オープンアップグループ・2026年6月期Q2、純利益10.2%増の64億円——英国事業売却で減収も、国内M&Aと効率化で最高益圏を維持
売上高
836億円
-17.3%
通期予想
1,710億円
営業利益
91億円
+1.0%
通期予想
165億円
純利益
65億円
+10.2%
通期予想
118億円
営業利益率
10.8%
技術者派遣大手のオープンアップグループが6日に発表した2026年6月期第2四半期(2025年7〜12月)の連結決算(IFRS)は、親会社の所有者に帰属する中間利益が前年同期比 10.2%増 の 6,483百万円 となった。前期に実施した英国事業の売却により売上収益は同 17.3%減 の 83,572百万円 と大きく減少したものの、国内での機動的なM&Aと不採算部門の整理、コスト管理の徹底が奏功し、利益面では増益を確保した。主力の国内派遣事業が堅調なことに加え、配当予想の上方修正と自己株式の消却も発表し、資本効率の向上を鮮明にしている。
業績のポイント
当第2四半期(中間期)の業績は、事業ポートフォリオの大胆な刷新が反映された内容となった。売上収益は 83,572百万円(前年同期比 17.3%減)と減収を記録したが、これは前期に実施した英国事業の売却に伴う 23,146百万円 の売上剥落が主因である。一方で、売上総利益率は前年同期の 24.5% から 27.7% へと 3.2ポイント 大幅に改善した。不採算の海外事業を切り離し、収益性の高い国内の技術者派遣にリソースを集中させた経営判断が数字に表れている。
利益面では、採用費の抑制や効率的なコストマネジメントにより、営業利益は 9,057百万円(前年同期比 1.0%増)と微増を確保した。税引前中間利益は 9,181百万円(前年同期比 2.6%増)、親会社の所有者に帰属する中間利益は 6,483百万円(前年同期比 10.2%増)となり、過去最高水準を維持している。1株当たり中間利益も 75.95円 と、前年同期の 67.75円 から大きく伸長した。
| 指標 | 2025年6月期 Q2 | 2026年6月期 Q2 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 101,037百万円 | 83,572百万円 | △17.3% |
| 事業利益 | 8,823百万円 | 8,908百万円 | +1.0% |
| 営業利益 | 8,970百万円 | 9,057百万円 | +1.0% |
| 中間利益 | 5,884百万円 | 6,483百万円 | +10.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
今期よりセグメント区分を再編し、「機電領域」と「IT領域」を独立させた。各領域で外部環境の明暗が分かれる中、M&Aによる上積みが業績を下支えしている。
機電領域は、売上収益 32,634百万円(前年同期比 9.2%増)、セグメント利益 4,089百万円(同 1.9%減)となった。防衛・航空機分野が国際情勢を背景に堅調に推移したほか、2025年10月に子会社化したエイセブホールディングスの寄与で稼働人員が増加した。利益面では前期の採用調整に伴う採用費の一時的な増加が重荷となったが、在籍エンジニア数は着実に積み上がっている。
IT領域は、売上収益 20,506百万円(前年同期比 0.0%増)、セグメント利益 2,062百万円(同 0.1%増)と横ばいで推移した。DX需要は依然として旺盛だが、生成AIの普及に伴う開発業務の内製化や効率化の動きが一部で逆風となった。組織統合による生産性の一時的な低下も見られたが、コストマネジメントの徹底により利益水準を維持した。
建設領域は、売上収益 29,329百万円(前年同期比 6.5%増)、セグメント利益 3,968百万円(同 1.5%増)と増収増益を達成した。2024年10月に連結化したアイアール社の業績寄与が大きく、建設業界の深刻な人手不足と「2024年問題」に伴う現場管理ニーズが追い風となっている。ただし、アイアール社の利益率が既存事業より低いため、セグメント全体の利益率は若干低下した。
海外領域は、英国事業の売却により売上収益が 323百万円(前年同期比 98.5%減)と激減した。現在は中国を中心としたアジア圏に特化し、収益性の高いエンジニア領域へのポートフォリオ集中を進めている。
| セグメント | 売上収益 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 機電領域 | 32,634百万円 | +9.2% | 4,089百万円 | △1.9% |
| IT領域 | 20,506百万円 | +0.0% | 2,062百万円 | +0.1% |
| 建設領域 | 29,329百万円 | +6.5% | 3,968百万円 | +1.5% |
