ソフトバンク・2026年3月期Q3、純利益11.2%増の4,855億円——全セグメント増収、PayPay急成長で通期最高益を上方修正
売上高
5.2兆円
+8.0%
通期予想
7.0兆円
営業利益
8,841億円
+7.6%
通期予想
1.0兆円
純利益
4,855億円
+11.2%
通期予想
5,430億円
営業利益率
17.0%
ソフトバンクが発表した2026年3月期第3四半期(2025年4〜12月)の連結決算は、売上高が前年同期比 8.0%増 の 5兆1,954億円 となり、全てのセグメントで増収を達成した過去最高業績となりました。主力の通信事業が回復基調にあることに加え、PayPayを中心とする金融事業の利益が倍増し、好調な進捗を受けて通期の純利益予想を5,430億円へ上方修正しています。同社が進める「Beyond Carrier」戦略が奏功し、通信キャリアの枠を超えた総合デジタルプラットフォームとしての成長が鮮明になっています。
業績のポイント
2026年3月期第3四半期の業績は、売上高が 5兆1,954億円 (前年同期比 +8.0% )、営業利益が 8,841億円 (同 +7.6% )と、増収増益を記録しました。親会社の所有者に帰属する四半期純利益は 4,855億円 (同 +11.2% )となり、同期間としての過去最高益を更新しています。この成長を牽引したのは、通信料値下げの影響から脱したコンシューマ事業の回復と、損益分岐点を超えて利益成長フェーズに入ったファイナンス事業の躍進です。
経営陣は、ICT関連商材の需要拡大や金融事業の想定以上の伸びを背景に、通期業績予想の上方修正を決定しました。特に純利益は、期初予想の5,350億円から 5,430億円 へと引き上げられており、中期経営計画の最終年度として最高益更新に向けた自信をのぞかせています。生成AIの普及に伴うデータセンター需要や、法人向けDX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションの積み上げが、中長期的な収益基盤をより強固なものにしています。
| 指標 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4兆8,115億円 | 5兆1,954億円 | +8.0% |
| 営業利益 | 8,219億円 | 8,841億円 | +7.6% |
| 四半期純利益 | 4,366億円 | 4,855億円 | +11.2% |
| 調整後EBITDA | 1兆3,718億円 | 1兆4,239億円 | +3.8% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力であるコンシューマ事業は、売上高が 2兆2,532億円 (前年同期比 +3.3% )、セグメント利益が 4,683億円 (同 +6.3% )と堅調でした。「ワイモバイル」ブランドを中心としたスマートフォン契約数の順調な伸びに加え、通信料の平均単価(ARPU)が安定化したことが収益増に寄与しています。電力サービス「でんき」の売上は市場価格の変動により減少したものの、仕入原価の低下により利益面ではプラスの影響となりました。
エンタープライズ事業は、売上高 7,332億円 (前年同期比 +8.8% )と成長を加速させています。企業のデジタル化需要を的確に捉え、クラウドやセキュリティなどのソリューション売上高が13.1%増と大幅に伸長しました。モバイル契約数も法人向けに拡大しており、ストック型ビジネスの積み上げが利益率の向上(セグメント利益同 +12.6% )に直結しています。
注目すべきはファイナンス事業で、売上高が 2,954億円 (前年同期比 +23.9% )、セグメント利益が 660億円 (同 +102.8% )と爆発的な成長を遂げました。PayPayおよびPayPayカードの決済取扱高が増加し、ポイント還元費用を上回る収益を稼ぎ出す構造が定着しています。2025年4月にPayPay銀行を子会社化した影響もあり、金融プラットフォームとしての存在感が急速に高まっています。
| セグメント | 売上高 (Q3累計) | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| コンシューマ | 22,532億円 | +3.3% | 4,683億円 | +6.3% |
| エンタープライズ | 7,332億円 | +8.8% | 1,581億円 | +12.6% |
| ディストリビューション | 7,736億円 | +25.6% | 308億円 | +29.2% |
