住友化学・2026年3月期Q3、コア営業利益3.1倍の1,868億円——医薬・石化の構造改革進み通期予想を上方修正
住友化学が3日に発表した2026年3月期第3四半期決算は、本業の儲けを示すコア営業利益が前年同期比 3.1倍 の 1,868億円 と大幅な増益を記録した。事業譲渡や円高の影響で売上収益は 1兆7,063億円 (前年同期比 10.4%減 )となったものの、北米での医薬品販売が好調に推移したほか、不採算事業の整理といった構造改革の効果が鮮明に表れた。好調な業績を背景に、同社は通期の利益予想を上方修正し、年間配当も前回予想から 4.5円 増額する方針を示している。

決算の数字第3四半期累計
期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1.7兆円 | -10.4% | 2.3兆円 | 74% |
| 営業利益 | 1,804億円 | +24.1% | 1,650億円 | 109% |
| 純利益 | 874億円 | +205.7% | 550億円 | 159% |
| 営業利益率 | 10.6% | |||
業績のポイント
当第3四半期の連結累計期間は、売上収益が 1兆7,063億円 (前年同期比 10.4%減 )となった一方で、コア営業利益は 1,868億円 (同 211.1%増 )、親会社の所有者に帰属する四半期利益は 873億円 (同 205.7%増 )と、利益面で劇的な回復を遂げた。売上高の減少は、前年度に実施したアルミニウム事業や合成樹脂事業の譲渡、さらには円高による在外子会社の邦貨換算減が主な要因となっている。
大幅な増益を牽引したのは、主力の子会社である住友ファーマの業績回復と、石油化学事業(エッセンシャル&グリーンマテリアルズ)の交易条件改善である。特に医薬セグメントでは、北米での主力製品の売上拡大に加え、販売マイルストンの計上や構造改革による販管費の抑制が大きく寄与した。また、持分法適用会社であるサウジアラビアのペトロ・ラービグ社の一部株式売却に伴う売却益なども、利益の押し上げ要因となった。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆9,048億円 | 1兆7,063億円 | △10.4% |
| コア営業利益 | 601億円 | 1,868億円 | +211.1% |
| 営業利益 | 1,454億円 | 1,804億円 | +24.1% |
| 四半期純利益 | 286億円 | 873億円 | +205.7% |
セグメント別動向
セグメント別の動向では、医薬と石化の2部門が全体を大きく牽引する形となった。住友ファーマを含むセグメントは、売上収益 3,464億円 (前年同期比 18.3%増 )、コア営業利益 1,112億円 (同 355.8%増 )と驚異的な伸びを見せた。北米市場で進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」などの主力製品が順調に拡大し、経営の重石となっていた米国事業の立て直しが着実に進んでいることを裏付けた。
石油化学を主体とするエッセンシャル&グリーンマテリアルズセグメントは、事業譲渡の影響で売上収益は 5,110億円 (同 24.1%減 )と減少したが、コア営業利益は 198億円 と、前年同期の 443億円の赤字 から大幅な黒字転換を果たした。持分法投資損失の縮小に加え、合成樹脂の交易条件が改善したことが利益面に大きく寄与している。一方で、ICT&モビリティセグメントは、ディスプレイ関連材料での価格競争激化や構造改革の影響を受け、コア営業利益は 465億円 (同 22.1%減 )と苦戦を強いられた。
| セグメント | 売上収益 | コア営業利益 | 前年比(利益) |
|---|---|---|---|
| アグロ&ライフ | 3,469億円 | 281億円 | +44.1% |
| ICT&モビリティ | 4,318億円 | 465億円 | △22.1% |
| 医薬(住友ファーマ) | 3,464億円 | 1,112億円 | +355.8% |
| エッセンシャル&G | 5,110億円 | 198億円 | 黒字転換 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| アグロ&ライフ | 3,469億円 | 20% | 281億円 | 8.1% |
| ICT&モビリティ | 4,318億円 | 25% | 465億円 | 10.8% |
| 住友ファーマ | 3,464億円 | 20% | 1,112億円 | 32.1% |
| エッセンシャル&G | 5,110億円 | 30% | 198億円 | 3.9% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の資産合計は、棚卸資産の増加などにより前連結会計年度末比 706億円 増の 3兆5,104億円 となった。一方で、有利子負債は 1兆2,215億円 と同 646億円 減少しており、バランスシートのスリム化が進んでいる。親会社所有者帰属持分比率は 29.3% と、前期末の 26.2% から 3.1ポイント 改善し、財務体質の強化が鮮明となっている。
株主還元については、業績の上方修正に伴い増配を決定した。期末配当予想を前回の 6.0円 から 7.5円 へ引き上げ、第2四半期末の 6.0円 と合わせた年間配当は 13.5円 となる見込みだ。同社は持続的な配当を基本方針としており、今回の増配は「短期的な構造改革が収益に結びつき始めた」という経営陣の自信の表れと受け取れる。
通期見通しの上方修正
好調な第3四半期実績を踏まえ、2026年3月期通期の業績予想を上方修正した。半導体プロセス材料の出荷増加が見込まれることや、各事業でのコスト削減が想定以上に進んでいることが要因である。修正後の売上収益は 2兆3,000億円 、コア営業利益は 2,000億円 を見込んでおり、経営再建が計画以上に進展していることを示した。
| 項目 | 前回予想(A) | 今回修正(B) | 増減(B-A) |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆2,900億円 | 2兆3,000億円 | +100億円 |
| コア営業利益 | 1,850億円 | 2,000億円 | +150億円 |
| 親会社株主純利益 | 450億円 | 550億円 | +100億円 |
リスクと課題
順調な回復を見せる住友化学だが、依然として外部環境の変化による不透明感は残っている。会社側が言及した主なリスク要因は以下の通りである。
- 石油化学市場の需給変動: 中国経済の動向による販売価格の下落リスク。
- 為替相場の変動: 円高が進んだ場合、海外売上比率の高い事業で換算差損が発生する可能性。
- 医薬品の特許・研究開発: 住友ファーマにおける次世代パイプラインの進捗と競合品の登場。
- 原料価格の上昇: ナフサ等の原料価格高騰による交易条件の悪化。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/2/2)
457.8円
最新終値(2026/10/23)
570円+24.5%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#住友化学#4005#住友ファーマ#大幅増益#上方修正#構造改革#増配#医薬品好調#半導体材料#製造業
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コメント
今回の決算は、住友化学にとって「どん底からの脱却」を象徴する内容となりました。
特筆すべきは、赤字に苦しんでいた医薬部門(住友ファーマ)と石油化学部門の劇的な収益改善です。特に住友ファーマが北米で「オルゴビクス」などの新薬を軌道に乗せたことは、最大の懸念材料であった「パテント・クリフ(特許の崖)」の影響を乗り越えつつあることを示しています。また、不採算事業の切り離しを伴う構造改革が利益率の向上に直結しており、売上が減っても利益が増える「筋肉質な体質」への転換が見て取れます。
今後の焦点は、回復したキャッシュフローを次なる成長分野である半導体材料や環境負荷低減技術へどれだけ迅速に再投資できるか、そして市況変動に左右されやすい石化部門のボラティリティをどう抑制していくかにあるでしょう。投資家や就活生にとっては、同社が「危機対応のフェーズ」を終え、「攻めのフェーズ」に移行できるかどうかが大きな見極めポイントとなります。
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