株式会社島津製作所 の会社詳細
株式会社島津製作所
島津製作所
2026年3月期 第3四半期

島津製作所・2026年3月期Q3、純利益8.1%増の390億円——欧米での計測機器好調、通期売上予想を上方修正

島津製作所
増収増益
質量分析システム
リカーリング
上方修正
防衛関連
半導体製造装置
質量分析計
就活
投資判断
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

3,987億円

+3.8%

通期予想

5,550億円

進捗率72%

営業利益

502億円

+6.8%

通期予想

720億円

進捗率70%

純利益

391億円

+8.1%

通期予想

540億円

進捗率72%

営業利益率

12.6%

島津製作所が5日に発表した2026年3月期第3四半期累計(4-12月)決算は、売上高・各利益項目ともに前年同期を上回り、着実な成長を維持した。欧米の製薬・臨床検査市場における主力の計測機器の伸長に加え、防衛需要を捉えた航空機器が業績を牽引している。円高進行による収益押し下げ要因はあったものの、増収効果や高付加価値製品の投入により、四半期純利益は 390億8,700万円(前年同期比 8.1%増)を記録した。同社は想定為替レートの見直しに伴い、通期の売上高予想を上方修正している。

業績のポイント

当第3四半期累計期間の業績は、売上高が前年同期比 3.8%増3,987億2,200万円、営業利益が同 6.8%増502億3,600万円 と増収増益を達成した。世界経済は米国の関税政策や中国の民需停滞など不透明感が漂うものの、同社の主力製品である質量分析システムや液体クロマトグラフは、北米や欧州の成長分野で底堅い需要を維持した。

利益面では、売上高の増加に加えて、利益率の高いアフターサービスなどのリカーリング事業の拡大が寄与した。経常利益は 529億8,300万円(前年同期比 7.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は 390億8,700万円(同 8.1%増)となった。前年同期が減益(純利益7.5%減)であったことから、今期はV字回復を果たした形だ。創業150周年という節目の年に、高度な分析技術を武器としたグローバル展開が功を奏している。

指標2025年3月期 Q32026年3月期 Q3前年同期比
売上高384,296398,722+3.8%
営業利益47,04550,236+6.8%
経常利益49,15852,983+7.8%
四半期純利益36,14339,087+8.1%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

屋台骨である計測機器事業は、売上高 2,599億2,200万円(前年同期比 4.8%増)、営業利益 355億7,000万円(同 5.2%増)と堅調に推移した。北米ではR&Dセンターを通じた顧客共同開発が奏功し、臨床検査市場で質量分析システムが増加した。欧州でも官公庁や大学向けの水質検査用途が伸びている。懸念される中国市場では、民間投資の冷え込みにより苦戦を強いられたものの、政府の経済対策を背景とした公共セクター向け需要を積極的に捕捉し、減収幅を最小限に留めた。

医用機器事業は、利益率の大幅な改善が際立った。売上高は 520億5,400万円(前年同期比 3.6%増)ながら、営業利益は 24億5,700万円(同 49.2%増)と急伸した。AI・IoT技術を融合し、医療従事者の業務効率化を実現した新製品が国内外で高く評価されている。特に日本市場では、自動化による操作性向上を実現した一般撮影システムやX線TVシステムの更新需要を捉えた。

産業機器事業は、売上高 517億9,800万円(前年同期比 3.1%減)と微減したものの、営業利益は 81億2,100万円(同 3.0%増)と増益を確保した。生成AI分野などの先端半導体製造装置向けに、キーコンポーネントであるターボ分子ポンプの販売を強化したことが奏功した。一方で、電気自動車(EV)向け需要の調整により、車載用セラミックス製造用の工業炉などは減少した。航空機器事業は、政府の防衛力強化方針に伴う搭載品の需要拡大により、売上高 302億2,900万円(同 8.0%増)、営業利益 59億6,800万円(同 46.7%増)と極めて高い伸びを見せている。

セグメント売上高 (百万円)前年同期比営業利益 (百万円)前年同期比
計測機器259,922+4.8%35,570+5.2%
医用機器52,054+3.6%2,457+49.2%
産業機器51,798△3.1%8,121+3.0%
航空機器30,229+8.0%5,968+46.7%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
計測機器2,599億円65%356億円13.7%
医用機器521億円13%25億円4.7%
産業機器518億円13%81億円15.7%
航空機器302億円8%60億円19.7%

財務状況と資本政策

財務体質は極めて強固な状態を維持している。2025年12月末時点の総資産は 6,905億7,800万円 と、前期末から 184億100万円 増加した。新製品投入や需要増に備えた棚卸資産の積み増し(155億円増)があったものの、現金及び預金も 1456億8,400万円 と潤沢な水準にある。自己資本比率は 77.0% に達し、前期末の 74.1% からさらに向上しており、将来の成長投資に向けた余力は大きい。

株主還元については、安定的な増配方針を堅持している。当期の年間配当金は、前期実績の66円(創業150周年記念配当4円含む)に対し、1円増配の 67円(中間27円・期末予想40円)を予定している。記念配当を除いた普通配当ベースでは、実質的な増配を継続する形だ。稼いだ利益を成長投資と株主還元の両面にバランスよく配分する「株主資本主義」と「成長投資」の並立を目指す経営判断が示されている。

通期見通し

2026年3月期の通期連結業績予想について、同社は売上高を従来予想から 100億円 上方修正し、5,550億円(前期比 3.0%増)とした。これは想定為替レートを実勢に近い水準へ見直したことによる。一方で、営業利益以下の各利益項目については前回予想を据え置いた。これは、中長期的な競争力強化に向けたM&A関連費用の発生や、AI・ロボティクス分野を中心とした研究開発投資の加速を見込んでいるためだ。

項目前回予想(A)今回修正(B)増減(B-A)前期実績
売上高545,000555,000+10,000539,047
営業利益72,00072,000-71,720
経常利益72,00072,000-72,018
当期純利益54,00054,000-53,776

リスクと課題

同社が注視する主なリスクは以下の通りである。第一に、中国市場の回復遅れだ。政府の経済対策による官公庁需要の活性化は見られるものの、民間の設備投資意欲は依然として低く、地域別の収益バランスに偏りが生じる懸念がある。第二に、地政学リスクと貿易政策である。米国の関税政策の動向は、グローバルなサプライチェーンや主要顧客である製薬・半導体メーカーの投資判断に影響を及ぼす可能性がある。

また、産業機器分野では電気自動車(EV)関連の需要減少といった市場構造の変化にも対応する必要がある。これに対し、同社は特定の市場に依存しないよう、航空機器や医用機器といった多角的な事業ポートフォリオの強化を急いでいる。為替耐性を高めるための海外生産比率の向上や、付加価値の高いソフトウェア・サービスの拡充も引き続き重要な経営課題となる。

AIアナリストの視点

島津製作所の決算は、円高や中国経済の停滞といった外部逆風を、欧米市場の深耕と製品ポートフォリオの多角化で跳ね返した「守りながら攻める」内容と言えます。

特筆すべきは、単なる機器販売からリカーリング(保守・サービス)へのシフトが着実に利益率を下支えしている点です。米国のZef Scientific社の買収効果など、M&Aを通じたサービス網の拡充が実を結んでいます。

就活生や投資家にとっての注目点は、同社が「分析の島津」という伝統的なイメージを超え、AI融合型の医療機器や防衛・航空機搭載品といった成長性の高い隣接分野で高い利益成長を実現している点でしょう。自己資本比率77%という極めて健全な財務基盤は、不透明な世界情勢下での大きな安心材料であり、攻めの投資(M&AやR&D)を継続できる原動力となっています。