カカクコム・2026年3月期Q3、売上収益21.5%増の688億円——「食べログ」好調も求人事業への先行投資で営業益4.2%減
売上高
689億円
+21.5%
通期予想
920億円
営業利益
211億円
-4.2%
通期予想
280億円
純利益
144億円
-4.8%
通期予想
190億円
営業利益率
30.7%
株式会社カカクコムが発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上収益が前年同期比 21.5%増 の 68,891百万円 と大幅な増収を記録しました。一方で、営業利益は同 4.2%減 の 21,133百万円 にとどまり、「増収減益」の決算となりました。これは主力の「食べログ」事業が極めて好調に推移したものの、成長領域と位置づける「求人ボックス」事業において、ブランド認知度向上を目的とした大規模な広告宣伝投資を継続したことが利益を押し下げたためです。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の売上収益は、前年同期比 21.5%増 の 68,891百万円 となり、2桁の成長を維持しました。これは「価格.com」および「食べログ」の既存事業が堅調だったことに加え、急成長中の「求人ボックス」事業での営業体制強化が実を結び、全体の収益を力強く牽引した結果です。特に求人事業の売上は前年同期比で約 1.6倍 に拡大しており、同社の新たな収益の柱としての存在感を高めています。
利益面では、営業利益が前年同期比 4.2%減 の 21,133百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同 4.8%減 の 14,369百万円 となりました。減益の主因は、中長期的な市場シェア獲得を目指した「求人ボックス」への戦略的な先行投資です。テレビCMをはじめとするブランド投資を積極的に実施したことで営業費用が 47,847百万円(前年同期比 40.6%増)に膨らみ、増収分を投資費用が上回る形となりました。短期的な利益の最大化よりも、成長市場における圧倒的ポジションの確立を優先した経営判断が色濃く反映された内容となっています。
| 指標 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 56,687百万円 | 68,891百万円 | +21.5% |
| 営業利益 | 22,065百万円 | 21,133百万円 | △4.2% |
| 税引前利益 | 22,181百万円 | 20,927百万円 | △5.7% |
| 四半期利益 | 15,098百万円 | 14,369百万円 | △4.8% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
各セグメントは明暗が分かれる結果となりましたが、事業ポートフォリオ全体では高い成長性を維持しています。
食べログ事業は、売上収益が前年同期比 20.5%増 の 29,677百万円、セグメント利益は同 24.5%増 の 17,028百万円 と、増収増益の牽引役となりました。飲食店側のDX(デジタルトランスフォーメーション)需要を捉え、有料サービス契約店舗数とオンライン予約人数が継続的に増加しています。2025年12月度の月間利用者数は 1億175万人 に達しており、圧倒的な集客力を背景とした安定した収益モデルが利益率の改善にも寄与しました。
求人ボックス事業は、売上収益が前年同期比 58.3%増 の 14,413百万円 と爆発的な成長を見せた一方、セグメント損益は 869百万円の赤字(前年同期は 3,682百万円の黒字)に転落しました。これは前期から継続している「ブランド認知拡大のための集中投資」によるものです。利用者数と訪問数は着実に増加しており、営業代理店との連携強化により稼働アカウント数も拡大していますが、現段階では収益化よりもユーザー基盤の拡大を最優先するフェーズにあることが伺えます。
価格.com事業は、売上収益が前年同期比 1.9%増 の 17,555百万円、セグメント利益は同 12.9%増 の 9,311百万円 と堅調でした。Windows 10のサポート終了に伴うパソコンの買い替え需要が追い風となった「ショッピング」領域や、生命保険・ペット保険が伸びた「保険」領域が寄与しました。一方で、金利上昇の影響を受けた住宅ローン(金融領域)が減収基調となるなど、外部環境の変化に左右される側面も見られました。
| セグメント名 | 売上収益 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 価格.com | 17,555 | +1.9% | 9,311 | +12.9% |
| 食べログ | 29,677 | +20.5% | 17,028 | +24.5% |
| 求人ボックス | 14,413 | +58.3% | △869 | 赤字転落 |
| インキュベーション | 7,246 | +26.6% | 1,940 | +54.9% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 価格.com事業 | 176億円 | 26% | 93億円 | 53.0% |
