ワコール、2027年3月期第1四半期決算、増収も固定資産売却益の反動で営業減益

ワコールの2027年3月期第1四半期決算は、売上収益が前年同期比8.8%増の489億円となった一方、営業利益は同90.8%減の18億円でした。米国での買収や欧州の反動増が売上を押し上げましたが、前年同期に計上した新京都ビルなどの固定資産売却益がなくなり、利益は大きく縮小しました。国内事業の苦戦と海外の伸びの差も、決算分析の注目点です。

決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 489億円 | +8.8% | 1,876億円 | 26% |
| 営業利益 | 18億円 | -90.8% | 15億円 | 121% |
| 純利益 | 16億円 | -88.7% | 18億円 | 86% |
| 営業利益率 | 3.7% | |||
この決算のポイント
- 1親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比88.7%減の15億円
- 2海外事業の売上収益はGlamorise社買収などで前年同期比23.3%増
- 3国内事業は売上収益が2.0%減り、事業利益は赤字に転落
- 4通期売上収益予想は1,876億円で据え置き、年間配当予想も100円を維持
業績のポイント
ワコール(ワコールホールディングス)の第1四半期は、売上収益が前年同期比8.8%増の489億円、営業利益が同90.8%減の18億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同88.7%減の15億円でした。増収の一方で、前年同期の一時的な利益がなくなり、営業利益は大幅に縮小しました。
営業利益の前年同期からの変化を分けると、主な要因は次の通りです。
- 事業利益の減少: 国内販売の低調さに加え、米国でブランド認知向上のための先行投資がありました。前年同期にあった一時的な人件費の戻し入れも反動となりました。
- 固定資産売却益の反動: 前年同期は新京都ビルなどの売却益を計上しており、その一時的な収益がなくなりました。
増収でも営業利益は大幅減となりましたが、利益減の大部分は前年の固定資産売却益の反動によるものです。一方、日常の事業活動による利益を示す事業利益も前年同期比34.3%減で、販促投資や国内販売の弱さが収益面の課題として残りました。
- 前年同期198億円
- 事業利益-8.2億円
- その他収益-172億円
- その他費用-0.1億円
- 当期18.1億円
セグメント別動向
海外事業が全体の増収をけん引する一方、国内事業は減収となり、事業利益も赤字でした。セグメント利益は今期から従来の営業利益ではなく事業利益で開示されており、前年同期も新しい区分に組み替えて比較しています。
ワコール事業(国内)は、売上収益が前年同期比2.0%減の218億円でした。ECは伸びたものの、量販店の販促縮小や実店舗での販売不振が響き、事業利益は前年の6億円の黒字から2億円の赤字に転じました。「CW-X」や高価格帯の「Yue」は伸びた一方、「WACOAL」「Wing」などは苦戦しました。
ワコール事業(海外)は、売上収益が同23.3%増の227億円、事業利益が同10.1%増の18億円でした。米国ではGlamorise社の買収とEC販売、欧州では前年の火災影響の反動などが寄与しました。中国は店舗撤退や「618商戦」の苦戦が続き、現地通貨ベースでは低調でした。
ピーチ・ジョン事業は、売上収益が同4.1%増の29億円でした。「ナイスバディブラ」などの販売や広告による新規顧客獲得が伸びを支えましたが、販促費の増加で事業利益は36.4%減の700万円でした。その他事業は売上収益が同0.7%減、事業利益が同55.4%減となりました。海外の伸びが全体を押し上げた一方、国内の販売回復と採算改善が課題です。
- 国内-2.0%
- 海外+23.3%
- ピーチ・ジョン+4.1%
- その他-0.7%
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ワコール事業(国内) | 218億円 | 45% | -275百万円 | -1.3% |
| ワコール事業(海外) | 227億円 | 47% | 18億円 | 7.9% |
| ピーチ・ジョン事業 | 29億円 | 6% | 7百万円 | 0.2% |
| その他 | 15億円 | 3% | 29百万円 | 2.0% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末から小幅に減少した一方、親会社所有者帰属持分比率は上昇しました。現金及び現金同等物は買収などの支出を受けて減少し、営業キャッシュフローも前年同期の収入から支出に転じています。
| 項目 | 2027年3月期1Q末・当期 | 前期末・前年同期 | 増減・状況 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 2,919億円 | 2,923億円 | 前期末比4億円減 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 72.9% | 71.7% | 前期末比1.2ポイント上昇 |
