テルモ・2026年3月期通期、売上高が初の1.1兆円突破——海外好調とM&Aで過去最高更新、次期も大幅増益へ
売上高
1.1兆円
+9.2%
通期予想
1.2兆円
営業利益
1,763億円
+11.8%
通期予想
2,245億円
純利益
1,359億円
+16.2%
通期予想
1,653億円
営業利益率
15.6%
テルモが15日に発表した2026年3月期の連結決算(IFRS)は、売上収益が前期比 9.2%増 の 1兆1,318億円 となり、初めて1.1兆円の大台を突破して過去最高を更新した。世界的な医療需要の回復を背景に、主力の心臓血管事業や血液・細胞テクノロジー事業が海外市場で大きく伸長した。親会社の所有者に帰属する当期利益も 16.2%増 の 1,359億円 に達し、積極的な経営資源の投入と「デバイスからソリューションへ」を掲げる成長戦略が着実に結実していることを示した。
業績のポイント
当期の業績は、円安の影響を除いたベースでも 8.6% の増収を達成しており、グローバル市場での実質的な競争力が際立つ内容となった。営業利益は前期比 11.8%増 の 1,763億円 、税引前利益は 15.3%増 の 1,782億円 を計上した。米国における関税政策の影響や原材料価格の高騰といったコストアップ要因はあったものの、それらを増収効果と生産効率の向上で十分に吸収している。
経営陣が重視する指標である「調整後営業利益」は前期比 7.8%増 の 2,193億円 となり、収益性の高さが改めて示された。同社は長期ビジョン「GS26」の4年目において、単なる製品販売から医療現場の課題解決を図るソリューション提供へのシフトを加速させている。地域別では特に米州が 12.1%増 と大きく伸び、海外売上高比率は 80.3% にまで上昇した。日本国内もファーマシューティカルソリューション事業が下支えし、全地域で増収を確保している。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の「心臓血管カンパニー」は、売上収益が前期比 8.3%増 の 6,764億円 となり、全社の成長を牽引した。カテーテル治療に用いられるアクセス製品を中心に、インターベンショナルシステムズ事業が米国および欧州で好調を維持した。また、脳血管内治療などのニューロ事業も日本・海外ともに成長しており、低侵襲治療の普及が追い風となっている。
「血液・細胞テクノロジーカンパニー」は、売上収益が前期比 15.4%増 の 2,310億円 と、セグメント別で最も高い成長率を記録した。北米における血漿(けっしょう)イノベーションビジネスの展開加速により、グローバルブラッドソリューションが大幅に拡大した。一方、「メディカルケアソリューションズカンパニー」は、一部事業の終了による影響を受けたものの、製薬企業向けの受託製造(ファーマシューティカルソリューション)が伸長し、売上収益は 2.3%増 の 2,161億円 と堅調に推移した。
| セグメント名 | 売上収益 | 前年比 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 心臓血管 | 6,764億円 | +8.3% | 1,639億円 | 24.2% |
| メディカルケア | 2,161億円 | +2.3% | 215億円 | 10.0% |
| 血液・細胞 | 2,310億円 | +15.4% | 336億円 | 14.5% |
| オーガン(新設) | 79億円 | — | 16億円 | 20.8% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 心臓血管カンパニー | 6,764億円 | 60% | 1,640億円 | 24.2% |
| メディカルケアソリューションズカンパニー | 2,161億円 | 19% | 216億円 | 10.0% |
| 血液・細胞テクノロジーカンパニー | 2,310億円 | 20% | 336億円 | 14.5% |
| オーガンテクノロジーズ事業 | 80億円 | 1% | 17億円 | 20.8% |
財務状況と資本政策
資産合計は、前期末から 4,838億円 増加し、 2兆3,122億円 となった。この急増の主な要因は、英国のOrganOx Limited社の買収およびドイツのWuXi Biologics社からの工場取得に伴う、のれんや無形資産、有形固定資産の計上である。自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は、資産規模の拡大により前期の74.8%から 68.5% へ低下したが、依然として強固な財務基盤を維持している。
株主還元については、「安定的な増配」を基本方針としており、当期の年間配当は前期から4円増配の 1株当たり30円 (配当性向32.6%)とした。次期(2027年3月期)についても、利益成長を背景にさらに6円増配の 36円 を予定している。また、総還元性向50%を水準として自己株式取得も柔軟に検討する方針を掲げており、投資家への還元姿勢を鮮明にしている。キャッシュ・フロー面では、営業活動により 2,308億円 の現金を創出した一方、将来の成長に向けたM&Aや設備投資に 3,441億円 を投じるなど、積極的な攻めの姿勢が際立つ決算となった。
通期見通しと戦略トピック
2027年3月期の通期連結業績予想について、同社はさらなる増収増益を見込んでいる。売上収益は前期比 9.5%増 の 1兆2,390億円 、営業利益は 27.3%増 の 2,245億円 を目指す。特に次期は買収したOrganOx社の業績が通期で寄与することや、CDMO(医薬品開発製造受託)事業のグローバル展開加速により、利益成長が一段と加速する見通しだ。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 11,318億円 | 12,390億円 | +9.5% |
| 営業利益 | 1,763億円 | 224,500億円 | +27.3% |
| 親会社株主帰属利益 | 1,359億円 | 1,653億円 | +21.6% |
新たに設立された「オーガンテクノロジーズ事業」は、臓器移植関連分野という未開拓の市場への参入を象徴するトピックである。OrganOx社の買収により、常温機械灌流技術を用いた臓器保存デバイスを獲得し、移植機会の拡大という社会的課題の解決に挑む。これは同社の長期ビジョンである「デバイスからソリューションへ」を具現化するものであり、将来の新たな収益柱として期待される。
リスクと課題
同社は今後の経営上のリスクとして、以下の要因を挙げている。
- マクロ環境の不透明感: 原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱が継続するリスクがあり、コスト管理の徹底が求められる。
- 地政学・通商リスク: 中東情勢の緊迫化や米国における関税政策の動向が、海外売上比率の高い同社の収益に影響を及ぼす可能性がある。
- 為替変動の影響: 海外事業が拡大する中で、想定為替レート(1ドル155円、1ユーロ180円)からの乖離が業績を大きく左右する要因となる。
- 買収事業の統合プロセス: OrganOx社などの大型買収において、期待通りのシナジーを創出できるかどうかが、中長期的な成長の鍵を握る。
テルモの今期決算は、売上高1兆円という壁を完全に突き抜け、グローバルメドテック企業としてのステージが一段上がったことを印象づけました。特に注目すべきは、OrganOx社の買収によって「臓器保存」というニッチながらも高付加価値な市場へ足場を築いた点です。
数値面では、営業利益率が15.6%(調整後では19.4%)と高く、円安の恩恵だけでなく、高利益率な製品へのポートフォリオ転換が奏功しています。次期の営業利益27%増という強気な予想は、新設されたオーガン事業への自信の表れと言えるでしょう。
懸念点としては、M&Aに伴う有利子負債の増加と、米州での関税政策リスクです。しかし、キャッシュ創出力が極めて高いため、財務の健全性は短期間で回復可能と見られます。就職活動生にとっても、日本発のグローバル企業として、最先端の医療技術と経営スピードを併せ持つ稀有な存在として非常に魅力的な選択肢に映るはずです。
