富士通、AIとソブリン技術で成長加速へ: 「中長期経営ビジョン2035」を発表、売上CAGR6-8%を目指す
富士通は2026年5月28日、「中長期経営ビジョン2035」を発表し、テクノロジーを核とした事業創出と、AI駆動によるサービスソリューションの進化を加速する方針を示した。2035年までの売上高成長率(CAGR)6〜8%を目指し、収益性と生産性の向上を両立させる。特にAIとソブリン技術を組み合わせた独自のプラットフォームで、社会課題の解決と新たな市場開拓を狙う。
「中長期経営ビジョン2035」の概要
富士通は、2035年を見据えた新たな中長期経営ビジョンを発表した。ビジョンのテーマは「Technology-drivenの価値創造」であり、AIをはじめとするテクノロジーの急速な進化を背景に、社会や経営の変容に対応することを目指す。同社は、人の能力拡張、高性能コンピューティングによる地球規模シミュレーション、データ主権とセキュリティに基づく情報保障といったテーマに注力し、信頼できるテクノロジーで新たな市場を切り拓く方針だ。具体的な戦略として、「Sovereign Platform」,「Physical Al」,「Intelligent Society」の3つの領域でテクノロジーを起点としたソリューションを提供。特にAIサービス市場は2035年に30兆円規模に拡大すると予測しており、富士通はテクノロジーによる事業創出と事業拡大に注力し、成長のスピードと規模を高める。
テクノロジーによる事業創出
富士通は、テクノロジーによる事業創出の柱として、3つの重点領域を掲げている。Sovereign Platformでは、信頼と省エネルギーを実現する計算基盤を構築し、2035年に8兆円のターゲット市場に対し、1.5兆円の売上を目指す。Physical AIでは、Fujitsu Kozuchi Physical OS を活用し、デジタルとフィジカルをつなぎ、現場知見の自律的学習、生産性向上、ノウハウ継承を実現する。Intelligent Societyでは、地球規模のデジタルツインを構築し、データとAIで未来を予測し、社会運営を最適化する。また、富士通は Palantir Technologies Japanとの連携を強化し、生成AIの業務実装と業務変革支援を加速する方針を示している。
サービスソリューションの事業拡大と進化
富士通は、「Uvance」を成長の牽引役として位置づけ、2025-30年度にCAGR +20%超を目指す。これは、業種ドメイン知見と業種特化型AIエージェントを組み合わせ、顧客の事業変革を支援することで実現を目指す。また、モダナイゼーション事業も強化し、同期間にCAGR +10%超を目標とする。AI-drivenデリバリへの変革では、各組織に分散するデリバリ人員を集約し、マルチAIエージェントによる自律的なシステム開発を推進する。この結果、開発の生産性を約100倍に向上させ、GM率を年2%超のペースで改善することを目指す。
財務目標と資本配分
富士通は、中長期的な財務目標として、調整後EPS(15%超CAGR)とROE(20%超)の達成を掲げている。事業成長と最適なキャピタルアロケーションを通じて、企業価値の持続的な拡大を目指す。具体的な資本配分として、収益基盤の拡大と生産性向上、事業効率/資金効率の改善を図り、ベースCFを拡大する。拡大したCFを成長投資と株主還元に充当し、サービスソリューションの進化と新たな事業創出を加速する。今後10年間で3兆円規模の投資枠を設け、研究開発、先端人材獲得、資本業務提携/M&Aなどを積極的に推進する。株主還元については、利益水準に見合う安定的な増配と、資本効率改善を意識した機動的な自己株式取得を実施する方針。
富士通の中長期経営ビジョンは、AIとソブリン技術を組み合わせた独自の戦略で、社会課題の解決と新たな市場開拓を目指す意欲的な内容だ。特に、AI駆動によるサービスソリューションの進化と、Uvance事業の成長目標は、同社の今後の成長を占う上で重要な指標となるだろう。投資家は、これらの目標達成に向けた具体的な取り組みと、進捗状況を注視する必要がある。また、自己株式取得による株主還元も重視しており、投資魅力の向上にもつながると考えられる。
