日野自動車・2026年3月期Q3、営業利益39.3%増の627億円——販売台数減もコスト削減で増益、通期予想を上方修正
売上高
1.1兆円
-10.9%
通期予想
1.6兆円
営業利益
628億円
+39.3%
通期予想
750億円
純利益
306億円
通期予想
750億円
営業利益率
5.5%
日野自動車が発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 10.9%減 の 1兆1,412億円 となった一方、営業利益は同 39.3%増 の 627億円 と大幅な増益を達成しました。国内での小型トラック供給不足や海外市場の停滞で販売台数は落ち込んだものの、徹底した固定費の削減と価格改善が奏功し、採算性が大きく向上しました。前年同期に巨額の特別損失を計上した反動もあり、親会社株主に帰属する四半期純利益は 305億円 と、前年の赤字から大きく黒字に浮上しています。
業績のポイント
当第3四半期累計期間(2025年4月〜12月)の連結業績は、売上高が 1兆1,412億円(前年同期比 10.9%減)、営業利益は 627億円(同 39.3%増)となりました。減収の主な要因は、国内市場において主力となる小型トラックの供給が滞ったことや、アセアン地域での需要減退により海外販売が振るわなかったことにあります。日野ブランドのトラック・バス総売上台数は 7.7万台(同 22.4%減)と大きく落ち込みました。
しかし、利益面では力強い回復を見せています。販売台数の減少による減益要因を、円安による為替効果や車両の販売価格適正化、さらには全社を挙げた固定費の効率化によって跳ね返しました。経常利益は前年同期比 179.2%増 の 550億円 に拡大し、最終的な四半期純利益は 305億円(前年同期は 2653億円の赤字)と、過去の認証不正問題に関連する巨額損失から脱却し、経営再建が着実に進展していることを示しました。
| 項目 | 前年同期実績 | 当期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆2,802億円 | 1兆1,412億円 | △10.9% |
| 営業利益 | 450億円 | 627億円 | +39.3% |
| 経常利益 | 196億円 | 550億円 | +179.2% |
| 四半期純利益 | △2,653億円 | 305億円 | — |
業績推移(通期)
セグメント別動向
地域別の業績では、収益の柱である日本セグメントが利益成長を牽引した一方、アジアでは苦戦が続くなど明暗が分かれました。
日本セグメントの売上高は 7,815億円(前年同期比 12.3%減)となりました。インバウンド需要の回復により大型観光バスの需要は増加したものの、小型トラックの供給不足が響き、国内販売台数は 2.4万台(同 24.3%減)と大幅に減少しました。しかし、原価改善や固定費の抑制に加え、トヨタ自動車向けのSUV(ランドクルーザー等)の生産が堅調に推移したことで、セグメント利益は 353億円(同 18.5%増)の増益を確保しました。
アジアセグメントは、主要市場であるインドネシアでの景気停滞や競争激化により、売上高は 2,916億円(前年同期比 11.0%減)に減少しました。販売台数の落ち込みに伴い、セグメント利益も 144億円(同 15.9%減)と減益を余儀なくされています。
その他(北米・中南米等)では、売上高こそ 2,065億円(前年同期比 17.8%減)と減少したものの、セグメント利益は 107億円(前年同期は 9億円)へと劇的に改善しました。これは、米国でのエンジン認証問題に関連した一過性の費用負担が軽減されたことや、収益性の高い補給部品の販売が堅調だったことが寄与しています。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 7,815億円 | △12.3% | 353億円 | +18.5% |
| アジア | 2,916億円 | △11.0% | 144億円 | △15.9% |
| その他 | 2,065億円 | △17.8% | 107億円 | +1,060% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 7,815億円 | 69% | 353億円 | 4.5% |
| アジア | 2,916億円 | 26% | 144億円 | 5.0% |
| その他(北米等) | 2,066億円 | 18% | 107億円 | 5.2% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は、前年度末比 1,168億円減 の 1兆3,613億円 となりました。これは主に、エンジン認証問題に起因する米国当局との和解に基づき、刑事制裁金や民事制裁金の支払いを進めたことで、現金及び預金が852億円減少したことによるものです。
負債項目では、和解金の支払いに伴い「認証関連損失引当金」が 993億円減少 するなど、負債の圧縮が進みました。純資産は四半期純利益の積み上げにより 2,917億円(前年度末比 407億円増)となり、自己資本比率は15.8%(同 3.7ポイント改善)に上昇しています。依然として厳しい財務基盤ではあるものの、一連の不祥事処理に目途が立ちつつあり、健全化に向けた一歩を踏み出した形です。なお、配当については、将来の成長投資と財務体質の早期回復を優先し、引き続き無配としています。
通期見通しの修正
日野自動車は、好調な営業利益の進捗と保有株式の売却益計上などを踏まえ、2026年3月期の通期連結業績予想を上方修正しました。営業利益は前回予想から 50億円引き上げ、前年比 30.5%増 の 750億円 となる見込みです。また、親会社株主に帰属する当期純利益については、資産売却などの特別利益が加わることで 750億円(前回予想は 200億円)と、大幅な増額修正を行いました。足元の為替相場が想定よりも円安で推移していることも、輸出採算の押し上げ要因となります。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆6,500億円 | 1兆5,500億円 | 1兆6,975億円 |
| 営業利益 | 700億円 | 750億円 | 574億円 |
| 純利益 | 200億円 | 750億円 | △5,748億円 |
リスクと課題
依然として経営の重石となっているのが、エンジン認証不正問題の余波です。決算短信では以下のリスクが言及されています。
- 法的な訴訟リスク: ニュージーランドで提起されていた集団訴訟については、2025年12月に和解契約を承認し、約10億円の特別損失を計上して終結させる見込みですが、他の地域での動向には引き続き注視が必要です。
- 供給網の不安定化: 国内での小型トラックの供給不足が継続しており、顧客の需要に十分応えられていない状況が販売機会の損失を招いています。
- アセアン市場の停滞: インドネシアを中心とする景気減速により、競合他社とのシェア争いが激化しており、利益率の維持が課題となっています。
- 海外当局との交渉: 米国以外の国においても認証問題に関連する当局とのやり取りが続いており、将来的に追加の費用が発生する不確実性を抱えています。
今回の決算は、日野自動車にとって「過去の膿を出し切り、本業の稼ぐ力を取り戻しつつある」転換点と言える内容です。
- 特筆すべきは営業利益率の改善です。売上高が1割以上減り、主力車種の販売が2割以上落ち込むという、通常であれば「赤字転落」してもおかしくない状況下で、大幅な営業増益を達成しました。これは、不祥事を受けて進めてきた「筋肉質な組織への改造」が、為替の追い風もあって数字に表れた結果です。
- 懸念点は、依然として「供給不足」が解消されていない点です。国内販売の24%減は、需要がないのではなく「作れない・出せない」ことに起因しており、ブランド力の低下が長期化するリスクを孕んでいます。また、純利益の大幅な上方修正は資産売却などの一過性要因も大きいため、額面通りに受け取るのではなく、来期以降も営業利益ベースでこの水準を維持できるかが焦点となります。
- 投資家・就活生への視点: 財務数値上は最悪期を脱したように見えますが、自己資本比率15%台は製造業としては依然として低く、信頼回復に向けた道のりはまだ半ばです。今後は、新型エンジンや電動化への投資を再開できるだけの余力を、いつまでに確保できるかが重要になります。