| 海外領域 | 323百万円 | △98.5% | 148百万円 | △71.9% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 機電領域 | 326億円 | 39% | 41億円 | 12.5% |
| IT領域 | 205億円 | 25% | 21億円 | 10.1% |
| 建設領域 | 293億円 | 35% | 40億円 | 13.5% |
| 海外領域 | 3億円 | 0% | 1億円 | 45.8% |
財務状況と資本政策
財務基盤は、活発な投資活動と株主還元の両立を支える健全な状態を維持している。総資産は前連結会計年度末比で 2,782百万円 増加し、125,484百万円 となった。M&Aに伴うのれんの増加や無形資産の積み増しが主な要因である。一方で、自己株式の取得を精力的に進めた結果、親会社の所有者に帰属する持分比率は 61.8%(前期末比 2.4ポイント減)となったが、依然として高い自己資本水準を保っている。
キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュフローが 9,769百万円 の収入と、前年同期(6,421百万円)から大幅に改善した。これにより、子会社取得による 2,332百万円 の支出や、3,915百万円 の配当支払い、さらには 3,983百万円 の自己株式取得といった積極的な資本投下を、営業キャッシュフローの範囲内で概ね賄えている。
特筆すべきは、株主還元の強化である。中間配当を従来予想から引き上げ、前年同期比 5円増 の 35円 とした。年間配当予想も前期実績比 10円増 の 85円 へと増額しており、好調な現金の創出力(キャッシュジェネレーション)を背景に、総還元性向の向上を強く意識した姿勢を打ち出している。また、2026年2月27日付で 100万株 の自己株式消却を実施することも決定した。
通期見通し
2026年6月期の通期業績予想については、2025年8月に公表した数値を据え置いた。売上収益は前期比 9.0%減 の 171,000百万円、事業利益は同 3.9%増 の 16,245百万円 を見込む。海外事業売却による減収を、国内3領域の成長とM&Aによる上積みでカバーし、本業の儲けを示す事業利益では増益を目指すシナリオだ。
下期に向けては、建設領域での退職率改善に向けた体質強化や、機電領域での自動車分野の需要回復時期が焦点となる。また、IT領域における生成AIの影響を注視しつつ、より付加価値の高い技術領域へのシフトを急ぐ方針である。M&AによるPMI(買収後の統合プロセス)が順調に進めば、利益面でのさらなる上振れの可能性も残している。
| 項目 | 前期実績(2025/6) | 当期予想(2026/6) | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 187,932百万円 | 171,000百万円 | △9.0% |
| 事業利益 | 15,640百万円 | 16,245百万円 | +3.9% |
| 営業利益 | 16,246百万円 | 16,500百万円 | +1.6% |
| 当期利益 | 12,551百万円 | 11,800百万円 | △6.0% |
リスクと課題
同社が成長を持続する上での主な懸念要因は以下の通りである。
- 人材の確保と定着率: 建設・機電の両領域で人材獲得競争が激化しており、採用費の上昇や、特に建設領域での高い退職率が利益の押し下げ要因となっている。下期に実施する「体質改善に向けた施策」の実効性が問われる。
- 外部環境の変動: 自動車分野における関税影響回避の動きや、半導体製造装置分野の投資抑制など、顧客企業の景況感に稼働率が左右されるリスクがある。
- 技術トレンドへの対応: IT領域において、AIによる自動化が従来の派遣モデル(人月単価)にどう影響するか、付加価値の再定義が必要な局面にある。
- M&Aの統合リスク: エイセブ社などの買収先とのシナジー早期発現が、通期目標達成の鍵を握る。
オープンアップグループの今回の決算は、まさに「量から質への転換」を象徴する内容でした。売上高の17%減という数字だけを見ると驚きますが、その実態は低収益な海外事業の売却によるものであり、営業利益や純利益がプラスを維持している点は、経営の質が向上している証左と言えます。
特に注目すべきは、国内の「機電・IT・建設」の3本柱がそれぞれ外部環境の変化(防衛需要、AI活用、建設規制対応)に直面しながらも、M&Aを梃子に成長を維持している点です。今回の中間決算で発表された増配と自己株式の消却は、キャッシュフローへの自信の表れであり、投資家にとっては非常にポジティブなシグナルとなります。
今後の焦点は、建設領域での退職率改善という「負の遺産」の解消と、自動車・半導体といった製造業分野の回復をどこまで取り込めるかにあります。技術者派遣という労働集約的なモデルの中で、いかに高付加価値領域へシフトできるかが、同社の長期的な企業価値を左右するでしょう。