| メディア・EC | 12,261億円 | +0.8% | 2,063億円 | △2.5% |
| ファイナンス | 2,954億円 | +23.9% | 660億円 | +102.8% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| コンシューマ | 2.3兆円 | 43% | 4,683億円 | 20.8% |
| エンタープライズ | 7,332億円 | 14% | 1,581億円 | 21.6% |
| ディストリビューション | 7,736億円 | 15% | 308億円 | 4.0% |
| メディア・EC | 1.2兆円 | 24% | 2,063億円 | 16.8% |
| ファイナンス | 2,954億円 | 6% | 660億円 | 22.3% |
通期見通しの修正
ソフトバンクは、第3四半期までの好調な業績を受け、通期の連結業績予想を上方修正しました。法人向けICT関連商材の販売が想定を上回ったことや、金融事業における収益性の改善が主な要因です。特に営業利益は、期初に掲げた1兆円の大台をさらに上回る 1兆200億円 を見込んでおり、日本企業でも有数の利益創出能力を証明する形となります。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 | 修正の背景 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6兆7,000億円 | 6兆9,500億円 | 6兆0,840億円 | 法人・ディストリビューションの好調 |
| 営業利益 | 1兆0,000億円 | 1兆0,200億円 | 8,761億円 | 効率化とソリューション需要の拡大 |
| 親会社所有者利益 | 5,400億円 | 5,430億円 | 5,314億円 | 金融事業の利益成長、税効果の改善 |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は 18兆2,437億円 となり、前期末比で 2兆1,415億円 増加しました。これはLINE Bank Taiwanの連結子会社化やPayPay銀行における預金・貸付金の増加など、銀行事業の拡大が主な要因です。自己資本比率は15.7%と低下していますが、これは預金負債の増加という金融業特有の資産構成変化によるものであり、健全性は維持されています。
株主還元については、2024年10月に実施した1対10の株式分割後も積極的な姿勢を継続しています。年間配当予想は1株当たり 8.60円 (分割前換算で86円)を据え置いており、高い配当利回りを背景に個人投資家への訴求力を維持しています。また、社債型種類株式の発行など、資本効率を意識した多様な資金調達手段を組み合わせており、成長投資と株主還元の両立を図る経営判断が示されています。
リスクと課題
会社側は今後のリスク要因として、以下の項目を挙げています。地の文での解説に加え、特にAI・デジタル領域での競争環境に注視が必要です。
- 金利上昇リスク: 長期有利子負債の約9割を固定金利で調達しており直近の影響は限定的ですが、今後の借換コスト上昇が懸念されます。
- 競争環境の変化: 通信事業における価格競争の再燃や、楽天モバイル等の他社動向による顧客流出リスクが常に存在します。
- セキュリティ・システムリスク: LINEヤフー等での情報漏洩事案や、アスクルで発生したようなシステム障害がブランド価値や業績に与える影響は無視できません。
- AI投資の不確実性: 大規模なAIインフラ投資(GPUやデータセンター)を進めていますが、期待通りの収益化につながるかどうかが将来の焦点となります。
今回の決算で最も注目すべきは、ソフトバンクが「通信会社」から「データ・金融プラットフォーム」への脱皮をほぼ完了させた点にあります。
特にファイナンス事業の営業利益が前年比2倍以上の 660億円 に達したことは、PayPayが単なる決済手段を超えて、同社の強力な利益柱へと成長したことを証明しています。メディア・EC事業(LINEヤフー)がシステム障害の影響などで伸び悩む中、この金融の伸びがグループ全体の成長を支える格好となりました。
就活生や投資家にとっての注目点は、同社が掲げる「AIデータセンター」への巨額投資です。OracleやOpenAIとの提携を通じ、国内最大級のAI計算基盤を構築しようとする姿勢は、従来の通信キャリアの枠を超えた「社会インフラ企業」への進化を物語っています。一方で、銀行事業の連結化に伴い総資産が膨張しており、今後は金融事業特有のリスク管理能力がより厳しく問われるステージに入ったと言えるでしょう。
