高は+15.9%でしたが、営業利益は-51.6%でした。完成工事原価の増加で粗利益が縮小し、販管費の増加も重なりました。
- 高砂熱学: 売上高は-9.9%、営業利益は-16.2%でした。前年同期に産業設備の大型案件が集中した反動が主因で、受注高は増加しています。
営業利益率は3社平均の8%を境に差があり、朝日工業社の設備工事事業は12%、新日本空調は2.7%でした。工事量の拡大が利益に直結するとは限らず、受注時の採算管理や原価上昇への対応が競争力を分けています。高砂熱学は減益でも受注残高が過去最高水準にあり、足元の減収だけで事業の勢いを判断しにくい局面です。
- 好調
- 朝日工業社
- 苦戦
- 新日本空調


営業利益ランキング
営業利益率ランキング
注目の動き・戦略比較
各社の決算では、受注残の積み上がりや株主還元に加え、純利益に含まれる一時的な要因も目立ちました。通期予想はいずれも据え置きで、会社側は第1四半期の結果だけで計画を変更していません。
- 新日本空調: 政策保有株式の売却益26億円を計上し、純利益は+73.4%でした。年間配当は120円を予定し、繰越工事高は+8.8%、原子力施設設備工事は+30.9%です。
- 朝日工業社: 連結受注高は36,232百万円で、前年同期比+15.9%でした。自己資本比率は前期末の50.5%から55.6%に上昇し、年間配当予想は144円で据え置きました。
- 高砂熱学: 受注高は+1.7%、受注残高は+12.2%で過去最高水準となりました。産業設備分野の受注は+29.9%で、通期予想を維持しています。
通期営業利益予想に対する進捗率は、新日本空調が6%、朝日工業社が18%、高砂熱学が17%です。第1四半期の進捗だけでは単純比較できませんが、工事の完成時期や利益計上の偏りには注意が必要です。純利益の前年同期比は3社平均で+18.8%となるものの、新日本空調の株式売却益が押し上げており、本業の収益力とは分けて見る必要があります。
純利益 前年同期比
業界共通のリスク
共通の焦点は、確保した受注を適正な利益に結び付けられるかです。受注環境が堅調な会社でも、施工時のコストや案件の進捗時期によって四半期業績は変動します。各社で異なる事業構成や受注動向を踏まえ、リスクの表れ方を見極める必要があります。
- 資材・労務費の上昇: 資機材価格や労務費、運搬費の上昇が工事採算を圧迫します。完成工事総利益が減少した新日本空調は、今回の決算で影響が表れています。
- 工事進捗の偏り: 大型案件の出来高が集中すると、前年との比較で業績が大きく振れます。前年に産業設備の大型案件が進捗した高砂熱学は、今期の減収減益にその反動が出ました。
- 受注の変動と事業構成: 新日本空調は受注工事高が-6.7%でした。朝日工業社では機器製造販売の売上高が-38.4%となり、同事業の営業損失も拡大しています。
- 一時利益による見え方の変化: 新日本空調の純利益には政策保有株式の売却益が含まれます。純利益の伸びだけで本業の改善を判断すると、収益力を見誤るおそれがあります。
なかでも足元の営業利益の落ち込みが大きい新日本空調は、コスト上昇を吸収する採算改善が重要です。一方、高砂熱学は案件の進捗による四半期変動、朝日工業社は設備工事の好調を保ちつつ機器製造販売の回復が課題です。受注残高の量に加え、工事ごとの利益率や事業別の採算を追うことが投資判断のポイントになります。
就活生・転職希望者へ
3社の決算からは、空調・衛生設備工事の仕事が、受注を取るだけでなく、現場の進捗やコストを管理して利益を確保する仕事でもあることが分かります。会社ごとに伸びている事業や直面する課題が異なるため、売上規模だけでなく、どの分野の工事を担うかも企業選びの材料になります。
- 新日本空調: 繰越工事高は1,708億円で、原子力施設設備工事も伸びました。一方、営業利益は減少しており、工事採算や販管費の管理が重要な局面です。
- 朝日工業社: 設備工事事業が増収増益をけん引しました。機器製造販売事業は売上が減り、営業損失も拡大しており、事業ごとに異なる環境を知ることが大切です。
- 高砂熱学: 受注残高が過去最高水準にあり、産業設備分野の受注も伸びました。大型案件の進捗で四半期業績が変動する点は、働く現場の繁閑を考えるうえでも確認したい情報です。
人手不足とコスト上昇が続くなか、施工管理や設計、調達などの連携が工事の品質と採算を支えます。就職・転職先を検討する際は、受注高だけでなく、案件の種類、事業別の業績、育成や働き方に関する各社の情報も合わせて確認するとよいでしょう。
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