印刷インキ・色材3社、2026年12月期中間期、DICが利益で先行し二社と差
印刷インキ・色材大手3社はそろって増収となり、売上高の伸びは業界平均で12.7%でした。一方、営業利益の伸びには大きな差が出て、DICはAI半導体向け材料などが寄与。増収の広がりに対し、利益の差は拡大し、原材料高への対応力と事業構成が明暗を分けました。
今期の総括
全社増収も利益差が拡大
業界全体の動き
結論として、3社とも増収でしたが、伸びを支えた要因は販売増、価格改定、為替、高付加価値製品と異なります。売上高の伸びは業界平均の12.7%を各社が下回らず、需要と価格対応が広く寄与しました。
- 販売数量の増加: サカタは印刷インキや機能性材料、DICはデジタル分野の製品が伸びました。artienceはパッケージ関連事業の増収が目立ちます。
- 価格改定とコスト: 3社とも原材料高に対する価格改定を進めました。ただし、サカタの米州では原材料、人件費、物流費などが利益を圧迫しました。
- 為替と一時要因: 円安はサカタとDICの円換算売上を押し上げました。artienceでは為替差損の縮小と有価証券売却益が利益を押し上げています。
| 会社 | 売上高 前年比 | 営業利益 前年比 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| サカタ | +12.4% | +18.0% | 販売増・価格改定 |
| artience | +12.4% | +34.1% | パッケージ関連の伸長 |
| DIC | +13.3% | +92.2% | 高付加価値品・価格対応 |
売上規模ではDICが他の2社を大きく上回る一方、3社の増収率は近い水準です。売上高の広がりだけでなく、どの製品が伸び、価格改定がコスト上昇に追いつくかが、今後の利益を左右します。
売上高ランキング
売上高 前年同期比
勝者と敗者
最も好調だったのはDICです。営業利益は92.2%増、営業利益率は8.7%で、利益率の業界平均7.2%も上回りました。相対的に最も苦戦したサカタは営業利益が18.0%増にとどまり、利益率は6.4%でした。
- DIC: ファンクショナルプロダクツではAI半導体向けエポキシ樹脂などが伸長し、同事業の営業利益は96.4%増でした。高付加価値品の伸びと価格対応、コスト管理が利益を押し上げました。
- artience: 営業利益は34.1%増、利益率は6.6%です。パッケージ関連事業の営業利益が44.7%増となり、複数の主力事業の改善が全社を支えました。
- サカタ: 営業利益は増えたものの、米州は原材料高などで26.8%減益でした。日本の採算改善やアジアの利益率が支えとなる一方、米州のコスト負担が重荷です。
製品構成が利益差を生む構図が見えます。DICでは成長分野の出荷が利益をけん引しましたが、米州の売上比率が大きいサカタではコスト上昇が利益に響きました。DICのカラー&ディスプレイには修繕負債の取崩しも含まれ、利益の伸びをすべて継続的な稼ぐ力とみなさない視点も必要です。
- 好調
- DIC
- 苦戦
- サカタ


営業利益ランキング
営業利益率ランキング
注目の動き・戦略比較
各社は、成長分野の強化に加えて株主還元や資産の見直しを進めています。通期営業利益予想に対する上期の進捗率は、DICが66%で、artienceの55%、サカタの53%を上回りました。
- サカタ: 通期売上高予想を105億円引き上げ、営業利益と純利益の予想は据え置きました。年間配当予想は前期比5円増の100円で、自己株式の取得と消却も実施します。
- artience: 通期予想は売上高3,600億円、営業利益230億円で据え置きました。年間配当は120円へ増額し、約20億円の自己株式取得に加え、発行済み株式の5.97%を消却する予定です。
- DIC: AI半導体向け材料などが成長を支え、通期営業利益予想を780億円へ上方修正しました。期末配当予想も10円引き上げ、年間150円とし、太陽ホールディングス株の譲渡も予定しています。
| 会社 | 通期売上高予想 | 通期営業利益予想 | 営業利益進捗率 |
|---|---|---|---|
| サカタ | 2,865億円 | 170億円 | 53% |
| artience | 3,600億円 | 230億円 | 55% |
| DIC | 11,400億円 | 780億円 | 66% |
中間純利益の伸びはDICが184.1%、artienceが150.9%、サカタが7.1%でした。ただし、artienceには約50億円の有価証券売却益が含まれます。成長投資と還元の両立に加え、営業利益やキャッシュ創出力で継続性を見極めたい局面です。
純利益 前年同期比
業界共通のリスク
共通の焦点は、原材料・物流費の上昇を価格に転嫁し続けられるかです。中東情勢や為替の変動は調達費と海外事業の円換算額を揺らし、会社ごとの地域構成や製品構成によって影響が異なります。
- 原材料・物流費の上昇: 価格改定が遅れれば利益率を圧迫します。開示内容では、米州で原材料、人件費、物流費などが増えたサカタが、コスト負担の影響を受けやすい状況です。
- 為替変動: 円安は海外売上の円換算を押し上げる一方、輸入原料の価格や為替差損益にも影響します。海外事業を持つ3社すべてに関係するリスクです。
- 在庫と運転資金: 顧客の在庫積み増しは下期の反動につながる可能性があります。DICは顧客在庫の動向、artienceは売上債権や棚卸資産の増加による営業キャッシュフローの圧迫に注意が必要です。
- 一時利益への依存: artienceの有価証券売却益や、DICの修繕負債取崩しは、継続的な事業利益とは分けて見る必要があります。
原材料費の上昇が続く場合、単に値上げを実施したかではなく、数量を維持しながら価格に反映できるかが問われます。投資家は営業利益とキャッシュフロー、就職先を探す人は事業の成長性やコスト対応の現場を確認したいところです。
就活生・転職希望者へ
3社の決算からは、印刷インキに加え、パッケージ、機能性材料、半導体関連など、仕事の接点が広がっていることが読み取れます。特にDICではAI半導体向け材料が利益を押し上げ、artienceではパッケージ関連事業が増益をけん引しました。
- サカタ: 日本、アジア、米州など地域ごとに採算が異なります。海外営業や調達、物流など、地域別のコストと顧客ニーズに向き合う仕事が重要です。
- artience: パッケージ、ポリマー、印刷・情報、色材・機能材の複数事業を持ちます。製品開発や価格改定、運転資金管理など、部門をまたぐ役割が業績に関わります。
- DIC: パッケージ関連に加え、半導体材料など高付加価値分野を展開します。成長製品の開発・販売と、事業ごとの収益性を高める取り組みがキャリアの選択肢になります。
一方、3社とも原材料や物流費の変動への対応が欠かせません。企業選びでは社名や売上規模だけでなく、希望職種がどの事業を支え、価格転嫁や高付加価値化にどう関わるのかを確認すると、仕事の将来像を描きやすくなります。
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