NSD・2026年3月期通期、売上高1,178億円で過去最高を更新——DX・AI需要が牽引、営業利益は13.2%増と2桁成長
売上高
1,178億円
+9.3%
通期予想
1,260億円
営業利益
191億円
+13.2%
通期予想
195億円
純利益
130億円
+10.3%
通期予想
131億円
営業利益率
16.2%
独立系ITサービス大手のNSDは、2026年3月期の連結決算において売上高 1,178億1,300万円 (前期比 +9.3% )、営業利益 190億7,300万円 (同 +13.2% )を記録し、過去最高業績を更新した。企業の旺盛なDX(デジタルトランスフォーメーション)投資を背景に、主力のシステム開発が堅調に推移したほか、戦略分野であるAI関連事業が大きく伸長した。中期経営計画の目標を前倒しで達成し、収益性の向上を伴う成長を継続している。
NSD 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、売上高が 1,178億1,300万円 (前期比 9.3%増 )、営業利益が 190億7,300万円 (同 13.2%増 )、親会社株主に帰属する当期純利益が 130億900万円 (同 10.3%増 )となり、すべての指標で前年を上回る増収増益を達成した。好業績の主因は、情報サービス産業における「AI・DX活用」を目的としたIT投資の加速だ。同社は注力領域を「DAS(Digital & AI & Solution)事業」と定義し、クラウド移行や生成AI活用などの高付加価値案件にリソースを集中させた。
経営効率の指標も改善しており、売上高営業利益率は前期の15.6%から 16.2% へと上昇した。これは、不採算案件の抑制と高単価なDX案件の比率が高まったことによる。自己資本利益率(ROE)も 18.4% (前期は18.2%)と高水準を維持しており、株主資本を効率的に活用して収益を上げる体質が一段と強まっている。中期経営計画で掲げた「売上高1,000億円」の目標を2年早く達成した後も、持続的な成長フェーズにあることを証明する決算となった。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力のシステム開発事業は、売上高 1,001億600万円 (前期比 8.3%増 )、セグメント利益 182億5,200万円 (同 9.1%増 )と、グループ全体の成長を力強く支えた。特に産業IT部門が好調で、自動車関連の製造業向け受注が順調に推移し、売上高は 282億8,600万円 (同 10.3%増 )に達した。金融IT部門も、大手銀行の基幹システム更改案件などの既存顧客の深掘りが奏功し、売上高 350億7,300万円 (同 8.0%増 )と着実な成長を見せている。
ソリューション事業は、売上高 177億2,000万円 (前期比 15.0%増 )、セグメント利益 14億8,800万円 (同 92.6%増 )と、成長率において目覚ましい成果を上げた。医療DXに関連した特需や、自社開発のプライベート生成AIプラットフォーム「BizInsight」の提供開始が寄与し、第2の収益の柱としての地位を固めつつある。特に利益面では、高収益な自社ソフト・サービスの比率が高まったことで、利益率が大幅に改善した。
| セグメント名 | 売上高(百万円) | 前期比 | 営業利益(百万円) | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 金融IT | 35,073 | +8.0% | 6,774 | +7.1% |
| 産業IT | 28,286 | +10.3% | 4,410 | +17.7% |
| 社会基盤IT | 24,200 | +7.8% | 4,759 | +4.5% |
| ITインフラ | 13,296 | +7.2% | 2,309 | +6.6% |
| ソリューション | 17,720 | +15.0% | 1,488 | +92.6% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 金融IT(システム開発) | 351億円 | 30% | 68億円 | 19.3% |
| 産業IT(システム開発) | 283億円 | 24% | 44億円 | 15.6% |
| 社会基盤IT(システム開発) | 242億円 | 21% | 48億円 | 19.7% |
| ソリューション事業 | 177億円 | 15% | 15億円 | 8.4% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比 69億5,600万円 増の 974億4,200万円 となった。受注の拡大に伴う現預金の積み上がりが資産増の要因であり、財務の健全性は極めて高い。自己資本比率は 75.7% (前期末比1.2ポイント増)と、業界内でも際立った安定性を誇っている。この強固な財務基盤を背景に、同社は積極的な株主還元を継続している。
当期の年間配当金は、前期の87円から9円増配となる 96円 を実施した。配当性向は 56.3% と高く、株主への利益還元を重視する姿勢が鮮明だ。また、当期中に約 20億円 の自己株買いを実施しており、資本効率の向上と株価の下支えを並行して進めている。営業活動によるキャッシュ・フローは 161億5,600万円 の黒字であり、稼いだ現金をさらなるM&Aや人的資本への投資、そして還元へ回す好循環が確立されている。
通期見通し
2027年3月期の通期連結業績予想について、同社は慎重ながらも増収増益を見込んでいる。売上高は 1,260億円 (前期比 6.9%増 )、営業利益は 195億円 (同 2.2%増 )を計画している。新中期経営計画の初年度として、生成AIなどの先端技術への研究開発投資や、人材獲得に向けた人件費の増加を見込んでいるため、利益の伸びは売上成長に対して緩やかとなる見通しだ。一方で、配当はさらに1円増配の年間 97円 を予定しており、連続増配への強い意欲を示している。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,178億円 | 1,260億円 | +6.9% |
| 営業利益 | 190.7億円 | 195.0億円 | +2.2% |
| 当期純利益 | 130.0億円 | 131.0億円 | +0.7% |
| 年間配当金 | 96円 | 97円 | +1.0% |
リスクと課題
同社の成長を左右する最大の要因は、高度IT人材の確保と育成だ。IT人材不足が深刻化する中、採用競争の激化による人件費の高騰は利益を圧迫するリスクとなる。また、同社は現在、以下の課題に言及している。
- 技術変化への対応: 生成AIなどの新技術の急速な普及により、従来のシステム開発手法のコモディティ化が進むリスクがある。これに対し、DAS事業の深化による付加価値の維持が求められる。
- 不採算案件の発生: 案件の大型化・複雑化に伴い、プロジェクト管理の成否が利益に直結する。徹底した審査体制の維持が不可欠である。
- 市場環境の変動: 主要顧客である金融機関や製造業の景況感がIT投資予算に影響を与える。特に金利動向や地政学リスクによる景気の下振れには注視が必要としている。
NSDの決算は、IT業界の中でも極めて「優等生」的な内容です。特筆すべきは、売上高営業利益率が16.2%という、受託開発中心の企業としては異例の高さにある点です。
多くのSIerが人件費高騰に苦しむ中、同社は「DAS事業」というブランドでAIや新技術案件を差別化し、単価交渉や利益率管理を徹底していることが数字から伺えます。
次期予想が保守的(利益成長2.2%)に見えますが、これは新中期経営計画に向けた「攻めの投資」を織り込んでいるためでしょう。財務の健全性と高い配当性向を両立させており、就職活動中の学生にとっても、安定性と成長性を兼ね備えた魅力的な企業に映るはずです。
懸念点を挙げるならば、生成AIの普及により、単純なコード記述等の作業がAIに置き換わっていく中で、より上流のコンサルティング能力や独自ソリューションの比率をどこまで高められるかが、中長期的な焦点となります。
