日本取引所グループ・2026年3月期通期、純利益29.5%増の791億円——現物取引活況で過去最高水準、200億円の自社株買いも発表
売上高
1,987億円
+22.5%
通期予想
2,050億円
営業利益
1,163億円
+29.0%
通期予想
1,150億円
純利益
791億円
+29.5%
通期予想
775億円
営業利益率
58.5%
日本取引所グループ(JPX)が28日に発表した2026年3月期の本決算は、親会社の所有者に帰属する当期利益が前期比 29.5%増 の 791億39百万円 と大幅な増益を記録した。新NISAの普及や日本株への再評価を背景に、現物株の売買代金が想定を上回って推移したことが主因だ。同社は株主還元も強化し、上限 200億円 の自己株式取得を決定したほか、次期の年間配当も前期比横ばいの 61円 を維持する方針を示した。市場インフラとしての収益力が 一段と強固になった決算 と言える。
日本取引所グループ 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
2026年3月期の連結業績は、売上高にあたる営業収益が前期比 22.5%増 の 1,987億35百万円 、営業利益は同 29.0%増 の 1,162億89百万円 となった。国内株式市場における売買の活発化が直接的な追い風となり、手数料収入が大きく伸びた。特に営業利益率は 58.5% と、前期の 55.6% からさらに改善しており、固定費の比率が高い取引所ビジネス特有の増益効果が鮮明に表れている。
利益面では、法人所得税費用の増加( 355億9百万円 )があったものの、それ以上に本業の収益拡大が寄与し、最終的な純利益は過去最高水準を更新した。1株当たり当期利益も 76.81円 (前期は分割調整後で 58.72円 )に上昇した。これは市場参加者の層が厚くなったことや、ボラティリティ(価格変動)の継続によりデリバティブ取引も堅調だったことの結果である。投資家からの関心の高まり が、そのまま同社の業績拡大に直結する構造が改めて示された。
| 指標 | 2025年3月期実績 | 2026年3月期実績 | 前年比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 1,622億円 | 1,987億円 | +22.5% | - |
| 営業利益 | 901億円 | 1,162億円 | +29.0% | 58.5% |
| 税引前利益 | 902億円 | 1,169億円 | +29.5% | - |
| 当期利益 | 610億円 | 791億円 | +29.5% | - |
業績推移(通期)
セグメント別動向
当期から「中期経営計画2027」の開始に合わせて営業収益の内訳を6区分に再編しており、すべての主要項目で増収を達成した。最も寄与度が大きい「取引関連収益」は、前期比 20.0%増 の 773億99百万円 となった。このうち、現物市場の取引料は 28.2%増 の 552億65百万円 と記録的な伸びを見せており、個人投資家の参入障壁低下や海外投資家の継続的な買いが数字を押し上げた格好だ。
注目すべきは「清算関連収益」で、前期比 57.5%増 の 542億42百万円 と驚異的な伸びを示している。これは、子会社の日本証券クリアリング機構における清算手数料が、取引量の増加に連動して大幅に拡大したためである。また、「上場関連収益」も同 7.9%増 の 186億82百万円 と堅調で、新規上場(IPO)の増加や既存上場企業の時価総額増大に伴う年間上場料のアップが寄与した。
「情報関連収益」は同 5.5%増 の 336億69百万円 となり、データ配信や指数ビジネスの安定した成長が続いている。システム利用料を中心とする「システム関連収益」も同 4.3%増 の 138億38百万円 と着実に成長した。各事業領域がバランスよく伸びていることは、単なる売買代金依存からの脱却と、多角的な収益基盤の構築 が進んでいることを裏付けている。
| 収益内訳 | 前期実績 | 当期実績 | 増減率 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|
| 取引関連収益 | 645億円 | 773億円 | +20.0% | 38.9% |
| 清算関連収益 | 344億円 | 542億円 | +57.5% | 27.3% |
| 情報関連収益 | 318億円 | 336億円 | +5.5% | 16.9% |
| 上場関連収益 | 173億円 | 186億円 | +7.9% | 9.4% |
| システム関連収益 | 132億円 | 138億円 | +4.3% | 7.0% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 取引関連収益 | 774億円 | 39% | — | — |
| 清算関連収益 | 542億円 | 27% | — | — |
| 情報関連収益 | 337億円 | 17% | — | — |
| 上場関連収益 | 187億円 | 9% | — | — |
| システム関連収益 | 138億円 | 7% | — | — |
財務状況と資本政策
連結財政状態については、総資産が前期末比で約13.8兆円減少し、 71兆5,995億円 となった。これは清算機関としての「清算引受資産・負債」が市場状況により減少したことによる見かけ上の変動であり、実質的な自己資本を示す親会社所有者帰属持分は 3,450億15百万円 (前期末比41億円増)と健全に推移している。自己資本比率は清算資産を除外したベースで 69.9% と、極めて高い財務の安全性を維持している。
資本政策では、積極的な株主還元姿勢を鮮明にしている。2026年3月期の年間配当は 61円 とし、配当性向は 79.4% に達した。さらに、機動的な資本政策として上限 200億円 (発行済株式総数の約3.9%に相当する4,000万株)の自己株式取得を閣議決定した。取得期間は2026年6月から10月までを予定している。これは「中期経営計画2027」で掲げる 資本効率の向上と株主還元の拡充 を具現化したものであり、投資家にとってポジティブなサプライズとなった。
通期見通しとリスク課題
2027年3月期の通期連結業績予想は、営業収益 2,050億円 (前期比 3.2%増 )、営業利益 1,150億円 (同 1.1%減 )と増収減益を見込む。収益面では現物市場の1日平均売買代金を 7.5兆円 (前期実績より保守的な設定)と前提しつつも、増収を維持する計画だ。一方で、次期システム投資やサイバーセキュリティ対策などの「システム維持・運営費」が増加することを見込んでおり、利益面では小幅な調整を予測している。
経営上のリスクとしては、外部環境の急変に伴う売買代金の減少が挙げられる。特に世界的な景気後退や地政学リスクの顕在化により投資意欲が減退した場合、取引関連収益が下押しされる懸念がある。また、同社は 「市場インフラとしての安全性と信頼性」 を経営の最優先課題としており、大規模なシステム障害やサイバー攻撃への対応コスト増加も恒常的なリスク要因として注視している。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 1,987億円 | 2,050億円 | +3.2% |
| 営業利益 | 1,162億円 | 1,150億円 | △1.1% |
| 純利益 | 791億円 | 775億円 | △2.1% |
日本取引所グループ(JPX)の今回の決算は、日本市場の構造的な変化(新NISAや東証によるPBR改善要請)が、インフラ側の業績に見事に結実した内容と言えます。
特筆すべきは、単に「相場が良いから儲かった」だけでなく、営業利益率が58%を超え、効率的な経営体質を維持している点です。また、配当性向を80%近くまで高めつつ、さらに200億円の自社株買いを追加する姿勢は、資本効率(ROE)を重視するグローバルな投資家からも高く評価されるでしょう。
懸念点としては、来期予想が「増収減益」であることです。これは積極的なシステム投資や人材投資を優先するためですが、市場の期待値が極めて高い中で、将来的なコスト増を上回るだけの「新しい収益源(指数ビジネスやデリバティブの拡充)」をいかに創出できるかが、中期的な株価の焦点となりそうです。
就活生にとっても、安定性と成長性、そして日本の資本市場を支えるという使命感の両面を感じさせる、非常に力強い決算内容となっています。
