パソナグループ・2026年5月期Q2、売上高1,545億円で微増も営業赤字転落——BPO案件一服を派遣・観光が支える構造へ
売上高
1,545億円
+0.4%
通期予想
3,300億円
営業利益
-204百万円
通期予想
25億円
純利益
-620百万円
通期予想
5億円
営業利益率
-0.1%
パソナグループが14日に発表した2026年5月期第2四半期(中間期)の連結決算は、売上高が前年同期比 0.4%増 の 1,545億2,700万円 となりました。主力だった大型の BPO(業務委託)案件がピークアウト した影響で営業利益は 2億400万円の赤字 (前年同期は4,400万円の黒字)に転落したものの、地方創生・観光事業の急成長や人材派遣の単価上昇が全体を下支えしました。最終損益は万博関連の特別損失により 6億2,000万円の赤字 となりましたが、前年同期の37億円超の赤字からは大幅に改善しています。
業績のポイント
当期の中間決算は、新型コロナウイルス関連などの大型公的案件が収束したことによる影響を、成長分野での拡大でいかに補うかが焦点となりました。売上高は 1,545億2,700万円 (前年同期比 +0.4% )と微増を確保したものの、収益面では退職給付費用の増加やITインフラ利用料の改定に伴うコスト増が重荷となり、営業損益は 2億400万円の赤字 を計上しました。
一方で、経常利益は前年同期比 330.4%増 の 8億1,500万円 と大幅な増益を達成しています。これは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)でのパビリオン出展に伴う 協賛金収入や物販収入 が営業外収益として計上されたことが主な要因です。本業の利益を示す営業利益は苦戦したものの、万博という特大イベントに関連する収益が経常段階での数字を大きく押し上げる形となりました。
親会社株主に帰属する中間純損益については、 6億2,000万円の赤字 となりました。万博出展に関連する費用を特別損失に計上したことが影響していますが、前年同期( 37億6,200万円の赤字 )と比較すると赤字幅は大幅に縮小しています。構造改革の進展と、不採算セグメントの改善が寄与しており、通期での黒字化(予想 5億円 )に向けた足場固めを進めています。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力のHRソリューション事業は、売上高 1,421億6,600万円 (前年同期比 0.5%減 )、営業利益 74億8,400万円 (同 4.9%減 )となりました。このうちBPOソリューションは、大型案件の終了により減収となりましたが、専門性の高い技術支援やリスキリングなどの新領域が拡大し、売上総利益率は 21.9% と前年同期から 0.9ポイント 改善しています。人材派遣(エキスパート)は、深刻な人材不足を背景にシニア層の活用が進み、派遣料金単価の上昇もあって堅調に推移しました。
地方創生・観光ソリューション事業は、売上高 43億6,000万円 (前年同期比 24.8%増 )と驚異的な成長を遂げています。兵庫県淡路島の「ニジゲンノモリ」ではアニメコラボイベントが人気を博し、インバウンド需要も取り込んだことで来場者数が大幅に増加しました。営業損益は 5億3,100万円の赤字 でしたが、前年同期の 9億1,500万円の赤字 から大幅に改善しており、収益化の目処が立ちつつあります。
| セグメント名 | 売上高 (百万円) | 前年比 | 営業利益 (百万円) | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| HRソリューション | 142,166 | △0.5% | 7,484 | △4.9% |
| グローバル | 5,724 | +4.8% | 116 | △10.8% |
| ライフソリューション | 4,624 | +11.2% | 192 | +160.7% |
| 地方創生・観光 | 4,360 | +24.8% | △531 | (改善) |
ライフソリューション事業も好調で、売上高は前年比 11.2%増 の 46億2,400万円 となりました。東京都内での新規学童クラブ運営の拡大や、自治体向けの家事代行受託が伸長しています。コスト抑制策も功を奏し、セグメント利益は前年同期の 7,400万円 から 1億9,200万円 へと 2.6倍 以上に急増しました。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| HRソリューション | 1,422億円 | 92% | 75億円 | 5.3% |
