積水化学工業・2026年3月期通期、売上高は過去最高の1兆3,092億円——住宅の採算改善が寄与、次期は全セグメントで増収増益へ
売上高
1.3兆円
+0.9%
通期予想
1.4兆円
営業利益
1,065億円
-1.4%
通期予想
1,150億円
純利益
752億円
-8.2%
通期予想
760億円
営業利益率
8.1%
積水化学工業が発表した2026年3月期の連結決算は、売上高が前期比 0.9%増 の 1兆3,092億円 となり、過去最高を更新しました。国内の住宅市況が低迷する中でも、高付加価値住宅へのシフトやリフォーム事業の伸長が業績を支え、経常利益も過去最高を記録しています。一方で、純利益はエタノール事業関連の 減損損失計上 などにより前期比 8.2%減 となりましたが、次期は全セグメントでの増収増益と過去最高業績の更新を見込んでいます。
積水化学工業 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
2026年3月期の連結業績は、売上高が 1兆3,092億円 (前期比 +0.9% )、経常利益が 1,172億円 (同 +5.6% )と、いずれも過去最高を更新しました。国内の新築住宅需要の減退やEV市場の伸び悩みといった逆風はあったものの、半導体や航空機関連の需要を取り込んだほか、為替差益が利益を押し上げました。
営業利益は 1,064億円 (前期比 1.4%減 )と微減にとどまりました。これはメディカル事業における米国での検査キット需要一巡や、将来の成長に向けた研究開発費の投入、さらに一部事業での一時的な費用発生が影響したものです。営業利益率は 8.1% と、依然として高い水準を維持しています。
当期純利益は 751億円 (前期比 8.2%減 )となりました。主な要因は、岩手県久慈市で進めていた「ごみエタノール」技術の商用化見送りに伴う建設仮勘定の減損など、合計 233億円 の 減損損失 を特別損失として計上したことです。負の遺産を整理し、次期以降の成長に向けた財務体質の健全化を図った形です。
| 項目 | 2025年3月期実績 | 2026年3月期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆2,977億円 | 1兆3,092億円 | +0.9% |
| 営業利益 | 1,079億円 | 1,064億円 | △1.4% |
| 経常利益 | 1,109億円 | 1,172億円 | +5.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 819億円 | 751億円 | △8.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の 住宅カンパニー は、売上高 5,362億円 (前期比 +2.3% )、営業利益 371億円 (同 +17.9% )と、大幅な増益を達成しました。新築戸建の受注棟数は減少したものの、都市部を中心とした集合住宅の拡大や高価格帯へのシフトにより、1棟あたりの単価が上昇。加えて、定期診断を起点としたリフォーム事業の受注拡大が利益率の改善に大きく貢献しました。
環境・ライフラインカンパニー は、売上高が 2,404億円 (前期比並み)ながら、営業利益は 232億円 (同 +1.3% )を確保し、4期連続で過去最高益を更新しました。国内の建築需要低迷を受けパイプの販売数量は減少しましたが、原材料価格の変動に応じた販売価格の適正化(スプレッドの維持)を徹底したことが奏功しています。また、欧州での合成木材(FFU)まくらぎの採用拡大など海外展開も進展しました。
高機能プラスチックスカンパニー は、売上高 4,565億円 (前期比 +2.1% )、営業利益 593億円 (同 3.1%減 )となりました。スマートフォンや半導体向けの電子材料、航空機向けの中間膜などは堅調でしたが、欧州の建築向け部材の低迷や一時費用の発生が利益を押し下げました。しかし、次期に向けては車載HUD用中間膜などの高付加価値品の拡大を見込んでいます。
メディカル事業 は、売上高 937億円 (前期比 5.5%減 )、営業利益 111億円 (同 13.0%減 )と苦戦しました。米国での新型コロナ関連検査キットの需要が急減したことや、中国市場の停滞が響きました。今後は新規案件の獲得と収益性改善を急ぎ、再び成長軌道への回帰を目指します。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅 | 5,362億円 | +2.3% | 371億円 | +17.9% |
| 環境・ライフライン | 2,404億円 | △0.0% | 232億円 | +1.3% |
