業界ダイジェスト
株式会社ラクス の会社詳細
株式会社ラクス
ラクス
2026年3月期 通期

ラクス・2026年3月期通期、営業利益70.2%増の173億円——クラウド事業好調、IT人材事業譲渡で「専業体制」へ

増収増益
クラウド事業
楽楽精算
事業譲渡
自己株買い
増配
株式分割
SaaS
DX需要
構造改革
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

603億円

+23.3%

通期予想

597億円

進捗率101%

営業利益

173億円

+70.2%

通期予想

205億円

進捗率85%

純利益

133億円

+66.1%

通期予想

252億円

進捗率53%

営業利益率

28.8%

クラウドサービス大手のラクスが発表した2026年3月期通期決算は、売上高が前期比 23.3%増602億8,600万円 、営業利益が同 70.2%増173億4,500万円 と大幅な増収増益を達成しました。主力商品の「楽楽精算」や「楽楽明細」が市場の成熟を跳ね返して新規受注を伸ばしたほか、広告宣伝費の最適化が利益率の劇的な改善に寄与しました。また、経営資源をクラウド事業へ集中させるため、連結子会社のラクスパートナーズ(IT人材事業)を売却するという戦略的な事業再編も大きな転換点となっています。

業績のポイント

ラクスは、主力であるクラウド事業の力強い成長により、過去最高水準の業績を記録しました。売上高は 602億8,600万円 (前年比 +23.3% )、営業利益は 173億4,500万円 (前年比 +70.2% )と、増収幅を上回る利益成長を実現しています。これは価格改定の効果に加え、投資効率を重視した資源配分が奏功した結果です。

利益面では、親会社株主に帰属する当期純利益が 132億9,300万円 (前年比 +66.1% )に達しました。売上高営業利益率は前期の 20.8% から 28.8% へと 8.0ポイント も上昇しており、収益性が大幅に向上しています。企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)需要が根強く、業務効率化ソフトへの投資が継続していることが背景にあります。

指標2025年3月期(実績)2026年3月期(実績)前年比
売上高48,904百万円60,286百万円+23.3%
営業利益10,192百万円17,345百万円+70.2%
営業利益率20.8%28.8%+8.0pt
純利益8,003百万円13,293百万円+66.1%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力であるクラウド事業は、売上高 517億7,000万円 (前年比 +23.7% )、セグメント利益 160億2,700万円 (前年比 +71.1% )と驚異的な伸びを見せました。特に交通費精算システム「楽楽精算」が、市場の成熟に伴い未導入層が慎重になる中でも着実に新規契約を積み上げました。また、電子請求書発行システム「楽楽明細」も法対応などを背景に需要を取り込み、事業全体の成長を力強く牽引しました。

IT人材事業についても、エンジニアの稼働人数拡大と旺盛な需要を背景に、売上高 85億1,600万円 (前年比 +20.9% )、セグメント利益 13億1,800万円 (前年比 +59.2% )と堅調に推移しました。しかし同社は、クラウド事業とのシナジーが希薄化していると判断し、経営資源をクラウド事業へ集中させるため、2026年4月付で本セグメントの全株式を売却することを決定しました。今後は「クラウド専業」としての成長を加速させる方針です。

セグメント売上高前年比利益前年比
クラウド事業51,770百万円+23.7%160,27百万円+71.1%
IT人材事業8,516百万円+20.9%1,318百万円+59.2%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
クラウド事業518億円86%160億円31.0%
IT人材事業85億円14%13億円15.5%

財務状況と資本政策

当期末の総資産は 365億8,100万円 となり、前期末から 49億2,700万円 増加しました。これは主に利益成長に伴う現金及び預金の増加によるものです。自己資本比率は 71.2% と高水準を維持しており、盤石な財務基盤を背景に、積極的な株主還元と投資の両立を図っています。

特筆すべきは、株主還元への姿勢です。当期は 69億9,900万円自己株式取得を実施し、取得した全株式を消却しました。また、配当についても前期の4.5円から 7.0円 へと大幅な増配(分割調整後比較)を実施しています。さらに、2025年10月には1株につき2株の株式分割を行い、投資家層の拡大と流動性の向上にも取り組んでいます。

戦略トピック:IT人材事業の譲渡と次期中期計画

ラクスは、2026年4月1日付で連結子会社のラクスパートナーズを売却しました。この事業譲渡に伴い、2027年3月期第1四半期に関係会社株式売却益**166億8,500万円**を特別利益として計上する見込みです。この戦略的判断の背景には、クラウド業界の成功指標である「Rule of 50(売上成長率と利益率の合計が50%以上)」を追求し、高成長と高収益を両立させる狙いがあります。

次期中期経営計画では、クラウド事業のオーガニックな売上成長率 15%以上 を目標に掲げています。IT人材事業の切り離しにより、連結売上高は一時的に減少して見えますが、クラウド事業単体での成長スピードは維持される見通しです。生成AIをプロダクトに連携させるなど、運用自動化の実装による新たな付加価値の提供を急いでいます。

通期見通し

2027年3月期の連結業績予想は、売上高 597億円 (前年比 1.0%減 )、営業利益 205億円 (同 18.2%増 )を見込んでいます。売上高が減少するのはIT人材事業の除外によるもので、クラウド事業のみの比較では 15.3%増 の実質的な増収計画です。当期純利益は、子会社売却益の影響により 252億円 (同 89.6%増 )と大幅に跳ね上がる見通しです。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想増減率
売上高60,286百万円59,700百万円△1.0%
営業利益17,345百万円20,500百万円+18.2%
純利益13,293百万円25,200百万円+89.6%

リスクと課題

今後の懸念材料として、会社側は以下のリスクに言及しています。

  • 市場の成熟化: 一部の事業領域でシステム未導入層が導入効果を慎重に見極める層へと移行しており、受注獲得の難易度が高まる可能性があります。
  • 競争環境の激化: 類似サービスを展開する競合他社の増加により、顧客獲得コストの上昇や価格競争に巻き込まれるリスクがあります。
  • 地政学的リスク: 現時点での影響は限定的ですが、中東情勢などの外部環境の変化がIT投資マインドに与える影響を注視しています。
AIアナリストの視点

ラクスは「高成長・低収益(投資優先)」のフェーズから、明確に「高成長・高収益」の両立を狙うステージへとシフトしました。

今回の決算で最も注目すべきは、単なる増益だけでなく、営業利益率が8ポイントも上昇した点です。広告宣伝費を野放図に増やすのではなく、効率を重視した「筋肉質な成長」に舵を切っています。

また、創業事業であるIT人材事業を、業績が良いタイミングで売却した経営判断は非常に合理的です。これにより同社は純粋なSaaS企業となり、投資家からはより高いマルチプル(株価評価)を期待される対象になるでしょう。2027年3月期は売却益により純利益が爆発的に増えますが、投資家はそれよりも「クラウド事業単体でのオーガニックな成長」が計画通り15%以上を維持できるかに注目すべきです。