| 食べログ事業 | 297億円 | 43% | 170億円 | 57.4% |
| 求人ボックス事業 | 144億円 | 21% | -869百万円 | -6.0% |
| インキュベーション事業 | 72億円 | 11% | 19億円 | 26.8% |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の資産合計は、前連結会計年度末比で 9,243百万円減 の 84,261百万円 となりました。この減少の主な要因は、配当金の支払い(15,821百万円)や、後述する子会社取得による支出などにより、現金及び現金同等物が 14,066百万円減少 し、36,793百万円 となったことによるものです。一方で、M&Aの効果により、のれん及び無形資産は 4,431百万円増加 しています。
配当については、今期の年間配当予想を 50.00円(前期実績は特別配当を含め80.00円)としています。前期の特別配当を除いた普通配当ベースでは維持または増配の基調にあり、安定的な利益還元と、将来の成長のための内部留保のバランスを重視する方針が示されています。親会社所有者帰属持分比率は 71.7% と、前期末の66.1%から上昇しており、強固な財務基盤を維持しています。
戦略トピック:HRTech領域の拡大とM&A
カカクコムは成長戦略の核として、既存事業の強化に加え、M&Aを通じた領域拡大を加速させています。2025年4月には、ホームサービスのマッチングプラットフォームを運営する株式会社LiPLUSホールディングスを子会社化し、インキュベーション事業の成長スピードを一段上げました。この買収により、「価格.com」で培った集客ノウハウを生活領域のより広いジャンルへ展開する土台が整いました。
さらに重要な動きとして、2026年4月にエン・ジャパン株式会社から「engage(エンゲージ)」事業を承継する新会社の株式を取得し、子会社化することを決定しました。これにより、自社開発の「求人ボックス」と、企業の採用支援に強みを持つ「engage」の双方向からHRTech市場を攻略する体制が整います。求人検索エンジンと採用管理ツールの両輪を揃えることで、先行投資フェーズにある求人事業の収益化に向けた大きな一歩となることが期待されます。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想について、会社側は当初予想を据え置きました。売上高は過去最高の 92,000百万円 を見込んでおり、増収基調を維持する計画です。利益面では求人事業への投資が続くことから前期比で数パーセントの減益を想定していますが、第3四半期までの進捗は概ね計画通りであるとしています。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想(据置) | 前期実績 | 対前期増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 92,000 | 92,000 | 78,435 | +17.3% |
| 営業利益 | 28,000 | 28,000 | 29,294 | △4.4% |
| 親会社帰属純利益 | 19,000 | 19,000 | 20,039 | △5.2% |
リスクと課題
同社が直面する主なリスクとして、以下の点が挙げられます。
- 先行投資の回収遅延: 「求人ボックス」事業への多額の広告投資が、想定通りのユーザー獲得や売上成長に結びつかない場合、利益率の低迷が長期化する懸念があります。
- 外部環境の変動: 「価格.com」の金融領域で見られたように、金利上昇や景気後退が消費者の購買行動やローン需要に悪影響を及ぼすリスクがあります。
- 競争環境の激化: 食べログにおける他社予約プラットフォームとの競争や、求人市場におけるグローバル企業(Indeed等)とのシェア争いが、マーケティングコストの上昇を招く可能性があります。
今回の決算は、まさに「未来を買うための我慢」を象徴する内容と言えます。
- 評価すべき点: 食べログの利益成長が非常に力強く、キャッシュカウ(収益源)として盤石であることです。この安定した利益があるからこそ、求人ボックスへの年間数十億円規模の投資が可能になっています。また、エン・ジャパンからの「engage」事業取得は、求人検索エンジンの弱点である「求人の質・管理」を補完する非常に論理的な一手です。
- 懸念点: 求人ボックス事業が今回「赤字転落」した点です。売上高成長率(+58.3%)は素晴らしいものの、広告宣伝費への依存度が高まっている可能性があり、今後どのタイミングで投資効率を改善させ、黒字化へ舵を切るのかが投資家の最大の関心事になるでしょう。
- 今後の注目: 2026年4月に予定されている「engage」の連結取り込み後のシナジーです。自社サイトへの誘導だけでなく、企業の採用インフラを握ることで、単なる広告媒体から「採用プラットフォーム」へと昇華できるかが、同社の時価総額を一段引き上げる鍵となります。
