リゾートトラスト・2026年3月期Q3、会計上は23%営業減益も実力ベースでは26%増益——会員募集は過去最高水準を維持
売上高
1,688億円
-14.6%
通期予想
2,600億円
営業利益
199億円
-23.0%
通期予想
290億円
純利益
135億円
-25.1%
通期予想
203億円
営業利益率
11.8%
リゾートトラストが発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)の連結決算は、売上高が前年同期比 14.6%減 の 1,688億円、営業利益が同 23.0%減 の 198億円 となった。一見すると大幅な減収減益だが、これは前年同期にあった大規模ホテルの開業に伴う不動産収益の一括計上が剥落したことによる特殊要因が大きく、事業の実態は極めて好調だ。未開業物件の契約を反映した実力ベースの指標である 「評価営業利益」は前年同期比26.0%増 となり、通期では過去最高の業績更新を見込んでいる。
業績のポイント:見かけの減益と「実力値」の乖離
当第3四半期累計期間の連結業績は、売上高 1,688億1,900万円(前年同期比 14.6%減)、営業利益 198億6,200万円(同 23.0%減)、純利益 135億4,400万円(同 25.1%減)と、主要指標が軒並みマイナスとなった。しかし、この数字の背景には会員制ホテル事業特有の会計処理が深く関わっている。前年同期には「サンクチュアリコート琵琶湖」の開業により、それまで繰り延べられていた多額の不動産収益が一括計上されたのに対し、当期間は新規開業がなかったことが「減収減益」の直接的な要因だ。
一方で、同社が重視する独自指標「評価営業利益」は 293億9,300万円(前年同期比 26.0%増)と大幅な伸びを見せている。これは、ホテルの開業有無に関わらず、当期間中にどれだけ会員権が売れたかを示す指標であり、過去最高の販売実績 を更新し続けていることを物語っている。また、既存ホテルの稼働に伴う運営収益や、安定成長を続けるメディカル事業が底堅く推移しており、会計上の減益が事業の停滞を意味するものではないことは明白だ。
| 指標 | 2025年3月期 Q3実績 | 2026年3月期 Q3実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,976億円 | 1,688億円 | △14.6% |
| 営業利益 | 257億円 | 198億円 | △23.0% |
| 評価営業利益 | 233億円 | 293億円 | +26.0% |
| 純利益 | 180億円 | 135億円 | △25.1% |
セグメント別動向:ホテル運営とメディカルが大幅増益
会員権事業は、売上高 421億7,600万円(前年同期比 47.7%減)、セグメント利益 141億7,800万円(同 40.1%減)となった。数字上は大幅な落ち込みだが、会員募集自体は「サンクチュアリコート金沢」や「サンクチュアリコート淡路島」を中心に極めて好調に推移している。会員権販売のうち、不動産代金部分は開業まで売上として計上されないため、好調な契約実績が将来の収益として「前受金」に積み上がっている状況だ。
ホテルレストラン等事業は、売上高 844億3,900万円(前年同期比 7.6%増)、セグメント利益 64億円(同 80.7%増)と、利益が倍増に近い伸びを記録した。2024年10月に開業した「サンクチュアリコート琵琶湖」の稼働が寄与したほか、運営管理費(年会費)や室料などの価格改定が浸透。賃金引上げによる人件費増や食材費の高騰を、生産性向上と単価アップで十分に吸収し、利益率を大きく高めたことが特筆される。
メディカル事業は、売上高 416億8,600万円(前年同期比 9.6%増)、セグメント利益 60億4,700万円(同 6.5%増)と着実な成長を見せた。総合メディカルサポート倶楽部「グランドハイメディック倶楽部」の会員権販売が順調だったことに加え、会員数の増加に伴う会費収入が安定的に積み上がっている。一般健診事業においても設備の拡張や事業所の拡大を進めており、ストック型ビジネスとしての強固な収益基盤を再確認する内容となった。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 会員権事業 | 421億円 | △47.7% | 141億円 | △40.1% |
