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株式会社野村総合研究所 の会社詳細
株式会社野村総合研究所
野村総合研究所
2026年3月期 通期

野村総合研究所・2026年3月期通期、売上高は過去最高8,147億円も海外減損で利益急減——700億円の自社株買いとV字回復予想を発表

野村総合研究所
減損損失
自社株買い
増配
V字回復
DX支援
ITコンサル
金融IT
海外事業
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

8,147億円

+6.5%

通期予想

8,500億円

進捗率96%

営業利益

583億円

-56.8%

通期予想

1,750億円

進捗率33%

純利益

153億円

-83.7%

通期予想

1,190億円

進捗率13%

営業利益率

7.2%

野村総合研究所(NRI)が発表した2026年3月期通期決算は、売上収益が前年比 6.5%増8,147億円 と過去最高を更新しました。一方で、豪州および北米の海外事業において 975億円 の大規模な減損損失を計上したことで、営業利益は同 56.8%減582億円 に沈みました。一時的要因を除いた「事業利益」は 16.3%増 と本業の収益力は強化されており、同社はあわせて最大 700億円自社株買いと、次期の業績V字回復予想を公表しました。

トーク

野村総合研究所 2026年3月期 通期決算

さくら × けんじ の対話形式解説

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業績のポイント

2026年3月期の業績は、国内のデジタルトランスフォーメーション(DX)需要を背景に増収を確保したものの、海外M&A案件の不振が利益面を直撃する形となりました。売上収益は 8,147億円(前年比 +6.5%)と着実に伸長しましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益は 152億円(同 -83.7%)と大幅な減益を記録しました。

この利益急落の主因は、豪州の「NRI Australia Limited」および北米の「Core BTS, Inc.」において、当初の事業計画を下回ったことに伴う 減損損失 975億円 を計上したためです。ただし、この損失は現金の流出を伴わない会計上の一時的な要因であり、本業の儲けを示す指標である「事業利益」は 1,566億円(同 +16.3%)と、国内金融・産業向けの旺盛なIT投資を追い風に二桁増益を達成しています。

項目前期実績当期実績前年比
売上収益7,648億円8,147億円+6.5%
事業利益1,347億円1,566億円+16.3%
営業利益1,349億円582億円-56.8%
当期利益937億円152億円-83.7%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

セグメント別では、国内事業が軒並み好調を維持しました。コンサルティングセグメントは、企業の経営戦略やDX支援が活況で、売上収益 687億円(前年比 +5.1%)、営業利益 192億円(同 +4.5%)となりました。AI等の先端技術を活用したビジネスモデル変革へのニーズが、安定した受注に繋がっています。

金融ITソリューションは、証券・保険業向けが牽引し、売上収益 4,051億円(同 +8.7%)、営業利益 742億円(同 +20.6%)と大幅な増収増益を達成しました。一方、産業ITソリューションは国内こそ堅調でしたが、前述の海外事業における のれんの減損 が響き、売上収益こそ 2,800億円(同 +1.5%)を維持したものの、営業損益は 746億円の赤字(前期は242億円の黒字)へ転落しました。

IT基盤サービスは、クラウド事業の好調や「デジタルワークプレイス」関連案件の活況に加え、前期に発生したデータセンター設備の処分費用がなくなったことで、営業利益は 385億円(同 +27.1%)と利益率が大きく改善しています。

セグメント売上収益前年比営業利益前年比
コンサルティング687億円+5.1%192億円+4.5%
金融IT4,051億円+8.7%742億円+20.6%
産業IT2,800億円+1.5%▲746億円赤字転換
IT基盤2,215億円+10.0%385億円+27.1%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
コンサルティング687億円8%192億円28.0%
金融ITソリューション4,052億円50%743億円18.3%
産業ITソリューション2,800億円34%-74,616百万円-26.6%
IT基盤サービス2,215億円27%386億円17.4%

財務状況と資本政策

当期末の総資産は 9,597億円 と前期末から 312億円 増加しました。流動資産が売掛金の増加などにより増加した一方で、非流動資産は減損処理の影響でのれん及び無形資産が 662億円 減少しています。有利子負債は返済が進み、前期末比 413億円 減の 2,049億円 となり、財務の健全性は維持されています。

株主還元については、厳しい最終益ながらも積極姿勢を堅持しました。2026年3月期の年間配当は前期から14円増の 77円 を実施し、次期(2027年3月期)はさらに増配し 84円 とする方針です。さらに、資本効率の向上と株主還元を目的に、発行済株式数の3.66%にあたる最大 2,100万株(総額 700億円)の 自己株式取得 を決定しました。これは、一時的な赤字要因に左右されず、中長期的なキャッシュフロー創出力を重視する経営判断の表れといえます。

通期見通し

2027年3月期の連結業績予想は、海外事業の減損という重石が取れることから、大幅な増益(V字回復)を見込んでいます。売上収益は前期比 4.3%増8500億円、営業利益は同 200.3%増1,750億円 を計画しています。国内の金融・産業セクターにおけるDX投資は依然として強く、グローバル事業の立て直しも進める方針です。

項目2026年3月期(実績)2027年3月期(予想)増減率
売上収益8,147億円8,500億円+4.3%
営業利益582億円1,750億円+200.3%
純利益152億円1,190億円+679.9%

リスクと課題

同社が掲げる主な経営リスクは以下の通りです。

  • 海外事業の安定化: 豪州・北米での大規模減損を受け、PMI(買収後の統合プロセス)の再構築と収益性の向上が急務となっています。
  • 高度IT人材の確保: 国内外でDX需要が活況な分、コンサルタントやエンジニアの採用・育成競争が激化しており、人件費の高騰が利益を圧迫する懸念があります。
  • 技術変革への対応: 生成AIをはじめとする急速な技術進化に対し、自社の開発プロセスへの導入や新サービス創出が遅れた場合、競争力を失うリスクがあります。
AIアナリストの視点

野村総合研究所の今回の決算は、まさに「膿を出し切った」内容と言えます。豪州と北米という、近年同社が注力してきた海外拠点での減損は手痛いものの、キャッシュフローに影響しない非現金支出であり、本業(事業利益)が過去最高水準にある点は投資家にとって安心材料です。

特筆すべきは、最終利益が8割以上減っている中で、増配と700億円規模の大規模な自社株買いを同時に発表した点です。これは、来期のV字回復に対する経営陣の強い自信の表れであり、ROE 25%水準という高い目標に向けた資本効率重視の姿勢を鮮明にしています。

就職活動中の学生にとっては、国内で圧倒的な地位を築きつつ、グローバル展開における「産みの苦しみ」を経験しているフェーズであると理解するのが良いでしょう。今後はAIを活用した開発プロセスの抜本的革新など、技術面での構造改革が成長の鍵を握ることになりそうです。