エレクトロニクス商社5社・2026年3月期比較、加賀が純益急伸も利益の質に差
5社の決算は、生成AIと法人PCの更新需要が追い風となり、4社が増収でした。売上首位はダイワボウHD、成長率首位は加賀電子。一方、東京エレクトロン デバイスは減収減益です。加賀の純利益には買収に伴う一時益も含まれ、増益の中身には濃淡があります。なお、キヤノンMJは2025年12月期で、他社と決算期が異なります。
今期の総括
成長率は加賀、規模と利益はダイワボウ
業界全体の動き
今回の業績を動かしたのは、AI、PC更新、IT投資です。5社の売上高平均は8,215億円、前年比平均は10.9%増でした。
- 生成AI・データセンター需要:マクニカHDはGPUやメモリーの需要を取り込み、売上高が前年比17.4%増。AI向け半導体が商社の成長を押し上げました。
- 法人PCの買い替え:Windows 10のサポート終了を控え、ダイワボウHDは売上高が前年比18.8%増。加賀電子もAIサーバー向けメモリーの販売を伸ばしました。
- ITソリューションの伸長:キヤノンMJは売上高が前年比4.0%増にとどまる一方、営業利益は9.5%増。ハード販売だけに頼らない収益が利益を支えました。
- 半導体需要のばらつき:東京エレクトロン デバイスは顧客の在庫調整が続き、売上高が前年比5.8%減。AI関連の強さが、半導体市場全体に広がったわけではありません。
※キヤノンMJは2025年12月期、他4社は2026年3月期です。平均値や順位は参考比較として見る必要があります。
売上高ランキング
営業利益ランキング
売上高 前年同期比
純利益 前年同期比
勝者と敗者
成長率で目立ったのは加賀電子です。売上高は6,589億円で前年比20.3%増。5社で最も高い伸びでした。純利益も311億円、前年比82.0%増です。
ただし、純利益の伸びには協栄産業の買収に伴う約78億円の負ののれん発生益など、一時的な利益が含まれます。営業利益は278億円、17.9%増で、本業の成長と純利益の急増は分けて見るべきです。
規模と営業利益では、ダイワボウHDが首位でした。売上高は1兆3,509億円、18.8%増、営業利益は442億円、26.6%増です。PC更新需要を取り込み、営業利益の伸びでも加賀電子を上回りました。
最も苦戦したのは東京エレクトロン デバイスです。売上高は2,037億円、5.8%減、営業利益は103億円、17.7%減。5社で唯一の減収減益となりました。在庫調整や産業機器向け販売の低迷が響いています。
成長率は加賀、規模と利益はダイワボウ。一方、東京エレクトロン デバイスは半導体市場の調整が重荷となり、明暗が分かれました。
- 好調
- 加賀電子
- 苦戦
- 東京エレクトロン デバイス

注目の動き・戦略比較
加賀電子は協栄産業を子会社化し、顧客基盤と事業規模を広げました。買収による一時益だけでなく、統合後に販路や調達網をどう生かすかが次の焦点です。独立系ならではの調達力も、AIサーバー向けメモリーの販売を支えました。
マクニカHDは生成AI向け半導体に加え、サイバーセキュリティも伸ばしました。売上高は1兆2,142億円、17.4%増。営業利益は420億円、5.8%増で、売上の伸びほど利益は伸びていません。2027年3月期の会社予想は売上高1兆3,000億円、営業利益520億円です。
ダイワボウHDはPC更新需要を取り込み、売上高と営業利益の両方で5社の首位に立ちました。ただし、2027年3月期予想は売上高1兆1,890億円、営業利益365億円。今期実績と比べ、それぞれ約12%、約17%低い水準です。特需後の反動を見込んだ計画といえます。
東京エレクトロン デバイスは半導体事業の弱さを、コンピューターシステム関連事業が補いました。同事業の利益は全体の約3分の2とされ、収益源の分散が進んでいます。2027年3月期の売上予想は2,250億円ですが、営業利益予想は示されていません。
キヤノンMJはITソリューションが成長をけん引しました。営業利益率は8.6%で5社中トップです。2025年12月期の実績であり、3月期決算の企業とは期間が異なる点に注意が必要です。
営業利益率ランキング
順位変化と構造トレンド
売上高では、ダイワボウHDが1兆3,509億円で首位、マクニカHDが1兆2,142億円で続きました。営業利益ではキヤノンMJが582億円で首位です。ただし、同社は2025年12月期のため、他社との単純比較には注意が要ります。
営業利益率はキヤノンMJが8.6%、東京エレクトロン デバイスが5.0%。5社平均の4.9%を上回りました。売上規模の大きさだけでなく、ITサービスなど付加価値の高い事業を持つかが、利益率の差につながっています。
今期はAI半導体やPC更新が売上を押し上げました。一方で、需要の一巡を見込む会社もあります。商社の競争力は、販売量に加え、サービス収入や調達力をどれだけ育てられるかに移りつつあります。
業界共通のリスク
好調な需要が続くとは限りません。特に、売上規模の拡大が利益に直結するとは限らない点に注意が必要です。
- 特需の反動:ダイワボウHDの2027年3月期予想は、売上高も営業利益も今期実績を下回ります。PC更新が一巡すれば、販売量が落ちる可能性があります。
- 半導体の在庫調整:東京エレクトロン デバイスの減収減益が示すように、顧客の在庫や設備投資の変化は販売に直結します。
- 利益率の低さと価格競争:マクニカHDとダイワボウHDの営業利益率は、それぞれ3.5%、3.3%。5社平均の4.9%を下回り、仕入れ価格や販売条件の変化が利益を左右します。
- AI需要の偏り:AI投資が強くても、恩恵は製品や顧客によって異なります。特定分野への依存が高まれば、需要の変化が業績に響きます。
- 買収・為替・供給網の変化:加賀電子の買収効果の定着や、為替、地政学上の供給制約は、各社の利益や調達に影響し得ます。
就活生・転職希望者へ
同じ専門商社でも、仕事の中身は大きく異なります。半導体の技術提案に関心があるならマクニカHDや東京エレクトロン デバイス、法人PCやIT基盤の販売ならダイワボウHDが候補です。加賀電子では幅広い商材と調達網、キヤノンMJではIT導入や運用支援に関わる機会があります。
今後は、商品を仕入れて売る力に加え、顧客の課題を見つける力が重要です。セキュリティ、クラウド、システム構築など、継続収入につながる分野を持つ企業は、需要の波を和らげやすくなります。企業選びでは売上成長だけでなく、事業構成や利益率、特需後の計画も確かめたいところです。
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