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ソフトバンクグループ株式会社 の会社詳細
ソフトバンクグループ株式会社
ソフトバンクグループ
2026年3月期 通期

ソフトバンクグループ・2026年3月期FY、純利益5兆円で過去最高水準——OpenAI評価益が寄与、AIインフラ企業へ進化

ソフトバンクグループ
OpenAI
Arm
過去最高益
孫正義
AIインフラ
ビジョン・ファンド
PayPay上場
投資戦略
株式分割
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

7.8兆円

+7.7%

営業利益

6.1兆円

+259.9%

純利益

5.0兆円

+333.7%

営業利益率

78.7%

ソフトバンクグループ(SBG)が13日に発表した2026年3月期の連結決算(IFRS)は、親会社の所有者に帰属する純利益が前期比 333.7%増5兆22億円 と、過去最高水準の大幅増益となった。対話型AI「ChatGPT」を展開する米オープンAIの資本再編に伴い、保有株の公正価値が劇的に上昇したことが主因だ。孫正義会長兼社長は「情報の進化」から「AIによる超知能の実現」へと経営の舵を切り、AIインフラへの巨額投資を継続する姿勢 を鮮明にしている。

業績のポイント

2026年3月期の連結売上高は、前期比 7.7%増7兆7,986億円 と堅調に推移した。特筆すべきは利益面で、税引前利益は前期比 259.9%増6兆1,349億円 に達した(前年同期は1兆7,047億円)。この驚異的な増益の背景には、投資損益が 7兆2,864億円 (前期比+96.9%)と爆発的に拡大したことがある。

利益の柱となったのは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)事業だ。特にSVF2において、米オープンAIの公正価値が上昇したことで 6兆4,655億円 もの投資利益を計上した(前期は△5,616億円)。一方で、保有していたNVIDIA株式を全売却し 3,391億円 の利益を確定させるなど、次世代AIへのポートフォリオ組み替え が着実に進んでいる。

指標2025年3月期2026年3月期前年同期比
売上高7兆2,437億円7兆7,986億円+7.7%
税引前利益1兆7,047億円6兆1,349億円+259.9%
親会社株主帰属純利益1兆1,533億円5兆227億円+333.7%
1株当たり当期利益195.20円873.51円

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

今期より、半導体設計のArmや新たに買収したAmpereなどを統合した「AIコンピューティング事業」を新設した。各セグメントの動きは以下の通りだ。

SVF事業 は、セグメント利益 6兆4,446億円 (前期は1,150億円の損失)と最大の稼ぎ頭へ返り咲いた。オープンAIへの投資利益が大きく寄与したほか、SVF2が累計損益でプラスに転換したことは大きな節目だ。既存の投資先の売却と、有望なAIベンチャーへの追加投資が活発化している。

ソフトバンク事業 は、売上高が前期比 7.6%増7兆408億円 、セグメント利益が 6.5%増9,650億円 と安定した成長を見せた。スマートフォン契約数の増加や、子会社PayPayの好調な決済取扱高が収益を支えている。さらに、法人向けクラウドサービスやAIソリューションが順調に拡大し、グループ全体のキャッシュフロー創出源として機能している。

AIコンピューティング事業 は、セグメント損益が 1,372億円の損失 となった。これは将来の成長に向けた先行投資が嵩んだためだ。Armによる次世代CPUの開発費や、米アンペア(Ampere)社の買収に伴う費用が計上されているが、孫氏はこれを「超知能への必要不可欠なインフラ投資」と位置づけている。

セグメント売上高セグメント利益概況
持株会社投資△4,720億円NVIDIA売却益の一方、Tモバイル株の下落が響く
SVF事業6兆4,446億円オープンAIの評価益により大幅黒字化
ソフトバンク7兆408億円9,650億円モバイル・PayPayともに堅調
AIコンピューティング6,403億円△1,372億円Arm・Ampereの研究開発費が先行
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
ソフトバンク事業7.0兆円90%9,650億円13.7%
AIコンピューティング事業6,403億円8%-137,266百万円

財務状況と資本政策

総資産は前期末比 15.7兆円増60兆7,495億円 と過去最大規模に膨らんだ。投資資産の価値上昇に加え、積極的な資金調達を行ったことが要因だ。有利子負債も増加しているが、オープンAIへの投資やAmpere買収を目的としたブリッジローンなど、戦略的な負債活用 を進めている。

株主還元については、2026年1月に実施した1株から4株への株式分割を考慮し、期末配当は1株当たり 5.50円 とした(分割前換算で年間44円と実質維持)。特筆すべきは自己株買いで、2024年8月に決議した最大5,000億円の枠に基づき、累計 3,303億円 を取得し、2025年10月には同数の消却を完了した。資本効率の向上と株主への利益還元を並行して進める構えだ。

戦略トピック:PayPayのナスダック上場とAI投資の加速

今決算における最注目トピックの一つは、子会社 PayPayの米国ナスダック市場への上場 だ。これにより、グループとしての保有資産価値が一段と明確になった。売却益相当額は損益計算書には計上されないものの、資本剰余金として 1,142億円 が加算され、自己資本の増強に寄与している。

また、オープンAIに対して新たに 300億米ドル(約4.7兆円) の追加投資をコミットした。孫氏は、Armのチップ設計、Ampereのサーバー技術、そしてオープンAIのソフトウェアを組み合わせた「AIバーティカル・インテグレーション(垂直統合)」を目指している。この巨大なエコシステム構築こそが、SBGが掲げる新たな成長戦略の核心である。

リスクと課題

SBGが直面する主なリスクは、投資先の公正価値の変動だ。特にオープンAIのような非上場企業の評価は外部環境の影響を受けやすく、業績が不安定になる可能性がある。また、AI分野での世界的な競争激化や、各国の規制動向も事業リスクとして挙げられる。

  • 評価益への依存: 今回の利益の多くが評価益であり、キャッシュフローを伴わない含み益であること。
  • 金利上昇リスク: 巨額の負債を抱える中、世界的な金利高止まりが財務費用を押し上げる懸念。
  • AI投資の不確実性: AIインフラへの巨額投資が、ArmやAmpereの収益としていつ結実するかという時間軸の課題。
AIアナリストの視点

今回の決算は、まさに「孫正義氏の勝負が形になった」内容と言えます。市場が懸念していたビジョン・ファンドの低迷を、オープンAIという「本命」の一撃で覆しました。特筆すべきは、単なる投資会社から、ArmやAmpereを傘下に置く「AIコンピューティングの事業持ち株会社」へと実態を変化させている点です。

懸念点は、利益の質の大部分が「公正価値の変動(含み益)」に依存していることです。市場が冷え込めば、一転して数兆円規模の赤字に転落するボラティリティは依然として解消されていません。就活生にとっては、従来の「携帯通信会社」としてのソフトバンクではなく、「世界のAIインフラを支配しようとする投資銀行兼テック企業」 という野心的な側面を理解しておく必要があります。

今後の焦点は、オープンAIへの追加投資がどのような事業シナジーを生むのか、そしてArmのロイヤリティ収入がどこまで加速するかに集まるでしょう。孫氏の「超知能」というビジョンが、単なる夢想ではなく経済的な実利として継続できるかが試されています。