大和工業・2026年3月期Q3、純利益77%増の338億円——米国事業が過去最高水準の利益けん引、通期予想を上方修正
売上高
1,180億円
-6.5%
通期予想
1,610億円
営業利益
34億円
-60.2%
通期予想
40億円
純利益
339億円
+77.4%
通期予想
530億円
営業利益率
2.9%
電炉大手の大和工業が2月2日に発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 6.5%減 の 1,180億2,100万円 となった一方、親会社株主に帰属する四半期純利益は 77.4%増 の 338億6,700万円 と大幅な増益を記録しました。国内やASEANでの鋼材需要低迷により本業の営業利益は苦戦したものの、米国の持分法適用関連会社(ニューコア・ヤマト・スチール)が堅調なインフラ需要を背景に高収益を維持し、経常利益段階から大幅なプラスに転じました。同社は好調な外部環境と投資有価証券の売却益を見込み、通期の純利益予想を従来の380億円から 530億円 へと上方修正しています。
業績のポイント:本業の苦戦を海外投資利益が補う「二極化」の構造
当第3四半期の連結累計期間は、売上高が 1,180億2,100万円 (前年同期比 6.5%減 )、営業利益が 34億1,800万円 (同 60.2%減 )と、表面上の数値では減収減益となりました。これは、日本国内での建設コスト高騰に伴う需要停滞や、ASEAN地域における安価な中国材との激しい価格競争が影響し、鋼材マージンが圧縮されたことが主因です。
しかし、営業外収益として計上される「持分法による投資利益」が 345億1,300万円 (前年同期は158億円)と倍増したことで、経常利益は 478億8,800万円 (同 28.2%増 )へ大きく跳ね上がりました。特に 米国市場において、データセンターやスタジアム等の大型案件向け需要が底堅く 、政府の関税強化措置も追い風となって高水準の利益を確保しています。結果として、最終的な四半期純利益は 338億6,700万円 (同 77.4%増 )となり、厳しい事業環境下でも高い収益力を示す形となりました。
セグメント別動向:日本・ASEANの低迷と、好調な鉄道事業
主力の鉄鋼事業は地域ごとに明暗が分かれました。日本国内では、施工能力不足による工期の長期化から形鋼需要が停滞し、鉄スクラップ価格の上昇も重なってセグメント利益は 16億200万円 (前年同期比 63.0%減 )と沈みました。タイやインドネシアでも中国材の流入による販売価格下落の影響を強く受け、利益が大幅に減少しています。
一方で、軌道用品事業は堅調に推移しています。国内外での鉄道インフラ整備に向けた需要を確実に取り込み、売上高は 74億6,800万円 (同 18.9%増 )、セグメント利益は 14億300万円 (同 46.1%増 )と、グループ全体の利益を下支えする成長セクターとなっています。
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼(日本) | 392億円 | △12.6% | 16億円 | △63.0% |
| 鉄鋼(タイ) | 504億円 | △5.7% | 27億円 | △36.8% |
| 鉄鋼(インドネシア) | 178億円 | - | 4億円 | △82.2% |
| 軌道用品 | 74億円 | +18.9% | 14億円 | +46.1% |
財務状況と資本政策:自己資本比率84%超の強固な財務と積極配当
大和工業の財務基盤は極めて強固であり、総資産 6,355億4,600万円 に対し自己資本比率は 84.1% を維持しています。利益の積み上がりにより利益剰余金は 4,100億円 を超えており、これが将来の投資や株主還元の原資となっています。
株主還元については、年間配当金400円(中間200円・期末予想200円)を据え置く方針です。前期の配当には記念配当100円が含まれていましたが、今期は普通配当を実質的に増額する形で高水準な還元を継続しています。また、資本効率の向上を目的として自己株式の取得と消却(300万株)を順次進めており、ROEの改善を意識した経営姿勢を鮮明にしています。
リスクと課題:中国市場の深刻な停滞と供給過剰の余波
最大の懸念要因は、中国国内の不動産不況による内需低迷の長期化です。中国での過剰生産分が安価な鋼材としてASEAN市場に流出し続けており、これがタイやインドネシア拠点の利益を圧迫する構造的なリスクとなっています。
同社はこれに対し、アンチダンピング関税の活用や高付加価値製品へのシフトで対抗する構えですが、市況の本格回復には時間を要する見通しです。また、日本国内においても鉄スクラップ価格の上昇がコストを押し上げており、電力費などの諸経費増加を含めた価格転嫁の成否が今後の焦点となります。
通期見通し:特別利益130億円の計上で純利益を上方修正
同社は2026年3月期の通期業績予想を上方修正しました。円安水準の継続による海外利益の押し上げに加え、第4四半期に投資有価証券の売却による特別利益約130億円を計上する見込みとなったことが大きな要因です。これにより、最終利益は前回予想から150億円上振れ、前期比 66.5%増 となる見通しです。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 | 修正の理由 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,560億円 | 1,610億円 | 1,682億円 | 円安影響と販売数量の見直し |
| 営業利益 | 35億円 | 40億円 | 115億円 | 諸コストの低減努力 |
| 経常利益 | 560億円 | 600億円 | 544億円 | 米国持分法利益の増加 |
| 当期純利益 | 380億円 | 530億円 | 318億円 | 投資有価証券売却益の計上 |
大和工業の決算は、一見すると本業(日本・タイ)の減益が目立ちますが、その実態は「超優良な投資会社」に近い強みを持っています。特に米国のニューコア社との提携による利益貢献が圧倒的で、営業利益の低迷を完全にカバーして余りある構造です。
- 注目すべき点: 営業利益40億円の予想に対し、経常利益が600億円という極端な差は、同社の「海外ネットワークの強さ」を象徴しています。
- 就活生・投資家への視点: 自己資本比率84.1%という数字は、製造業としては異常なまでの健全性です。景気変動の激しい鉄鋼業界において、このキャッシュリッチな体質は「攻めの投資」や「安定した高配当」を可能にする源泉となっています。
- 今後の焦点: 特別利益による今期の増益は一時的ですが、米国でのAIデータセンター建設ラッシュなどが続く限り、同社の実質的な稼ぐ力は高い水準で維持される可能性が高いでしょう。
