株式会社ADEKA の会社詳細
株式会社ADEKA
ADEKA
2026年3月期 第3四半期

ADEKA・2026年3月期Q3、純利益3.4%増の198億円——農薬好調で通期予想を上方修正、自己株買いも進展

ADEKA
4401
上方修正
農薬
半導体材料
自社株買い
増配
ライフサイエンス
樹脂添加剤
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

2,968億円

+0.1%

通期予想

4,150億円

進捗率72%

営業利益

293億円

-2.6%

通期予想

415億円

進捗率71%

純利益

199億円

+3.4%

通期予想

255億円

進捗率78%

営業利益率

9.9%

化学品大手のADEKAが10日に発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 0.1%増2,967億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は 3.4%増198億円 となりました。主力の化学品事業がEV市場の停滞や中国経済の減速で苦戦した一方、国内外で需要が旺盛な 「ライフサイエンス事業(農薬)」 が業績を下支えしました。同社は足元の堅調な推移を踏まえ、通期の売上高および各利益予想を 上方修正 しており、資本効率の向上に向けた大規模な 自社株買い も着実に実行しています。

業績のポイント

当第3四半期累計の連結業績は、売上高 2,967億円(前年同期比 +0.1%)、営業利益 293億円(同 -2.6%)と、本業の利益面では微減となりましたが、経常利益は 303億円(同 +2.4%)、純利益は 198億円(同 +3.4%)と増益を確保しました。化学品事業における数量減を、農薬を中心としたライフサイエンス事業の好調が補う構造となっています。

営業外では円安を背景とした 為替差益 15億円 を計上したことが経常利益を押し上げました。一方で、ブラジルの連結子会社における強盗事件に伴う損害賠償訴訟について、和解合意に至ったことから 特別損失(和解金)10億円 を計上しています。これら一過性の要因を含みつつも、高付加価値製品へのシフトや価格改定の効果により、最終利益ベースでは前年を上回る着地となりました。

指標2026年3月期 Q3実績前年同期実績前年同期比
売上高2,967億円2,963億円+0.1%
営業利益293億円300億円△2.6%
経常利益303億円296億円+2.4%
四半期純利益198億円192億円+3.4%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

セグメント別の状況では、ライフサイエンス事業の成長が際立つ一方、化学品事業は用途ごとに明暗が分かれる結果となりました。

ライフサイエンス事業は、売上高 703億円(前年同期比 +14.6%)、セグメント利益 50億円(同 +66.4%)と大幅な増収増益を達成しました。国内では米価高騰による農家の生産意欲の高まりから水稲向け農薬が好調に推移したほか、欧州や北米・メキシコでも果樹・野菜向けの殺虫剤・除草剤の販売が堅調でした。この分野がグループ全体の利益水準を牽引する新たな成長エンジンとして存在感を高めています。

化学品事業は、売上高 1,589億円(前年同期比 △5.1%)、セグメント利益 199億円(同 △12.2%)と低迷しました。特に樹脂添加剤は、家電やEV(電気自動車)市況の低迷に伴う世界的な競争激化が響きました。一方で、半導体材料については先端DRAM向けの材料が第3四半期から拡大基調に転じており、回復の兆しが見え始めています。

食品事業は、売上高 627億円(前年同期比 △0.5%)、セグメント利益 35億円(同 △4.7%)でした。主要市場である中国において節約志向による消費低迷が続き、製パン・製菓用マーガリンの販売が伸び悩みました。国内では植物性チーズなどの「デリプランツ」シリーズが堅調でしたが、海外市場の不振を補うには至りませんでした。

セグメント売上高前年比営業利益前年比
化学品1,589億円△5.1%199億円△12.2%
食品627億円△0.5%35億円△4.7%
ライフサイエンス703億円+14.6%50億円+66.4%
その他47億円+6.5%7億円+29.8%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
化学品1,589億円54%200億円12.6%
食品628億円21%36億円5.7%
ライフサイエンス704億円24%51億円7.2%

財務状況と資本政策

総資産は、棚卸資産の増加や投資有価証券の時価上昇などにより、前年度末比 152億円増5,584億円 となりました。自己資本比率は 55.4% と、前年度末の 54.6% からさらに改善しており、極めて強固な財務基盤を維持しています。

株主還元については、2025年8月に発表した 総額180億円を上限とする大規模な自社株買い を継続中です。当第3四半期末までに、そのうち約 97億円 分(284万株)の取得を完了しました。年間の配当予想については、前期比4円増の 104円(第2四半期末52円、期末予想52円)を据え置いています。高い財務安定性を背景に、機動的な資本政策を通じてROE(自己資本利益率)の向上と株主への利益還元を両立させる姿勢を鮮明にしています。

リスクと課題

同社が直面する課題は、外部環境の不透明感とセグメント間の業績のばらつきです。

  • 中国経済の減速リスク: 食品事業および一部の化学品において、中国市場の需要回復の遅れが直接的な下押し要因となっています。
  • EV市況の停滞: 樹脂添加剤セグメントにおいて、欧米を中心としたEV普及ペースの鈍化が販売数量に影響を与え続けています。
  • ブラジルでの訴訟影響: 今回、強盗事件に関連する和解金を計上しましたが、海外展開に伴うカントリーリスクや法務リスクの管理が引き続き重要な課題となります。
  • 原材料・エネルギーコスト: 販売価格への転嫁は進んでいるものの、物流費や人件費などの固定費上昇が利益率を圧迫するリスクとして残っています。

通期見通し

ADEKAは第3四半期までの業績の進捗と、ライフサイエンス事業の好調を反映し、2026年3月期の通期連結業績予想を上方修正しました。

項目前回発表予想今回修正予想前期実績修正率
売上高4,100億円4,150億円4,073億円+1.2%
営業利益41,000M41,500M41,018M+1.2%
経常利益41,000M41,500M39,328M+1.2%
当期純利益25,000M25,500M25,023M+2.0%

修正の背景には、農薬事業がグローバルで想定を上回るペースで伸長していることに加え、半導体材料における 先端製品(DRAM向け高誘電材料など) の本格的な回復期待があります。期末にかけて需要の盛り返しを見込み、当初の慎重な見通しを上積みました。

AIアナリストの視点

ADEKAの今回の決算は、まさに「多角化の勝利」といえる内容です。主力の樹脂添加剤がEV市況の冷え込みで苦戦する中、別軸のライフサイエンス(農薬)が大きく伸びて全体を支える理想的なポートフォリオ経営が機能しています。

投資家にとっての注目点は、業績の修正もさることながら、株主還元への積極姿勢です。180億円規模の自社株買いを淡々と実行しており、資本効率への意識の高さが伺えます。

今後は、底を打ったとされる半導体材料がどれだけ通期の利益を押し上げられるかが焦点です。特に先端DRAM向け材料の回復は、来期以降の成長力を見極める上で最重要の指標となるでしょう。ブラジルの和解金計上という特殊要因を今期中に処理できたことも、来期に向けたプラス材料と捉えられます。