アンドエスティHD・2027年2月期Q1、営業利益40.5%増の78億円——アパレル正価販売が寄与、利益率9.8%に向上
売上高
803億円
+3.7%
通期予想
3,140億円
営業利益
79億円
+40.5%
通期予想
172億円
純利益
39億円
-10.6%
通期予想
105億円
営業利益率
9.8%
衣料品大手のアンドエスティHDが発表した2027年2月期第1四半期(2026年3〜5月)連結決算は、売上高が前年同期比 3.7%増 の 803億18百万円、営業利益が同 40.5%増 の 78億75百万円 と大幅な増益を記録した。気温上昇に伴うカジュアル夏物衣料の好調や、徹底した値引き抑制により、営業利益率は9.8%に大幅向上 した。一方で、特別功労金 12億30百万円 の計上により、四半期純利益は同 10.6%減 の 39億8百万円 にとどまった。
業績のポイント
当第1四半期は、国内の雇用・所得環境の改善を追い風に、カジュアルファッション需要が底堅く推移した。気温上昇を素早く捉えた春夏商品の投入や、マルチブランド・マルチカンパニー戦略による積極的なプロモーション活動が功を奏し、売上高は 803億18百万円(前年同期比 3.7%増)と堅調に伸びた。
利益面では、原材料や製造コストの上昇による下押し圧力を、徹底した「適時・適価・適量」の在庫コントロールと値引き販売の抑制で克服した。その結果、本業の稼ぐ力を示す営業利益は前年同期比 40.5%増 の 78億75百万円、経常利益は同 48.4%増 の 80億47百万円 と、いずれも大幅な増益を達成した。
一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期比 10.6%減 の 39億8百万円 と減益に沈んだ。これは営業外で為替差益 98百万円 を計上したものの、特別損失として役員の退任等に伴う特別功労金 12億30百万円 を一括計上したことが大きく響いた格好だ。一過性の要因による減益であるため、本業の収益性は極めて頑健 といえる。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の「アパレル・雑貨関連事業」は、外部顧客向け売上高が前年同期比 3.8%増 の 764億51百万円、セグメント利益が同 49.2%増 の 81億22百万円 と極めて好調に推移した。ブランド別では「グローバルワーク」が売上高 148億87百万円(同 2.4%増)と牽引したほか、M&Aにより新規加入したアウトドアブランド「カリマー」の売上純増が寄与した。正価での販売比率が高まったことで、同セグメントの利益率は 10.6% に達している。
「その他(飲食事業)」セグメントは、売上高が前年同期比 1.6%増 の 38億86百万円 と微増となったものの、74百万円のセグメント損失(前年同期は21百万円の損失)を計上し、赤字幅が拡大した。外食業界における深刻な人手不足に伴う人件費の上昇や、光熱費・食材原材料価格の高騰を十分に吸収しきれなかったことが背景にある。
| セグメント名 | 売上高(百万円) | 前年同期比 | セグメント利益・損失(百万円) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| アパレル・雑貨関連 | 76,496 | +3.9% | 8,122 | +49.2% |
| その他(飲食事業) | 3,886 | +1.6% | ▲74 | 赤字拡大 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| アパレル・雑貨関連事業 | 765億円 | 95% | 81億円 | 10.6% |
| その他(飲食事業) | 39億円 | 5% | -74百万円 | -1.9% |
財務状況と資本政策
2026年5月末時点における総資産は、前期末比73億27百万円増加し 1,470億15百万円 となった。売上高の伸長に伴い、流動資産の「受取手形及び売掛金」が74億7百万円増加したことが主な要因である。
負債は前期末比55億36百万円増加し 634億1百万円 となった。電子記録債務や未払法人税等が減少した一方で、運転資金確保のために短期借入金が 60億円 新たに発生したほか、未払金が40億97百万円増加した。純資産は利益剰余金の積み上げなどにより同17億90百万円増の 836億14百万円 を確保し、自己資本比率は 56.6%(前期末は58.3%)と、引き続き健全な財務水準を維持している。
資本政策においては、安定配当の維持を重視している。2027年2月期の年間配当金予想は、前期実績と同額の 1株当たり90.00円(中間45.00円、期末45.00円)を据え置いており、株主への確実な還元を継続する方針だ。
戦略トピック:ECプラットフォーム化とグローバル戦略の転換
同社が推進する「Play fashion!プラットフォーマー」への進化に向けて、自社ECサイト「and ST」のオープン化(モール型ビジネス化)が実を結んでいる。他社ブランドを含む外部企業の出店を積極的に拡大した結果、共通ポイント制度の利便性向上も手伝い、会員数は前期末から50万人増加して 2,220万人(うちアクティブ会員810万人)に急拡大した。
一方、海外展開では大胆な「選択と集中」を実行した。台湾(前年同期比 27.0%増)や香港(同 13.2%増)では新規出店とECが噛み合い大幅な増収となったものの、2025年7月に不採算であった米国事業から完全に撤退した。この 米国事業撤退に伴う縮小影響 により、海外アパレル・雑貨全体の売上高は同 12.6%減 の 56億78百万円 となった。しかし、収益性の低い地域からの撤退は、中長期的な収益基盤の強化に直結する経営判断といえる。
リスクと課題
今後の大きな経営リスクは、歴史的な円安の継続とエネルギー価格の上昇によるコスト高の長期化である。アパレル事業において仕入価格上昇への対策を講じているものの、生活必需品の値上がりが消費者のさらなる節約志向を招き、秋口以降のカジュアル衣料需要に冷や水を浴びせる懸念がある。
また、飲食事業における人手不足と人件費の高騰は構造的な課題だ。商品価格の見直しや店舗オペレーションの省力化といった抜本的な改革を迅速に進めなければ、グループ全体の利益率を押し下げる要因になりかねない。
通期見通し
2027年2月期の通期連結業績予想については、期初に発表した予想を据え置いた。第1四半期実績の通期予想に対する進捗率は、営業利益で 45.8%、純利益で 37.2% に達しており、非常に好調なペースで進捗している。しかし、為替市場の急激な変動や消費マインドの不透明感を考慮し、現時点での業績予想の上方修正は見送られた。
| 項目 | 期初公表・通期予想 | 前期実績 | 前期比増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高(百万円) | 314,000 | 304,200 | +3.2% |
| 営業利益(百万円) | 17,200 | 16,500 | +4.1% |
| 純利益(百万円) | 10,500 | 9,500 | +10.5% |
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アンドエスティHDの第1四半期決算は、本業の収益性が飛躍的に向上したことが確認できる内容です。値引きに頼らない「正価販売」の徹底と、自社EC「and ST」の外部開放による「プラットフォーム化」が想定以上に機能しています。
通期営業利益予想に対する進捗率は 45.8% に達しており、業績の上方修正期待が非常に高まる 局面です。ただし、役員の退任等に伴う「特別功労金12億30百万円」という一過性の巨額特損により、最終損益が二桁減益となった点は一時的に投資家の心理的重荷になる可能性があります。今後は、米国撤退後の海外展開の次なる一手と、赤字が続く飲食事業の再建のスピード感が焦点となるでしょう。
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