| 現金及び現金同等物 | 317億円 | 442億円 | 前期末比124億円減 |
| 営業キャッシュフロー | 23億円の支出 | 22億円の収入 | 前年同期から悪化 |
| 投資キャッシュフロー | 62億円の支出 | 200億円の収入 | 子会社取得などが影響 |
配当予想は中間50円、期末50円の年間100円で、前期実績と同額です。自己株式の取得は当四半期にほぼありませんでした。現金減少にはGlamorise社取得に伴う支出が含まれますが、営業活動からの資金創出が前年同期より弱まった点は、今後の運転資金や投資余力をみるうえで確認が必要です。自己資本の厚さを保ちながら、買収や成長投資を利益とキャッシュフローにつなげられるかが問われます。
通期見通し
ワコールは2027年3月期の連結業績予想を据え置きました。売上収益は前期比9.4%増を見込む一方、営業利益は同92.5%減、親会社の所有者に帰属する当期利益は同86.3%減の計画です。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,876億円 | 1,876億円 | +9.4% |
| 事業利益 | 5億円 | 5億円 | 会社予想に記載なし |
| 営業利益 | 15億円 | 15億円 | -92.5% |
| 税引前利益 | 26億円 | 26億円 | -86.8% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 18億円 | 18億円 | -86.3% |
第1四半期の営業利益は18億円で、通期予想の15億円をすでに上回っています。ただし前年同期には大きな固定資産売却益があり、今期の通期予想もその反動を織り込んだ水準です。会社は予想を変更しておらず、国内事業の採算改善や、買収した米国事業の成長が計画にどう反映されるかが焦点になります。
戦略トピック
ワコールは2027年3月期を初年度とする中期経営計画2029のもと、既存事業の再構築と新たな価値づくりを進めています。海外ではECや直営店を軸に販売構造を変え、国内ではブランド・チャネル戦略と顧客体験の強化を図ります。
- 米国で買収: 2026年4月、ECを中心に大きなサイズ領域を扱うGlamorise Foundationsを買収しました。米国の売上拡大とD2C基盤の強化を狙います。
- 顧客データ活用: ボディデータを活用する「SCANBE」や「わたしに合うブラ診断」を通じ、商品提案や顧客体験の向上を進めています。
- 新技術の事業化: 2026年5月に研究開発拠点「Melooopラボ」を開設しました。社内外の企業と連携し、アパレル以外に自動車産業資材などへの展開も目指します。
- 資本効率の改善: ROICを軸に事業ポートフォリオを管理し、経営資源の配分を見直す方針です。
買収と新技術を成長の柱に据える一方、米国ではブランド認知向上の先行投資が利益を圧迫しています。売上の拡大だけでなく、買収先の統合や投資回収を通じて利益率を高められるかが重要です。
リスクと課題
地域ごとに消費環境や販売動向が異なり、海外の成長だけでは国内の弱さを補いきれない状況です。会社が示した市場環境や各事業の実績から、次の点が業績の変動要因となります。
- 国内需要と販促環境: インナーウエア需要は個人消費全体に比べ弱く、量販店の販促縮小や気温・天候の影響も販売を押し下げました。国内事業の赤字が続けば、連結利益の回復を妨げます。
- 中国市場の低迷: 不動産市場の停滞や消費の伸び悩みに加え、不採算店舗の撤退やECセールの苦戦が続いています。為替換算による増収だけでは、現地事業の改善を判断できません。
- 海外投資の収益化: 米国での認知向上に向けた投資やGlamorise社の買収後の事業運営が、利益率やキャッシュフローに影響します。投資に見合う販売拡大が実現するかが課題です。
- 為替・地域差: 米国や欧州など地域ごとに景気や消費の動きが異なり、為替換算も売上に影響します。通期計画の達成には、地域別の需要変化に応じた運営が必要です。
足元では海外売上が伸びていますが、国内の採算改善と海外買収後の利益確保が同時に進むかを見極める必要があります。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/4)
4,301円
最新終値(2026/10/23)
3,619円-15.9%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#ワコール#決算#決算分析#四半期決算#業績#海外展開#Glamorise買収#中期経営計画#配当
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コメント
海外の買収効果と欧州の反動増で売上は伸びましたが、利益の落ち込みには一時的な固定資産売却益の剥落が大きく影響しています。そのため、営業利益の前年比だけで今期の稼ぐ力を判断せず、事業利益と国内事業の採算を分けて見る必要があります。
注目したいのは、海外の売上拡大が利益成長につながるかです。米国では買収とブランド投資が進む一方、事業利益率は前年同期の水準を下回っており、成長投資を回収できるかが中期経営計画の実効性を測る材料になります。
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