東京精密・2026年3月期Q3、営業利益9.7%増の209億円——生成AI向け需要が牽引、通期予想を上方修正
売上高
1,130億円
+9.5%
通期予想
1,650億円
営業利益
209億円
+9.7%
通期予想
320億円
純利益
141億円
-21.9%
通期予想
215億円
営業利益率
18.5%
半導体製造装置大手の東京精密が発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 9.5%増 の 1,129億7,100万円 、営業利益が同 9.7%増 の 209億3,200万円 と増収増益を記録しました。生成AI市場の急拡大に伴う HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)向け検査装置 の引き合いが極めて強く、業績を大きく押し上げました。これを受け、同社は通期の業績予想を 上方修正 しています。一方、純利益は前期の固定資産売却益の反動や特別損失により減少していますが、本業の収益力は一段と強まっています。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の業績は、世界的な AIインフラ投資の加速 を背景に、主力製品である半導体検査装置の需要が好調に推移しました。売上高は 1,129億7,100万円 (前年同期比 +9.5% )、営業利益は 209億3,200万円 (同 +9.7% )となり、通期計画に対する進捗も極めて順調です。
利益面では、高付加価値な先端パッケージング関連装置の出荷が増加したことが利益率の維持に貢献しました。経常利益は 217億1,700万円 (同 +9.7% )と伸長したものの、親会社株主に帰属する四半期純利益は 141億4,800万円 (同 21.9%減 )となりました。この純利益の減少は、前年同期に計上した多額の 固定資産売却益(約43億円) の剥落に加え、今期に 製品不具合対策費(21億円) を特別損失として計上したことが主な要因であり、事業の成長性そのものを損なうものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,031億円 | 1,129億円 | +9.5% |
| 営業利益 | 190億円 | 209億円 | +9.7% |
| 経常利益 | 197億円 | 217億円 | +9.7% |
| 四半期純利益 | 181億円 | 141億円 | △21.9% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力事業である 半導体製造装置部門 は、生成AIやサーバー向けの需要が強力なエンジンとなりました。受注高は 872億8,900万円 (前年同期比 +7.5% )、売上高は 867億8,600万円 (同 +12.2% )、セグメント利益は 176億7,600万円 (同 +13.4% )と、全社業績を力強く牽引しています。特に HBM(広帯域メモリ)向け検査装置 や、AIチップの高度なパッケージング工程に使用される加工装置の引き合いが底堅く、顧客の要求納期に合わせた出荷が円滑に進みました。
一方、 計測機器部門 は、自動車や航空宇宙分野の下支えにより堅調さを維持しています。売上高は 261億8,500万円 (同 +1.6% )と微増を確保しました。既存設備の更新需要や、ハイブリッド車(HV)生産に関連する追加投資を確実に取り込んだほか、第2四半期に実施した 充放電試験システム事業 の売上計上も寄与しました。ただし、先行投資に伴う費用負担もあり、セグメント利益は 32億5,500万円 (同 6.6%減 )とやや足踏みする結果となりました。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 半導体製造装置 | 867億円 | +12.2% | 176億円 | +13.4% |
| 計測機器 | 261億円 | +1.6% | 32億円 | △6.6% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 半導体製造装置 | 868億円 | 77% | 177億円 | 20.4% |
| 計測機器 | 262億円 | 23% | 33億円 | 12.4% |
通期見通しの修正
直近の受注状況と第4四半期の出荷見通しを精査した結果、同社は通期の連結業績予想を 上方修正 しました。売上高は前回予想から10億円増の 1,650億円 、営業利益は5億円増の 320億円 を見込んでいます。半導体メーカー各社がAI対応のための先端設備投資を継続しており、高精度な検査・加工技術を持つ同社の製品優位性が業績の裏付けとなっています。
| 項目 | 前回発表予想 | 今回修正予想 | 増減率 | 前期実績(参考) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,640億円 | 1,650億円 | +0.6% | 1,505億円 |
| 営業利益 | 315億円 | 320億円 | +1.6% | 297億円 |
| 親会社株主利益 | 205億円 | 21,5億円 | +4.9% | 256億円 |
財務状況と資本政策
財務基盤の健全性は極めて高い水準を維持しています。2025年12月末時点の自己資本比率は 75.3% と、前期末(73.2%)からさらに改善しました。総資産は 2,378億6,600万円 と、売上債権の減少の一方で、今後の出荷に向けた棚卸資産や新工場等の建物・構築物が増加しています。
株主還元については、年間配当予想を据え置き、期末に 111円 (年間合計 222円 )とする方針です。同社は「WIN-WINの仕事を通じて世界No.1の製品を創り出す」という経営理念のもと、成長投資と株主還元のバランスを重視しています。現在は次世代半導体の微細化・積層化に対応するための研究開発投資を優先しつつ、安定的な配当維持を目指しています。
リスクと課題
今後の懸念材料として、以下の要因が挙げられます。
- 中国経済の不透明感: 不動産投資や個人消費の停滞が続いており、現地の需要回復が想定より遅れるリスクがあります。
- 地政学リスク: 通商摩擦の激化により、特定の地域や顧客への装置輸出が制限される懸念が依然として残ります。
- 部材コストの変動: 原材料価格の推移や為替変動が、装置の製造コストや利益率に影響を与える可能性があります。
- 特定分野への依存: 生成AI関連の需要は極めて強力ですが、景気循環の影響を受けやすい半導体業界において、投資の過熱感と反動に対する警戒が必要です。
東京精密の今回の決算は、まさに「生成AIの恩恵をダイレクトに享受した内容」と言えます。特にSPE(半導体製造装置)部門の伸びは目覚ましく、業界が懸念していた中国リスクを、AI向け先端需要が完全にカバーする形となりました。
注目すべきは 営業利益率の高さ です。全社ベースで約 18.5% の営業利益率を確保しており、計測機器部門の微減益をSPE部門の圧倒的な収益力で補っています。純利益が前年比で大きく落ち込んでいるように見えますが、これは前期の特殊要因(資産売却)による「見た目上のマイナス」であり、キャッシュフローを生み出す本業の稼ぐ力はむしろ加速しています。
今後は、計測機器部門においてEV(電気自動車)市場の踊り場をどう乗り越えるか、また、生成AI関連投資が一段落した後の次なる成長軸をどこに置くかが、投資家・就活生双方にとっての長期的なチェックポイントになるでしょう。
