デクセリアルズ・2026年3月期通期、売上高1,138億円で過去最高——生成AI・スマホ向け高付加価値製品が牽引
売上高
1,138億円
+3.1%
通期予想
1,230億円
営業利益
381億円
-4.1%
通期予想
385億円
純利益
280億円
+1.0%
通期予想
275億円
営業利益率
33.5%
デクセリアルズが発表した2026年3月期通期決算は、売上高が前期比 3.1%増 の 1,138億3,200万円 、本業の儲けを示す事業利益が 3.4%増 の 393億5,200万円 と増収増益を達成した。生成AIの普及を背景にデータセンター向けのフォトニクス関連製品が大幅に伸長したほか、ハイエンドスマートフォン向けの 形状加工異方性導電膜(ACF) など、同社が得意とする高付加価値製品の採用が拡大した。営業利益は前期の収益計上の反動もあり 4.1%減 の 380億9,700万円 となったが、売上高営業利益率は 33.5% と極めて高い水準を維持している。
業績のポイント
当連結会計年度の日本経済および世界経済は、地政学リスクの増大や為替動向の不安定さが続くなど、先行き不透明な状況で推移した。こうした中、デクセリアルズは中期経営計画に基づき、事業ポートフォリオの拡大 と高付加価値化を推進した。特に成長領域と位置づけるフォトニクス事業において、生成AIの普及に伴うデータセンター向け光トランシーバー用製品の出荷が大きく拡大し、収益を押し上げた。
売上高は 1,138億3,200万円 (前年比 +3.1% )、事業利益は 393億5,200万円 (前年比 +3.4% )と堅調な伸びを見せた。一方で、営業利益は 380億9,700万円 (前年比 -4.1% )と微減となった。これは、前期に計上された一時的な利益要因の剥落や、研究開発・設備投資の強化に伴う費用の増加が影響したものである。しかし、親会社の所有者に帰属する当期利益は 280億900万円 (前年比 +1.0% )と、最終利益ベースでも増益を確保した。
| 指標 | 2025年3月期(実績) | 2026年3月期(実績) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 110,390百万円 | 113,832百万円 | +3.1% |
| 事業利益 | 38,068百万円 | 39,352百万円 | +3.4% |
| 営業利益 | 39,735百万円 | 38,097百万円 | -4.1% |
| 当期利益 | 27,737百万円 | 28,009百万円 | +1.0% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別では、スマートフォンやデータセンター向けが好調だった電子材料部品が、PC向け需要の一服が見られた光学材料部品の落ち込みをカバーする形となった。
光学材料部品セグメント は、売上高 479億7,100万円 (前年比 5.3%減 )、事業利益 143億800万円 (前年比 1.7%減 )となった。ノートPC向け反射防止フィルム(ARF)は、上期こそ買い替え需要で好調だったが、下期に需要が落ち着きを見せた。また、前期上期で蛍光体フィルムの販売が終息したことも減収要因となった。一方で、自動車向けARFはディスプレイの大型化や採用モデル数の増加により、中国市場の競争激化に抗して微増を維持した。
電子材料部品セグメント は、売上高 667億2,400万円 (前年比 10.4%増 )、事業利益 250億4,300万円 (前年比 6.5%増 )と大幅な増収増益を記録した。主力製品の異方性導電膜(ACF)において、ハイエンドスマートフォン向けの形状加工ACFが好調に推移したことが大きい。加えて、光半導体分野ではデータセンター向け光トランシーバー用製品の需要が爆発的に増加した。二次保護ヒューズについても、電動工具向けの在庫調整が完了し、生産が回復基調に乗ったことが寄与している。
| セグメント | 売上高(前年比) | 事業利益(前年比) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 光学材料部品 | 47,971百万円 (-5.3%) | 14,308百万円 (-1.7%) | 29.8% |
