住友化学・2026年3月期通期、コア営業利益48%増の2,083億円——構造改革が進展、医薬品事業が大幅な増益を牽引
売上高
2.3兆円
-10.7%
通期予想
2.4兆円
営業利益
1,517億円
-21.4%
通期予想
1,770億円
純利益
609億円
+57.9%
通期予想
700億円
営業利益率
6.5%
住友化学が発表した2026年3月期の連結決算は、売上収益が前年比 10.7%減 の 2兆3,285億円 となったものの、企業の真の収益力を示すコア営業利益は同 48.3%増 の 208,376百万円 と大幅な増益を達成しました。北米での医薬品販売の拡大や構造改革に伴うコスト削減が奏功し、実質的な利益水準が大きく改善しています。親会社の所有者に帰属する当期利益も前年比 57.9%増 の 60,947百万円 に拡大し、経営再建が着実に進んでいることを示しました。
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、売上収益が 2,328,515百万円 (前年比 10.7%減 )と減収になりましたが、主要な利益指標は力強い回復を見せました。特に、持分法投資損益を含む経常的な収益力を示すコア営業利益は 208,376百万円 と、前期の 140,519百万円 から 48.3% も増加しています。これは、前期まで苦戦していた「住友ファーマ」セグメントにおける新薬の売上拡大や、不採算事業の整理といった構造改革の効果が顕著に表れた結果です。
一方で、非経常的な要因(減損損失や事業構造改善費用など)を含めた「営業利益」は 151,744百万円 (前年比 21.4%減 )となりました。これは前期に計上された持分法適用会社に関連する一過性の利益が剥落したことが主因であり、本業の収益性はむしろ向上しています。税引前利益については、金融費用の改善により 116,068百万円 (前年比 99.8%増 )と倍増し、最終的な親会社株主に帰属する当期利益は 60,947百万円 (前年比 57.9%増 )を確保しました。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,606,281百万円 | 2,328,515百万円 | △10.7% |
| コア営業利益 | 140,519百万円 | 208,376百万円 | +48.3% |
| 営業利益 | 193,033百万円 | 151,744百万円 | △21.4% |
| 親会社所有者に帰属する当期利益 | 38,591百万円 | 60,947百万円 | +57.9% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
全社的な収益の柱は、農薬事業と医薬品事業にシフトしています。住友ファーマセグメントは、売上収益が 4,519億円 (前年比 13.5%増 )、コア営業利益が 1,084億円 (前年比 207%増 )と劇的な回復を遂げました。北米市場において、前立腺がん治療剤「オルゴビクス」や過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」の販売が拡大したことに加え、販売管理費の徹底した削減が利益を押し上げました。
エッセンシャル&グリーンマテリアルズは、売上収益が 6,788億円 (前年比 24.5%減 )と大きく減少しました。これは、サウジアラビアの持分法適用会社「ペトロ・ラービグ社」の定期修繕に伴う出荷減少や、一部事業の譲渡が影響しています。しかし、コア営業利益は 144億円 (前期は585億円の赤字)と黒字転換に成功しました。ラービグ社の一部株式売却益の計上や、合成樹脂等の交易条件の改善が寄与しています。
ICT&モビリティソリューションは、ディスプレイ関連材料の価格競争激化や構造改革の影響を受け、売上収益は 5,742億円 (前年比 5.4%減 )、コア営業利益は 530億円 (前年比 24.9%減 )と苦戦しました。半導体プロセス材料については市況の回復により出荷が増加したものの、円高による輸出手取りの減少が響きました。
| セグメント名 | 売上収益 | 前年比 | コア営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| アグロ&ライフ | 5,193億円 | △3.9% | 563億円 | +2.4% |
| ICT&モビリティ | 5,742億円 | △5.4% | 530億円 | △24.9% |
| アドバンストメディカル | 586億円 | △5.6% | 28億円 | △28.4% |
