リログループ・2026年3月期Q3、売上収益4%増の1,089億円——主力の福利厚生は堅調も、前期の資産売却反動で純利益6割減
売上高
1,090億円
+4.0%
通期予想
1,500億円
営業利益
214億円
-1.6%
通期予想
314億円
純利益
146億円
-60.8%
通期予想
210億円
営業利益率
19.6%
リログループが発表した2026年3月期第3四半期の連結決算(IFRS)は、売上収益が前年同期比 4.0%増 の 1,089億6,800万円 と増収を確保しました。主力の福利厚生事業や借上社宅管理事業などのストック型ビジネスが順調に拡大した一方で、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同 60.8%減 の 146億2,000万円 と大幅な減益を記録しています。これは前年同期に計上した持分法適用会社株式の売却益(約187億円)の剥落が主因であり、本業の収益力を示す営業利益は同 1.6%減 の 213億6,000万円 と、ほぼ前年並みの水準を維持しています。
業績のポイント
当第3四半期の連結業績は、売上収益が 1,089億6,800万円 (前年同期比 +4.0% )、営業利益は 213億6,000万円 (同 -1.6% )となりました。一見すると利益面で苦戦しているように見えますが、その背景には特殊要因が存在します。前年同期には資産ポートフォリオの最適化の一環として、持分法適用会社の株式売却益を 187億円 計上しており、今期はその反動が大きく出た形です。この特殊要因を除いた「実力値」ベースでは、主力のBtoBビジネスが極めて堅調に推移しています。
企業の深刻な労働力不足を背景に、従業員の満足度を高める福利厚生代行サービスや、人事総務の業務負荷を軽減する社宅管理アウトソーシングへの需要が拡大しています。特に福利厚生事業では会員数の新規獲得が進み、ストック収益である会費収入が着実に積み上がっています。税引前利益が 213億6,100万円 (同 -51.4% )と半減しているのは、前述の売却益が税引前利益に含まれていたためであり、事業構造そのものに陰りが出たわけではない点に留意が必要です。
業績推移(通期)
セグメント別動向
今期より報告セグメントを「アウトソーシング事業」「賃貸管理事業」「観光事業」の3区分へ変更し、経営効率の向上を図っています。
アウトソーシング事業(福利厚生、借上社宅管理、海外赴任支援等)は、売上収益 592億4,500万円 (前年同期比 +5.9% )、営業利益 164億8,400万円 (同 +2.7% )と増収増益を達成しました。福利厚生代行の会員増に加え、借上社宅管理における管理戸数の増加が寄与しています。また、日本企業の海外進出活発化に伴い、海外赴任サポートの利用件数も増加しており、グループ全体の稼ぎ頭としての存在感を強めています。
賃貸管理事業は、売上収益 368億8300万円 (前年同期比 +1.2% )、営業利益 51億8,900万円 (同 -2.4% )となりました。ストック基盤である管理戸数は順調に積み上がりましたが、前年同期に発生した大型物件の売却益が今期はなかったことが減益の要因です。観光事業も同様に、売上収益は 120億4,800万円 (同 +4.0% )と増収を確保しましたが、営業利益は 29億5,800万円 (同 -14.8% )と資産売却の反動により減益となりました。ただし、ホテル集客数自体は増加傾向にあり、インバウンド需要の取り込みは順調に進んでいます。
| セグメント名 | 売上収益 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| アウトソーシング事業 | 592.4億円 | +5.9% | 164.8億円 | +2.7% |
| 賃貸管理事業 | 368.8億円 | +1.2% | 51.8億円 | -2.4% |
| 観光事業 | 120.4億円 | +4.0% | 29.5億円 | -14.8% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| アウトソーシング事業 | 592億円 | 54% | 165億円 | 27.8% |
| 賃貸管理事業 | 369億円 | 34% | 52億円 | 14.1% |
| 観光事業 | 120億円 | 11% | 30億円 | 24.6% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は、前期末比 64億4,900万円 減少の 2,967億2,600万円 となりました。これは主に営業債権の減少や、有利子負債の返済が進んだことによるものです。一方で、親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)は、利益の積み上げにより 781億2,000万円 (前期末比 +99億2,200万円 )に増加しました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末の 22.5% から 26.3% へと改善しており、財務基盤の安定化が進んでいます。
配当については、株主還元を重視する姿勢を継続しています。2026年3月期の年間配当予想は、前期実績の42円(普通配当38円+特別配当4円)に対し、普通配当のみで 49.00円 を計画しています。これは実質的な増配であり、キャッシュフローの創出力に対する自信の表れと言えます。自己株式の取得などは今四半期中には実施されていませんが、安定した配当の継続を通じて投資家への期待に応える方針です。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、当初の計画を据え置いています。売上収益は前期比 5.0%増 の 1,500億円 、営業利益は同 3.2%増 の 314億円 を見込んでいます。第3四半期までの進捗は概ね想定通りであり、期末にかけて福利厚生の会員獲得や社宅管理の繁忙期を迎えることから、目標達成に向けて順調な推移となっています。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 (2025/3) |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,500億円 | 1,500億円 | 1,428億円 |
| 営業利益 | 314億円 | 314億円 | 304億円 |
| 当期利益 | 210億円 | 210億円 | 433億円 |
純利益が前期比で大幅に減少する見通しですが、これはあくまで前述の一過性の利益剥落によるものです。経営陣は現在、新中期経営計画「第四次オリンピック作戦」を始動させており、「人材投資」「労働力不足」「シニア・相続」の3領域を成長の柱に据えています。既存事業の深化とともに、これらの社会的課題を解決する新規事業の創出に注力する方針です。
リスクと課題
同社が直面する主なリスクとしては、以下の点が挙げられます。
- 労働力不足の深刻化: 顧客企業の生産性向上を支援するビジネスを展開している一方、自社グループ内での人材確保や処遇改善に伴う人件費の上昇が、中長期的な利益率の重石となる可能性があります。
- 外部環境の変動: 日本企業の海外進出を支援する事業において、地政学リスクや円高・円安の急激な進行が企業の赴任計画に影響を与えるリスクがあります。
- 競争環境の変化: 福利厚生代行や賃貸管理の分野では、ITを活用したプラットフォーマーや異業種からの参入が相次いでおり、差別化のための継続的なシステム投資が必要となっています。
リログループの決算で最も注目すべきは、表面上の「純利益6割減」という数字に惑わされないことです。これは前期に計上された持分法適用会社(海外事業の一部と推察される)の売却益という一過性要因がなくなっただけであり、本業の収益力はむしろ強化されています。
特に、福利厚生事業の営業利益率(セグメント利益を外部売上で割った値)は約27.8%と極めて高く、この高収益なストック収益が全体を支える構造は非常に強固です。就活生にとっても、日本企業の「福利厚生のアウトソーシング」という市場は、労働人口減少に伴いさらに拡大するポテンシャルを持っており、同社の立ち位置は非常にユニークです。
今後の焦点は、新中期経営計画で掲げた「シニア・相続」領域での事業化がどの程度のスピード感で収益に寄与し始めるか、そして不動産売却益に頼らない持続的な利益成長のサイクルをいかに確固たるものにするかにあります。