| 地方創生・観光ソリューション | 44億円 | 3% | -531百万円 | -12.2% |
| グローバルソリューション | 57億円 | 4% | 1億円 | 2.0% |
財務状況と資本政策
2025年11月末時点の総資産は、前期末比 279億1,200万円減 の 2,371億2,500万円 となりました。これは主に、受託案件に関連して顧客から一時的に預かっていた「預り金」が 244億4,500万円減少 したことによるもので、実質的な財務基盤の悪化を示すものではありません。自己資本比率は前期末の 50.9% から 54.4% へと上昇し、健全な水準を維持しています。
キャッシュ・フロー面では、営業活動によるキャッシュ・フローが 66億2,100万円の支出 となりました。これは売上債権の増加や法人税の支払いなどが重なったためです。一方で投資活動では有価証券の償還などにより 101億4,900万円の収入 を確保し、財務活動でも長期借入れによる資金調達( 110億円 )を行うなど、成長投資に向けた資金の流動性を確保しています。
配当については、期末配当予想を 75.00円 (普通配当15円、特別配当60円)で据え置きました。前年実績と同額を維持する方針であり、厳しい利益環境下にあっても 継続的な株主還元 を重視する姿勢を明確にしています。自己資本の充実と株主還元のバランスを考慮した経営判断といえます。
通期見通し
2026年5月期の通期業績予想については、期初からの数値を据え置いています。売上高は前期比 6.7%増 の 3,300億円 、営業利益は 25億円 を見込んでいます。下期に向けては、人材派遣における料金単価のさらなる引き上げや、再就職支援事業での商談獲得の加速を狙います。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 (据置) | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,300億円 | 3,300億円 | 3,093億円 |
| 営業利益 | 25億円 | 25億円 | △5.2億円 |
| 親会社株主帰属純利益 | 5億円 | 5億円 | △55.4億円 |
地方創生事業では、春季以降のアニメコンテンツを活用した集客施策や、大阪・関西万博への本格参画による 相乗効果 を期待しています。また、グループ全体でコストコントロールを徹底し、新規事業の立ち上げ早期化と人員配置の適正化を進めることで、通期での営業黒字復帰と最終利益の確保を目指す方針です。
リスクと課題
同社が直面している主なリスクとして、以下の点が挙げられます。
- ITコストと人件費の増大: グループ全体のITインフラ利用料金の改定や、退職給付費用の増加が利益を圧迫しています。今後もシステムの高度化に伴うコスト管理が課題となります。
- BPO需要の質的変化: 官公庁向けの新型コロナ関連案件が終了し、より高度なDX支援や専門業務へのシフトが求められています。新規案件の獲得スピードが業績回復の鍵を握ります。
- 労働力不足の影響: 人材派遣需要は旺盛ですが、供給側であるスタッフの確保が困難になっています。採用コストの増大や、マッチング精度の維持がリスク要因となります。
- 外部環境の不透明性: 米国の通商政策や自動車業界の動向など、主要顧客の景況感の変化が人材紹介や派遣の需要に直結する可能性があります。
パソナグループの今回の決算は、まさに「脱・コロナ案件」の過渡期にあることを象徴しています。営業利益が赤字に転落した点は一見ネガティブですが、特筆すべきは 地方創生・観光事業の伸び です。
淡路島を中心とした観光投資が、インバウンド需要の回復とともに売上高24.8%増という目に見える形で成果を出し始めています。また、万博関連の収益が経常利益を下支えしている点もユニークで、同社の積極的な社会イベント参画が財務的なクッションとして機能している点は評価できます。
懸念点は、退職給付費用やIT利用料といった 構造的なコスト増 です。これらを吸収できるほど、高付加価値なBPOや人材紹介の単価を引き上げられるかが、通期目標達成の焦点となるでしょう。就活生にとっては、単なる人材派遣会社から、観光や社会課題解決を多角的に手がける「総合プロデュース企業」への変貌がより鮮明になった決算と言えます。
