ローム・2026年3月期第3四半期、営業利益97億円で黒字転換——車載・アミューズメント好調、通期予想を上方修正
売上高
3,695億円
+7.2%
通期予想
4,800億円
営業利益
97億円
通期予想
60億円
純利益
148億円
+6958.1%
通期予想
100億円
営業利益率
2.6%
半導体大手のロームが4日に発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)の連結決算は、売上高が前年同期比 7.2%増 の 3,695億円、営業利益は 97億円 の黒字(前年同期は110億円の赤字)へと急回復しました。主力の車載向け半導体やアミューズメント向け需要が堅調に推移したほか、構造改革による固定費削減や減価償却方法の変更が利益を大きく押し上げました。これを受け、同社は通期の営業損益予想を従来の赤字から 60億円 の黒字へと上方修正しています。
業績のポイント
当第3四半期の業績は、売上・利益ともに前年同期を大きく上回る結果となりました。売上高は前年同期比 7.2%増 の 3,695億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は 148億円(前年同期は2億円)を記録しています。前年に実施した生産拠点の再編などの構造改革が実を結び、固定費の抑制が進んだことが黒字転換の大きな要因です。
利益面では、今期より有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法へと変更したことが寄与しています。この変更により当期間の営業利益は 124億円 押し上げられており、設備投資負担を平準化しつつ実態に即した収益管理を行う経営判断が示されました。また、為替の円安進行も売上高の押し上げに貢献しています。
| 項目 | 前年同期(25/3期 Q3) | 当期(26/3期 Q3) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,446億円 | 3,695億円 | +7.2% |
| 営業利益 | △110億円 | 97億円 | — |
| 経常利益 | 3億円 | 150億円 | +4,665.1% |
| 四半期純利益 | 2億円 | 148億円 | +6,958.1% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力セグメントであるLSI事業は、売上高が前年同期比 8.6%増 の 1,693億円、セグメント利益は同 400.1%増 の 199億円 と大幅な増益を達成しました。自動車市場向けでは、高度運転支援システム(ADAS)向け製品が調整局面にあるものの、ボディ系や電動車(xEV)向けの高付加価値製品が大きく伸長しています。さらに、民生機器市場におけるアミューズメント向け需要の強い回復が利益を牽引しました。
半導体素子事業の売上高は前年同期比 8.1%増 の 1,558億円 となりましたが、セグメント損益は 164億円の赤字(前年同期は204億円の赤字)と改善途上にあります。次世代パワー半導体として期待される SiC(炭化ケイ素)パワーデバイス はxEV向けに好調を維持しています。一方で、品質保証関連の一時的な費用が発生しており、これが利益面での重石となりましたが、来期以降の改善を見込んでいます。
モジュール事業は、事務機向けプリントヘッドが増加したものの、スマートフォン向けセンサの減少により売上高は 2.9%減 の 249億円 となりました。その他(抵抗器など)のセグメントは、自動車・産業機器向けのシャント抵抗器などが堅調で、セグメント利益は同 76.2%増 の 33億円 と好調な推移を見せています。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| LSI | 1,693億円 | +8.6% | 199億円 | 11.8% |
| 半導体素子 | 1,558億円 | +8.1% | △164億円 | -10.6% |
| モジュール | 249億円 | -2.9% | 30億円 | 12.1% |
| その他 | 194億円 | +2.3% | 33億円 | 17.2% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| LSI | 1,694億円 | 46% | 199億円 | 11.8% |
| 半導体素子 | 1,558億円 | 42% | -16,488百万円 | -10.6% |
| モジュール | 249億円 | 7% | 30億円 | 12.1% |
| その他 | 194億円 | 5% | 33億円 | 17.2% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比で91億円増加し、1兆4,499億円 となりました。有形固定資産の増加の一方で、投資有価証券の売却が進んでいます。自己資本比率は前連結会計年度末の61.7%から 63.8% に上昇しており、健全な財務体質を維持しています。キャッシュフロー面では、営業活動により 713億円 の資金を創出しており、着実に現金を稼ぐ力が回復しています。
株主還元については、中間配当 25.00円 を実施済みで、期末配当も 25.00円 の予想を据え置きました。年間配当は前期と同額の 50.00円 を予定しています。不透明な外部環境下でも、安定的な配当を継続する姿勢を強調しています。また、投資活動によるキャッシュフローは小幅なプラスとなっており、資産の売却と成長投資のバランスを適正化する経営判断が見て取れます。
通期見通しの上方修正
ロームは、2026年3月期の通期業績予想を上方修正しました。当初は400億円の営業赤字を見込んでいましたが、想定以上の円安進行やアミューズメント市場の好調、減価償却方法の変更による費用圧縮を背景に、60億円 の黒字に転換する見通しです。データセンター関連の投資が拡大していることも、サーバー向け製品の追い風となっています。
| 指標 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,484億円 | 4,800億円 | 4,678億円 |
| 営業利益 | △400億円 | 6,000百万円 | △435億円 |
| 純利益 | △500億円 | 10,000百万円 | △530億円 |
修正の理由として、通期での減価償却費が従来比で165億円減少することや、第4四半期の為替前提を1ドル=153円と円安方向に設定したことが挙げられます。構造改革の進展により、損益分岐点が着実に低下していることが鮮明になっています。
リスクと課題
急回復を見せる一方で、依然としていくつかの懸念材料が残っています。第一に、米国の通称政策をはじめとする地政学的リスクによる不透明感です。また、自動車市場では中国資本の半導体メーカーとの競争環境が激化しており、価格転嫁の交渉力が試される場面が増えています。
技術面では、成長の柱であるSiCパワーデバイスにおける品質保証関連費用の抑制が焦点となります。今回は一時的な要因として処理されていますが、量産フェーズでのコスト管理能力が今後の利益率改善の鍵を握ります。また、産業機器市場の回復が当初の想定より遅れている点も、リスク要因として注視する必要があります。
ロームの今回の決算は、実質的な事業回復と会計上の処理が組み合わさった「V字回復」の様相を呈しています。
注目すべきは、減価償却方法を定率法から定額法に変更した点です。これは、同社が推進する「車載シフト」により、設備投資が長期にわたって稼働する性質に変わったことを反映した戦略的な変更です。これにより利益が出やすい体質になったことは事実ですが、投資家は会計変更による底上げを除いた実力値(オーガニックな成長)を精査する必要があります。
一方で、赤字が続く半導体素子セグメントはSiCパワーデバイスの量産化に伴う「産みの苦しみ」の中にあります。競合他社もSiCへの投資を加速させる中、品質問題に早期の目処をつけ、高い市場シェアを収益に結びつけられるかが、次の成長フェーズへの分岐点となるでしょう。
