IIJ・2026年3月期通期、営業利益15.7%増の348億円——大型SI案件とストック収益が牽引、次期は4円増配予想
売上高
3,454億円
+9.0%
通期予想
3,850億円
営業利益
348億円
+15.7%
通期予想
385億円
純利益
242億円
+21.3%
通期予想
250億円
営業利益率
10.1%
国内ITインフラ大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が14日に発表した2026年3月期連結決算は、売上収益が前年比 9.0%増 の 3,453億9,500万円 、営業利益が同 15.7%増 の 348億3,500万円 となり、増収増益を達成しました。企業のデジタル変革(DX)進展を背景に、月額ストック収益 が前年比 12.0%増 と順調に積み上がったほか、期間総額10億円を超える大型案件の獲得が恒常化したことが業績を押し上げました。親会社の所有者に帰属する当期利益も同 21.3%増 の 241億8,800万円 と大きく伸ばし、好調な着地となりました。
業績のポイント
2026年3月期の業績は、企業のネットワーク更改需要が極めて旺盛だったことが最大の特徴です。主力の「ネットワークサービス及びSI事業」において、既存サービスの機能強化やサイバーセキュリティ対策支援が奏功し、売上総利益は前年比 11.4%増 と収益性が向上しました。特に、ネットワークサービスおよびシステム運用保守を合わせた 月額ストック売上 の伸長が著しく、計画を上回るペースで推移しています。
利益面では、第2四半期に計上した退職金制度改定に伴う一時的な利益( 11億6,900万円 )も寄与しましたが、本業の稼ぐ力も着実に高まっています。営業利益率は前年度の 9.5% から 10.1% へと上昇し、売上拡大に伴う規模の経済が働いている状況です。また、海外事業においてもシンガポール子会社の成長やGPU構築案件の獲得により、売上高が前年比 12.9%増 の 457億円 に達するなど、グローバル展開も加速しています。
| 項目 | 2025年3月期実績 | 2026年3月期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3,168億円 | 3,453億円 | +9.0% |
| 営業利益 | 301億円 | 348億円 | +15.7% |
| 税引前利益 | 291億円 | 352億円 | +20.8% |
| 当期利益 | 199億円 | 241億円 | +21.3% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の ネットワークサービス及びSI事業 は、売上収益が前年比 9.1%増 の 3,424億1,100万円 、セグメント利益は同 16.1%増 の 336億300万円 となりました。内訳を見ると、法人向けインターネット接続サービスが、IoT用途向けモバイルやIPサービスの需要増により前年比 10.0%増 と力強く成長しています。また、アウトソーシングサービスもセキュリティ関連の引き合いが強く、前年比 14.3%増 と二桁増収を記録しました。
システムインテグレーション(SI)部門では、システム構築売上が前年度の大口一時案件の反動で 1.3%減 となったものの、受注残高は前年同期末比 102.1%増 と爆発的に増加しています。これは直近で約 120億円 の海外向けGPU構築案件を獲得したことなどが要因です。運用保守売上も同 16.0%増 と好調で、一度導入したシステムから継続的に収益を得るモデルが一段と強化されています。
ATM運営事業 については、売上収益が前年比 2.4%増 の 30億1,800万円 、セグメント利益は同 5.1%増 の 12億3,200万円 となりました。提携金融機関の増加や、ネットワークシステム構築を通じた手数料収入の安定化により、堅実な利益貢献を続けています。
| セグメント名 | 売上収益 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| ネットワークサービス・SI | 3,424億円 | +9.1% | 336億円 | +16.1% |
| ATM運営事業 | 30億円 | +2.4% | 12億円 | +5.1% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ネットワークサービス及びSI事業 | 3,424億円 | 99% | 336億円 | 9.8% |
| ATM運営事業 | 30億円 | 1% | 12億円 | 40.8% |
財務状況と資本政策
2026年3月期末の総資産は、前年度末比 344億9,800万円 増の 3,469億3,300万円 となりました。データセンター関連資産の取得やソフトウェアへの投資を積極的に進めた結果、非流動資産が拡大しています。一方で、親会社所有者帰属持分比率は 45.5% (前年度末は45.0%)と、積極的な設備投資を継続しながらも健全な財務基盤を維持しています。
キャッシュ・フロー面では、営業活動により 504億6,000万円 のキャッシュを創出しました。これは前年度( 285億2,800万円 )から大幅な改善であり、好調な業績がキャッシュ創出力に直結していることを示しています。投資活動には 263億2,900万円 を投じ、主に松江データセンターの新棟運用や、白井データセンター3期棟の建設など、将来のトラフィック増に向けたインフラ増強に充てています。
株主還元については、累進的な配当方針 を堅持しています。2026年3月期の年間配当は、前期から 4円増配 となる 39.00円 を実施。さらに、2027年3月期の配当予想についても、さらなる利益成長を背景に 43.00円 (前年比+4円)と、継続的な増配を見込んでいます。
リスクと課題
好調な決算の一方で、会社側はいくつかのリスク要因を挙げています。第一に、中東情勢の緊迫化や米国の通商政策による世界経済の不確実性です。これらは企業のIT投資意欲を冷え込ませる可能性があるほか、サーバー等の機器調達コストの上昇を招くリスクがあります。
第二に、人材確保の競争激化です。同社は当年度中に従業員数を 312名 増員し、合計 5,533名 体制としましたが、DX需要の拡大に伴い、高度なITスキルを持つ人材の確保と育成が継続的な課題となっています。離職率は 4.5% と業界内でも低い水準を維持していますが、採用コストや人件費の増加が利益率を圧迫する要因となり得ます。
第三に、インフラ投資の負担です。データセンターの継続的な拡張は、電力コストの上昇や金利変動リスクを伴います。これらを上回る付加価値サービス(セキュリティやマネージドサービス)の提供により、いかに高いマージンを維持できるかが今後の焦点となります。
通期見通し
2027年3月期の連結業績予想について、売上収益は前年比 11.5%増 の 3,850億円 、営業利益は同 10.5%増 の 385億円 を見込んでいます。引き続き、クラウドやセキュリティ、IoT分野での需要獲得を目指すとともに、過去最高水準にあるSIの受注残高が順次売上に計上される見通しです。次期はデータセンター新棟の稼働に伴う減価償却費の増加が見込まれますが、増収効果で吸収し、増益を継続する計画です。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3,453億円 | 3,850億円 | +11.5% |
| 営業利益 | 348億円 | 385億円 | +10.5% |
| 当期利益 | 241億円 | 250億円 | +3.4% |
今回の決算で特筆すべきは、単なるインフラ提供から、高付加価値な「DXプラットフォーマー」への変貌が数字に表れている点です。
- 特に、SIの受注残高が前年比2倍以上に膨れ上がっている点は、今後の業績に対する強い先行指標となります。海外での大型GPU案件の獲得は、AI時代のインフラ需要を的確に捉えている証左と言えるでしょう。
- 懸念点としては、次期の純利益成長率が 3.4%増 と、営業利益( 10.5%増 )に比べて控えめな点です。これは今期の退職金制度改定に伴う一時的な利益の剥落や、投資拡大に伴う費用増を保守的に見積もっているためと考えられますが、本業のモメンタム自体は非常に強力です。
- 投資家にとっては、増配の継続とROEの向上( 16.2% )は高く評価できるポイントです。就活生にとっても、安定したストック収益を基盤としつつ、最新のAIインフラやスマート農業、金融FinTech(トークン化預金)など、成長分野へ積極的に投資している姿勢は魅力的に映るはずです。