| 高機能プラスチックス | 4,565億円 | +2.1% | 593億円 | △3.1% |
| メディカル | 937億円 | △5.5% | 111億円 | △13.0% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅カンパニー | 5,362億円 | 41% | 372億円 | 6.9% |
| 環境・ライフラインカンパニー | 2,404億円 | 18% | 232億円 | 9.7% |
| 高機能プラスチックスカンパニー | 4,566億円 | 35% | 593億円 | 13.0% |
| メディカル事業 | 937億円 | 7% | 111億円 | 11.9% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比で 971億円 増加し、 1兆4,279億円 となりました。将来の需要増に備えた棚卸資産の積み増しや、設備投資による有形固定資産の増加が主な要因です。自己資本比率は 59.6% (前期末は60.7%)と、依然として強固な財務基盤を維持しており、積極的な成長投資と株主還元の両立が可能な水準にあります。
キャッシュフロー面では、営業活動により 783億円 のキャッシュを創出しました。投資活動には 691億円 を投じ、主に成長分野の設備取得や研究開発に充てています。財務活動では、配当金の支払いや自己株式の取得により 465億円 を支出しました。
株主還元については、 「16期連続の増配」 を決定しました。2026年3月期の年間配当は前期から1円増の 80円 とし、次期(2027年3月期)もさらに1円増配の 81円 を予定しています。また、発行済株式総数の約1%に相当する 120億円 を上限とした 自社株買い の実施も公表しており、資本効率の向上と株主への利益還元を重視する経営姿勢を鮮明にしています。
通期見通し
2027年3月期の通期予想については、売上高 1兆4,084億円 (前期比 +7.6% )、営業利益 1,150億円 (同 +8.0% )と、全セグメントでの増収増益による過去最高業績の更新を計画しています。住宅事業での新商品投入やリフォーム事業の強化、高機能プラスチックスでの半導体・モビリティ向け需要の確実な取り込みを掲げています。
また、次世代太陽電池として注目される フィルム型ペロブスカイト太陽電池 について、2026年3月から製品提供を開始したことを明らかにしました。2027年度には100MW規模の生産ラインの立ち上げを予定しており、環境貢献と収益成長を両立する新たな柱として育成する方針です。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆3,092億円 | 1兆4,084億円 | +7.6% |
| 営業利益 | 1,064億円 | 1,150億円 | +8.0% |
| 経常利益 | 1,172億円 | 1,140億円 | △2.7% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 751億円 | 760億円 | +1.1% |
リスクと課題
同社が直視すべき主なリスクは以下の通りです。
- 外部環境の不透明感: 中東情勢の悪化に伴う原材料調達コストの上昇や、サプライチェーンの分断リスクを注視しています。
- 金利・物価動向: 日本国内における住宅ローン金利の上昇や、物価高騰が住宅検討者のマインドに与える影響が懸念されます。
- 新事業の立ち上げ: ペロブスカイト太陽電池などの成長投資が、計画通りの供給体制構築と収益化に結びつくかが焦点となります。
- 海外市場の変動: 米国や中国における検査・医療市場の回復遅れが、メディカル事業の重荷となるリスクがあります。
今回の決算で最も注目すべきは、国内の厳しい住宅市況を「高付加価値化(ZEHや高断熱など)」と「リフォーム」で完全にかわし、過去最高売上を達成した経営の底堅さです。特に住宅セグメントの営業利益率改善は目覚ましく、単なる「箱売り」から「ライフサイクルサポート」への転換が成功している証左と言えます。
一方で、エタノール事業の商用化見送りによる減損は、意欲的なR&D投資に潜むリスクを浮き彫りにしました。しかし、これを当期のうちに処理しきったことで、次期予想を「全セグメント増収増益」という強気な姿勢で出せたことは、投資家にとってポジティブなメッセージとなります。
今後の焦点は、次世代太陽電池の本命とされる「ペロブスカイト太陽電池」の事業化スピードです。他社に先んじて製品提供を開始したアドバンテージを、早期に収益貢献へ結びつけられるかが、中長期的な株価評価の分水嶺になるでしょう。