| 電子材料部品 | 66,724百万円 (+10.4%) | 25,043百万円 (+6.5%) | 37.5% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 光学材料部品 | 480億円 | 42% | 143億円 | 29.8% |
| 電子材料部品 | 667億円 | 59% | 250億円 | 37.5% |
財務状況と資本政策
当連結会計年度末の総資産は 1,651億400万円 となり、前期末比で 132億8,200万円増加 した。有形固定資産が 768億5,800万円 (前期末比 271億5,500万円増 )と大きく膨らんでおり、将来の成長に向けた積極的な設備投資が鮮明になっている。一方で、自己資本比率は 66.2% (前期末は 63.2% )へ上昇し、強固な財務基盤を維持している。
株主還元 については、連結配当性向40%を目途とする方針に基づき、当期の年間配当を 58円 と決定した。2024年10月に実施した1対3の株式分割を考慮した実質的な配当水準は、DOE(親会社所有者帰属持分当期利益率)7%以上という目標を背景に、安定した還元を維持している。また、当期中に 59億9,200万円 の自己株式取得を実施し、機動的な資本政策を遂行した。投資家にとっては、成長投資と高還元を両立させる経営姿勢が評価されるポイントといえる。
通期見通し
2027年3月期の連結業績予想は、売上高 1,230億円 (前年比 8.1%増 )、事業利益 400億円 (同 1.6%増 )を見込む。成長領域であるフォトニクス事業を中心に設備投資や研究開発費を増強する一方、増収効果により増益を確保する計画だ。スマートフォン市場での高付加価値製品の伸長や、データセンター向け製品のさらなる拡大を想定している。
配当についても、次期は年間 64円 (中間32円、期末32円)と、当期の58円から 6円の増配 を予定している。為替レートは1米ドル= 150.0円 を前提としており、急激な円高への進行がリスク要因となる。また、メモリ価格の高騰がコンシューマーIT製品の需要を減退させる可能性についても注視が必要だとしている。
| 項目 | 2026年3月期(実績) | 2027年3月期(予想) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 113,832百万円 | 123,000百万円 | +8.1% |
| 事業利益 | 39,352百万円 | 40,000百万円 | +1.6% |
| 営業利益 | 38,097百万円 | 38,500百万円 | +1.1% |
| 当期利益 | 28,009百万円 | 27,500百万円 | -1.8% |
リスクと課題
経営陣は、今後の事業展開における主要な課題として以下の点を挙げている。
- IT市場の変動: メモリ価格の高騰によるノートPCやスマートフォンの生産台数への影響。
- 地政学リスク: 中東情勢の緊迫化に伴う物流コストの上昇やサプライチェーンへの影響。
- 競争環境: 中国の自動車市場におけるEV化進展と、それに伴う現地メーカーとの価格競争の激化。
- 研究開発の加速: フォトニクス領域など新事業の立ち上げを加速するための、優秀な人材の確保と研究開発投資の効率化。
同社は、特定の顧客や製品への依存度を下げる「事業ポートフォリオの分散化」をさらに進めることで、外部環境の変化に強い体質の構築を急いでいる。
デクセリアルズの決算で特筆すべきは、営業利益率33.5%という、製造業としては驚異的な収益性の高さです。これは、同社が単なる部材メーカーではなく、他社が模倣しにくい独自の「形状加工ACF」などの知的財産に裏打ちされた高付加価値製品に特化していることの証左と言えます。
特に注目したいのは、データセンター向けの光トランシーバー用製品の伸びです。生成AIブームを背景に、通信トラフィックの爆増は長期的なトレンドであり、同社が「フォトニクス事業」を成長の柱に据えた戦略は、市場の追い風を的確に捉えています。
懸念点としては、次期利益予想が売上高の伸びに比べて慎重(事業利益1.6%増)であることです。これは、将来の成長に向けた先行投資(R&Dや設備投資)を優先するフェーズに入ったことを示唆しています。短期的な利益成長の鈍化を、次なる飛躍への「仕込み」と評価できるかどうかが、投資家としての判断の分かれ目になりそうです。
