株式会社ニコン の会社詳細
株式会社ニコン
ニコン
2026年3月期 第3四半期

ニコン・2026年3月期Q3、営業損益1,036億円の赤字に転落——金属3Dプリンター事業で巨額減損、通期予想も大幅下方修正

赤字転落
減損損失
下方修正
減配
3Dプリンター
構造改革
関税影響
のれん減損
映像事業
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

4,839億円

-5.6%

通期予想

6,750億円

進捗率72%

営業利益

-103,632百万円

通期予想

-100,000百万円

純利益

-87,216百万円

通期予想

-85,000百万円

営業利益率

-21.4%

ニコンが発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上収益が前年同期比 5.6%減4,839億円 となり、営業損益は 1,036億円の赤字 (前年同期は81億円の黒字)に転落しました。主因は、成長分野として期待されていた デジタルマニュファクチャリング事業における906億円の減損損失 計上です。これに伴い、通期の業績予想も従来の黒字予想から一転、 1,000億円の営業赤字 へと大幅な下方修正を余儀なくされました。

業績のポイント

当第3四半期累計期間の連結業績は、売上収益が 4,839億800万円 (前年同期比 5.6%減 )、営業損益は 1,036億3,200万円の赤字 (前年同期は81億1,000万円の黒字)となりました。親会社の所有者に帰属する四半期利益も 872億1,600万円の赤字 (前年同期は62億6,200万円の黒字)と、非常に厳しい結果となっています。

赤字転落の最大の要因は、金属3Dプリンター市場の成長鈍化を受けた 非金融資産の減損損失計上 です。ドイツのSLM社買収を通じて強化してきたデジタルマニュファクチャリング事業において、当初想定していた収益が見込めなくなったことから、のれんや無形資産の価値を大幅に減額しました。映像事業や精機事業といった既存の柱が市場環境の変化に直面する中、新規事業による成長シナリオが 大きな修正 を迫られている格好です。

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主力事業である映像事業は、売上収益 2,301億円 (前年同期比 2.3%減 )、営業利益 209億円 (同 52.2%減 )となりました。デジタルシネマカメラ「ZR」などの新製品が販売を牽引したものの、市場での競争激化に伴う販促費の増加や、 米国による関税影響 が収益を圧迫しました。平均販売単価の下落も利益を押し下げる要因となっています。

精機事業は、売上収益 1,047億円 (前年同期比 16.3%減 )、営業利益 6億円 (前年同期は6億円の赤字)と、減収ながら黒字を確保しました。露光装置の販売台数は減少しましたが、製品ミックスの改善に加え、半導体ウェハ接合技術に関する 研究開発事業の譲渡益(約29億円) を計上したことが利益を下支えしました。一方、ヘルスケア事業は米州でのアカデミア向け販売停滞や関税の影響により、 6億円の営業赤字 に転じています。

セグメント名売上収益営業利益前年同期比(売上)
映像事業2,301億円209億円△2.3%
精機事業1,047億円6億円△16.3%
ヘルスケア事業791億円▲6億円△3.0%
コンポーネント事業583億円66億円+4.8%
デジタルマニュファクチャリング167億円▲1,034億円△8.4%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
映像事業2,301億円48%209億円9.1%
精機事業1,048億円22%6億円0.6%
ヘルスケア事業792億円16%-687百万円-0.9%
コンポーネント事業583億円12%66億円11.4%
デジタルマニュファクチャリング事業167億円4%-103,415百万円-618.3%

財務状況と資本政策

資産合計は前連結会計年度末比106億円減の 1兆998億円 となりました。減損損失の計上により、のれん及び無形資産が 712億円減少 したことが大きく響いています。手元資金を示す現金及び現金同等物は、社債の償還や設備投資の支出がありながらも、短期借入金による資金調達を実施したことで 1,579億円 (前年度末比56億円減)を維持しています。

株主還元については、業績の大幅な悪化を受けて 配当予想の下方修正 を発表しました。期末配当を前回予想の25円から 10円減配となる15円 に修正し、年間配当は前期の50円から10円減の 40円 となる見通しです。自己資本比率は前年度末の57.4%から 52.4% へと低下しており、財務の健全性維持と成長投資のバランスがよりシビアに問われる局面に入っています。

通期見通しの修正

ニコンは本日、2026年3月期の通期業績予想を下方修正しました。売上収益は前回予想から50億円減の 6,750億円 、営業損益は前回予想の140億円の黒字から一転して 1,000億円の赤字 となる見込みです。これは第3四半期までに計上した減損損失に加え、精機事業における棚卸資産の評価損なども織り込んだ結果です。

項目前回予想(A)今回修正(B)前期実績(25/3期)
売上収益6,800億円6,750億円7,152億円
営業利益140億円▲1,000億円24億円
純利益200億円▲850億円61億円
1株当たり利益60.78円▲258.29円17.86円

修正の背景には、金属3Dプリンター事業の立ち遅れだけでなく、映像事業における 関税コストの増大 や製品ミックスの悪化も含まれています。今後は抜本的な 構造改革の断行 が、信頼回復に向けた急務となります。

リスクと課題

同社が直面する最大のリスクは、 新規事業の収益化の不透明感 です。今回巨額減損を計上した金属3Dプリンター分野は、防衛や宇宙領域での需要は堅調なものの、民間産業向けの普及が想定を下回っています。また、地政学リスクに伴う 関税負担の増加 は、利益率の高い映像事業にとって深刻な逆風となっています。

  • 新事業リスク: デジタルマニュファクチャリング事業の早期黒字化と、投資回収シナリオの再構築。
  • 外部環境リスク: 米州を中心とした関税導入や規制強化によるコスト増大、および為替の変動。
  • 競争環境: ミラーレスカメラ市場でのシェア争い激化に伴う販促費の高止まり。
AIアナリストの視点

今回の決算は、ニコンが進めてきた「脱・カメラ依存」の成長戦略が大きな壁にぶつかったことを象徴しています。特に、2023年に約900億円を投じて買収を完了したドイツのSLM Solutions(現Nikon SLM Solutions)関連で、買収額に匹敵する規模の減損を出したことは、M&A戦略の精度という観点で投資家から厳しい視線が注がれるでしょう。

一方で、映像事業は売上高こそ微減ですが、依然として同社のキャッシュカウであり続けています。精機事業でも事業譲渡益を出すなど、なりふり構わぬ利益確保の姿勢は見えますが、それら「既存事業の絞り出し」を新規事業の損失が全て飲み込んでしまった形です。

就活生の視点では、現在のニコンは「大きな変革期」というより「経営の立て直し局面」にあると捉えるべきです。今後発表されるであろう中期経営計画の修正内容や、不振事業の切り離しを含むさらなる構造改革の有無が、同社の再浮上の鍵を握るでしょう。