| ホテルレストラン等 | 844億円 | +7.6% | 64億円 | +80.7% |
| メディカル事業 | 416億円 | +9.6% | 60億円 | +6.5% |
財務状況と資本政策:株主還元を重視し実質増配へ
資産面では、総資産が前期末比 10.6%増 の 5,452億円 に拡大した。これは、会員権販売の好調に伴う割賦売掛金(自社ローン債権)の増加や、未開業物件の開発が進んだことによる仕掛販売用不動産の増加が主因である。負債も、契約に伴う前受金(将来の売上)が増加したことで、負債合計は 3,881億円 となったが、これは将来の収益が保証された健全な増加といえる。
資本政策においては、積極的な株主還元姿勢を継続している。2026年3月期の年間配当予想は 34円(2025年4月1日付の1:2株式分割考慮後)を据え置いており、これは分割前の水準に換算すると 68円 となり、前期(62円)から 実質6円の増配 となる見込みだ。自己資本配当率(DOE)は4.7%程度となる見通しで、目標とする「DOE 5.0%」の達成に向けて、安定的な還元と利益成長の両立を図る経営判断が示されている。
通期見通し:過去最高の利益更新へ、第4四半期に日光開業を控える
2026年3月期の通期連結業績予想については、前回発表の数値を据え置いた。売上高 2,600億円(前期比 4.3%増)、営業利益 290億円(同 10.0%増)、純利益 203億円(同 0.8%増)を見込み、売上・営業利益・経常利益で 過去最高の更新 を目指す方針だ。
第4四半期には、2026年2月に「サンクチュアリコート日光」の開業を予定している。これにより、これまで繰り延べられてきた不動産代金が一括計上されるため、通期では「減収減益」から一転して「増収増益」に着地する見通しだ。採用強化による人件費の増加といった先行投資を継続しつつも、高付加価値サービスの提供による単価上昇とDX推進による効率化で、さらなる収益性の向上を追求するとしている。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想(据置) | 前期実績 | 対前期増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,600億円 | 2,600億円 | 2,493億円 | +4.3% |
| 営業利益 | 29,000百万円 | 29,000百万円 | 26,365百万円 | +10.0% |
| 経常利益 | 29,000百万円 | 29,000百万円 | 26,848百万円 | +8.0% |
| 純利益 | 20,300百万円 | 20,300百万円 | 20,139百万円 | +0.8% |
リスクと課題
同社が直面する主なリスクとしては、以下の要因が挙げられる。
- 人件費の上昇: ベースアップを含む賃金引き上げを継続しており、採用強化に伴うコスト増が短期的には利益を圧迫する可能性がある。
- ホテル開業スケジュールの影響: 会計上の売上・利益がホテルの開業タイミングに大きく左右されるため、四半期ごとの業績変動が激しくなりやすい。
- 外部環境の変化: 光熱費や食材費などの原材料価格の高騰。これらは現在、サービス単価への転嫁で対応しているが、さらなる高騰や消費マインドの冷え込みがリスクとなる。
- 建設コストの変動: 新規物件の開発において、建築資材費や建設人件費の上昇が投資収益率を低下させる恐れがある。
リゾートトラストの決算を読み解く上で最も重要なのは、「会計上の数値」と「事業の実態(評価ベース)」のギャップを理解することです。会員権販売(不動産分)は開業時に一気に収益化されるため、四半期単位の表面的な数字に一喜一憂するのは禁物です。
注目すべきは、ホテルレストラン事業の利益率改善(前年比+80.7%増益)です。これは単に新しいホテルができたからだけでなく、既存顧客への価格転嫁とDXによる効率化が結実している証拠です。人件費増を上回る収益性を確保できている点は、サービス業として非常に高く評価できます。
また、メディカル事業が安定したストック収益として定着していることも強みです。景気変動を受けやすいホテル事業を、安定した医療会費ビジネスが下支えするポートフォリオは、投資家にとっても安心材料でしょう。今後の焦点は、第4四半期の「日光」開業による利益確定と、次期以降に向けた会員権販売の勢いが持続するかどうかに集まります。
