業界ダイジェスト
LINEヤフー株式会社 の会社詳細
LINEヤフー株式会社
LINEヤフー
2026年3月期 通期

LINEヤフー・2026年3月期通期、売上・利益ともに過去最高——PayPay・海外事業が牽引、次期は大幅増配へ

増収増益
過去最高更新
PayPay
Fintech
大幅増配
株主還元
M&A
AI投資
情報セキュリティ
DX
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

2.0兆円

+6.2%

通期予想

2.2兆円

進捗率91%

営業利益

3,413億円

+8.3%

純利益

1,937億円

+26.2%

営業利益率

16.8%

LINEヤフーが発表した2026年3月期通期決算は、売上収益が前期比6.2%増2兆363億円、営業利益が8.3%増3,413億円となり、主要指標で6期連続の過去最高を更新しました。戦略事業におけるPayPayの連結化やタイのLINE MAN子会社化が収益を押し上げ、親会社の所有者に帰属する当期利益は26.2%増1,936億円と大幅な増益を記録。同社は次期の1株当たり配当を前期の7.3円から11円へと大幅に引き上げる方針を示し、株主還元姿勢を鮮明にしています。

トーク

LINEヤフー 2026年3月期 通期決算

さくら × けんじ の対話形式解説

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業績のポイント

当連結会計年度の業績は、決済・金融事業を柱とする「戦略事業」の急成長が全体を牽引しました。売上収益は2兆363億円(前期比+6.2%)に到達し、国内ネット企業として圧倒的な規模を維持しています。営業利益は3,413億円(前期比+8.3%)となり、販促費や人件費の増加を増収効果で補う構造が定着しました。

利益面で特筆すべきは、親会社株主に帰属する当期利益が1,936億円(前期比+26.2%)と急伸した点です。これは、タイのデリバリー事業「LINE MAN」を連結子会社化した際、企業結合に伴う再測定益を計上したことが大きく寄与しています。これにより、基本的1株当たり当期利益(EPS)は27.97円(前期は21.00円)へと大幅に改善しました。

項目2025年3月期(実績)2026年3月期(実績)前期比
売上収益1兆9,174億円2兆363億円+6.2%
営業利益3,150億円3,413億円+8.3%
調整後EBITDA4,708億円4,966億円+5.5%
親会社所有者帰属利益1,534億円1,936億円+26.2%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

セグメント別では、Fintechを中心とする戦略事業が爆発的な成長を見せる一方で、メディア・コマースの両主力事業は投資や外部要因により利益面で苦戦しました。

メディア事業は売上収益が7,351億円(前期比+0.4%)と微増にとどまり、調整後EBITDAは2,806億円(前期比-2.2%)と減益を記録しました。「LINE公式アカウント」の有償アカウント数増加による広告収入は堅調でしたが、生成AI関連費用などの将来投資や販促費が先行しました。特に検索広告は、プラットフォームの移行局面もあり、前年同期を下回る推移となりました。

コマース事業は売上収益8,576億円(前期比+1.1%)、調整後EBITDA1,299億円(前期比-12.8%)となりました。2025年10月に連結子会社のアスクルで発生したランサムウェア攻撃によるシステム障害が、商品供給や販促活動にブレーキをかけ、利益を押し下げる要因となりました。一方で、ZOZOグループやショッピング事業の取扱高は底堅く推移し、eコマース取扱高全体では4兆6,729億円(前期比+7.1%)と拡大を続けています。

戦略事業は売上収益が4,457億円(前期比+30.6%)、調整後EBITDAが939億円(前期比+85.0%)と、文字通り成長のエンジンとなりました。PayPayの連結取扱高が19.3兆円(前期比+22.9%)と拡大したほか、PayPay銀行の貸出金残高が1.2兆円を突破するなど、金融エコシステムの収益化が加速しています。

セグメント売上収益前期比調整後EBITDA前期比
メディア7,351億円+0.4%2,806億円△2.2%
コマース8,576億円+1.1%1,299億円△12.8%
戦略(Fintech等)4,457億円+30.6%939億円+85.0%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
メディア事業7,351億円36%2,806億円38.2%
コマース事業8,576億円42%1,299億円15.1%
戦略事業4,457億円22%939億円21.1%

財務状況と資本政策

財務状態は、相次ぐM&Aと金融事業の拡大を反映し、総資産は前期末比22.3%増の11兆2,051億円に達しました。特にPayPay銀行やLINE Bank(台湾)の連結化に伴い、銀行事業の貸付金や有価証券が大きく積み上がっています。一方、自己資本比率は26.8%と前期(32.7%)から低下しましたが、これは事業規模の拡大に伴う資産増加が主因であり、健全性は維持されています。

株主還元については、利益成長に応じた配当を行う方針へと転換しました。2026年3月期の年間配当は7.30円(前期比+0.30円)ですが、次期(2027年3月期)は11.00円へと大幅な増配を見込んでいます。同社は2025年度からの5年間で累計総還元性向70%以上を目指す野心的なキャピタル・アロケーション方針を掲げており、自社株買いも含めた積極的な還元姿勢が示されています。

通期見通し

2027年3月期の通期見通しは、主要事業の収益力強化により、売上・利益ともに2桁成長を目指す強気な計画となっています。特にFintech領域のさらなる黒字幅拡大と、メディア・コマース事業における効率化を見込んでいます。

項目2026年3月期(実績)2027年3月期(予想)増減率
売上収益2兆363億円2兆2,400億円+10.0%
調整後EBITDA4,966億円5,850億円+17.8%
調整後EPS28.73円30.00円+4.4%

リスクと課題

持続的な成長に向けた最大の課題は、情報セキュリティ体制の抜本的強化です。同社はNAVER社とのシステム分離やプライベートネットワークの分離を2026年3月末までに完了させましたが、過去の個人情報漏洩に関する総務省からの行政指導を重く受け止め、ガバナンス改革を継続しています。

また、アスクルの事例でも露呈したサイバー攻撃リスクへの対応も急務です。競争環境においては、生成AI技術の進展に伴う広告市場の構造変化や、国内外のECプレーヤーとの激しいシェア争いが続いています。同社は「WOW Our Users!」という新ミッションのもと、AIへの積極投資を通じてサービス競争力を維持し、リスクを成長の機会へ変える戦略を推進しています。

AIアナリストの視点

LINEヤフーの今回の決算は、旧LINEと旧ヤフーの統合シナジーが、既存事業の効率化よりも「Fintech(PayPay)」と「海外戦略(LINE MAN)」という新領域の爆発力によって証明された形です。特にPayPayが名実ともに収益の柱へと成長した点は、投資家にとって大きな安心材料となります。

懸念点としては、メディア・コマースという旧来の「稼ぎ頭」が投資フェーズにある、あるいは外部要因で減益となっている点です。特に生成AIへの投資は必須であるものの、広告単価への寄与には時間がかかる可能性があります。

一方で、次期の配当予想を11円へ引き上げた判断は非常にインパクトが強く、親会社であるソフトバンクグループの方針とも合致する「還元重視型」へのシフトを明確にしました。情報漏洩問題という重い課題を背負いつつも、財務数値と還元策で投資家の信頼を繋ぎ止め、次なる成長ステージ(AI×金融)へ舵を切った決算と言えます。