| エッセンシャル&グリーン | 6,788億円 | △24.5% | 144億円 | 黒字転換 |
| 住友ファーマ | 4,519億円 | +13.5% | 1,084億円 | +207.0% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| アグロ&ライフソリューション | 5,193億円 | 22% | 563億円 | 10.8% |
| ICT&モビリティソリューション | 5,742億円 | 25% | 530億円 | 9.2% |
| アドバンストメディカルソリューション | 586億円 | 3% | 28億円 | 4.8% |
| エッセンシャル&グリーンマテリアルズ | 6,788億円 | 29% | 144億円 | 2.1% |
| 住友ファーマ | 4,519億円 | 19% | 1,084億円 | 24.0% |
財務状況と資本政策
財務体質の健全化に向けた取り組みが着実に進んでいます。総資産は、棚卸資産の圧縮や売却目的資産の減少により、前期末から 347億円 減少し 3兆4,050億円 となりました。負債面では、有利子負債が前期末比で 1,347億円 削減され 1兆1,515億円 まで低下しました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は前期の 26.2% から 29.6% へと 3.4ポイント向上 し、財務基盤の安定性が高まっています。
株主還元については、業績の回復を背景に増配を決定しました。当期の年間配当金は、中間配当 6円 に期末配当 7.5円 を加え、合計 13.5円 となりました(前期は9円)。配当性向は 36.3% となり、同社が中長期的な目標として掲げる「配当性向30%程度」を安定的に維持・達成する姿勢を強調しています。また、次期の年間配当はさらに増額し、1株あたり 16円 (中間8円・期末8円)とする方針を公表しました。
通期見通し
2027年3月期の通期連結業績は、増収増益を見込んでいます。売上収益は前年比 1.4%増 の 2兆3,600億円 、コア営業利益は同 3.2%増 の 2,150億円 を計画しています。医薬品事業の成長持続に加え、ICT関連材料のさらなる回復を見込んでいます。想定為替レートは1ドル= 155.00円 、ナフサ価格は1キロリットルあたり 92,000円 を前提としています。引き続き、ポートフォリオの刷新と構造改革を徹底し、収益基盤のさらなる強化を図る方針です。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆3,285億円 | 2兆3,600億円 | +1.4% |
| コア営業利益 | 2,084億円 | 2,150億円 | +3.2% |
| 営業利益 | 1,517億円 | 1,770億円 | +16.6% |
| 当期利益(親会社帰属) | 609億円 | 700億円 | +14.9% |
リスクと課題
経営陣は、依然として不透明な外部環境を注視しています。主なリスク要因として以下の点を挙げています。
- 地政学リスクの継続: 中東情勢の緊迫化に伴う原材料価格の高騰やサプライチェーンへの影響、物流コストの増大リスク。
- 市場環境の変動: 中国市場を中心とした石油化学製品の需給バランス悪化や、ディスプレイ材料分野における激しい価格競争。
- 為替および原料価格: 急激な円高の進行による輸出収益の減少、およびナフサ等の原料価格の変動が製造コストに与える影響。
- 事業構造改革の進捗: 計画している不採算事業の撤退や売却が予定通り進まない場合、固定費負担が重荷となる可能性。
住友化学の今期決算は、まさに「構造改革の成果が数字に現れた」内容といえます。特に、これまでの最大懸念であった子会社の住友ファーマが、新薬の浸透と徹底したコスト管理によって大幅な増益を達成したことが、グループ全体のコア営業利益を力強く押し上げました。
特筆すべきは、減収でありながら利益が拡大している点です。これは、単なる市場回復に頼るのではなく、不採算事業の売却や棚卸資産の圧縮といった自浄作用が機能し、筋肉質な体質へ変化している証左です。有利子負債を1,347億円削減し、D/Eレシオを改善させた点も、投資家からの信頼回復に寄与するでしょう。
一方で、石油化学(エッセンシャル&グリーン)部門は市況の波を受けやすく、サウジアラビアのペトロ・ラービグ社といった持分法適用会社の収益安定化は依然として課題です。今後は、農薬や半導体材料といった高付加価値領域へのシフトが、どこまで「成長」のスピードを加速させられるかが、次なる株価評価の焦点となるでしょう。
