しずおかFG・2026年3月期、純利益21%増の904億円——増配と名古屋銀行との統合合意を発表
売上高
4,385億円
+28.5%
営業利益
1,303億円
+27.7%
通期予想
1,520億円
純利益
905億円
+21.2%
通期予想
1,050億円
営業利益率
29.7%
しずおかフィナンシャルグループが発表した2026年3月期の連結決算は、親会社株主に帰属する当期純利益が前年比 21.2%増 の 904億6,900万円 と大幅な増益を記録した。貸出金利息の増加や有価証券の運用収益が寄与し、過去最高水準の利益 を確保した格好だ。同社は併せて、愛知県を地盤とする名古屋銀行との 経営統合に関する基本合意 を発表し、地方銀行トップクラスの金融グループへの飛躍を目指す方針を鮮明にした。
業績のポイント
当連結会計年度の連結業績は、経常収益が前年比 28.5%増 の 4,385億4,600万円 、経常利益は同 27.7%増 の 1,302億9,800万円 となった。国内の金利上昇局面を背景に、貸出金利息や有価証券利息配当金を中心とした資金運用収益が 2,556億300万円 (前年比+12.2%)へと拡大したことが主因だ。また、株式等売却益の増加も利益を押し上げる要因となった。
一方で、金利上昇に伴う負債コストも増加している。預金利息を中心とした資金調達費用が前年比で大きく膨らんだほか、国債等の債券売却損を計上したことで経常費用は 3,082億4,700万円 (前年比+28.9%)に達した。しかし、これら費用の増加を上回る運用収益の伸びを実現したことで、最終的な利益水準は大きく改善している。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 経常収益 | 3,412億円 | 4,385億円 | +28.5% |
| 経常利益 | 1,020億円 | 1,302億円 | +27.7% |
| 当期純利益 | 746億円 | 904億円 | +21.2% |
| 1株当たり純利益 | 136.37円 | 167.66円 | +22.9% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
中核となる「銀行業」セグメントは、経常収益 3,929億5,800万円 (前年比+32.1%)、セグメント利益 1,227億5,800万円 (同+29.3%)と、グループ全体の成長を力強く牽引した。地域経済への安定的な資金供給に注力した結果、期末の貸出金残高は中小企業向けや個人向けを中心に前年末比 5,208億円増 の 11兆2,559億円 に達している。預金等についても法人向けを中心に伸長し、地域内での強固な営業基盤を再確認する結果となった。
一方で「リース業」セグメントは、経常収益 332億3,300万円 (前年比-1.0%)、セグメント利益 16億2,100万円 (同-7.2%)と微減を記録した。市場環境の変化や競争激化が影響したものの、グループ内のクロスセル等を通じて一定の利益水準を維持している。その他のセグメントでは、国内金融商品取引業務や経営コンサルティング業務を行う子会社群が、地域の多様なニーズに応えることで収益の多角化に貢献した。
| セグメント | 経常収益 | セグメント利益 | 利益前年比 |
|---|---|---|---|
| 銀行業 | 3,929億円 | 1,227億円 | +29.3% |
| リース業 | 332億円 | 16億円 | △7.2% |
| その他 | 762億円 | 631億円 | +104.7% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 銀行業 | 3,930億円 | 90% | 1,228億円 | 31.2% |
| リース業 | 332億円 | 8% | 16億円 | 4.9% |
財務状況と資本政策
2026年3月末の総資産は、貸出金の増加を主因として前年末から 3,011億円増加 し、 16兆160億円 となった。純資産も当期純利益の積み上げ等により 1兆2,319億円 に拡大し、自己資本比率は 7.7% と、前年末の 7.4% から向上している。財務の健全性を維持しつつ、成長投資と株主還元の両立を図る姿勢が鮮明だ。
株主還元策については、積極的な配当方針を打ち出している。2026年3月期の年間配当金は、前期から20円増額の 80円 を実施した。さらに、次期(2027年3月期)の配当予想については、連結配当性向 49.8% を目安に、さらに18円増配の 98円 とすることを公表した。継続的な利益成長を背景に、投資家への還元意欲を強く示す内容となっている。
戦略トピック:名古屋銀行との経営統合
今回の決算発表における最大の注目点は、株式会社名古屋銀行との 経営統合に関する基本合意 だ。2028年4月を目処に、しずおかFGを完全親会社、名古屋銀行を完全子会社とする方式で統合を進める。これにより、静岡県から愛知県にまたがる広大な営業エリアを持つ、地方銀行トップクラスの金融グループが誕生することになる。
統合の狙いは、両社の経営資源を融合させることで地域金融力を高め、高度化する顧客の課題解決能力を強化することにある。特に愛知県内の強固な顧客基盤を持つ名古屋銀行との連携により、製造業を中心とした産業支援や地域経済の活性化への貢献が期待される。「新FG持株会社」 のもとで2バンク体制を維持しつつ、ガバナンスの高度化と人的資本経営の進化を図る計画だ。
通期見通し
2027年3月期の連結業績予想については、引き続き堅調な推移を見込んでいる。経常利益は 1,520億円 (前年比+16.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益は 1,050億円 (同+16.1%)と、さらなる増益を目指す計画だ。金利上昇の恩恵を最大限に取り込みつつ、統合に向けた準備を進めることで、中長期的な企業価値向上を狙う。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 経常利益 | 1,302億円 | 1,520億円 | +16.7% |
| 当期純利益 | 904億円 | 1,050億円 | +16.1% |
| 1株当たり利益 | 167.66円 | 196.94円 | +17.5% |
リスクと課題
好調な業績の裏で、同社はいくつかのリスク要因を挙げている。第一に、金利動向に伴う市場リスク である。金利上昇は利ざやの改善に寄与する一方で、保有する有価証券(特に債券)の含み損拡大や、借入コストの上昇という側面も持つ。相場動向に応じた適切なポートフォリオ管理が不可欠となる。
第二に、経営統合に伴うリスク だ。名古屋銀行との統合プロセスにおいて、システム統合の成否や組織文化の融和、シナジー創出のスピード感が課題となる。また、地域金融機関同士の競争激化や、物価高騰による取引先の業績悪化に伴う信用コストの増加も注視すべきポイントである。
今回の決算で最も驚かされたのは、好調な業績数値以上に、名古屋銀行との経営統合という電撃的な発表です。静岡と愛知、日本屈指の製造業集積地をまたぐ巨大な金融勢力の誕生は、地銀再編の動きを加速させる象徴的な出来事と言えます。
- 収益構造の転換: 金利上昇を味方につけた資金運用収益の伸びは圧巻で、長らく続いた低金利時代の苦境を完全に脱した印象を与えます。
- 高い還元姿勢: 配当性向を50%近くまで引き上げ、年間98円の配当を予告したことは、投資家にとって非常に強いメッセージとなります。
- 今後の焦点: 2028年の統合に向けた具体的なシナジー(コスト削減や収益機会の拡大)がどう示されるかが焦点。巨大化によるガバナンスの難しさも伴いますが、現時点では「攻めの姿勢」が際立つポジティブな決算と評価できます。
