ヒロセ電機・2026年3月期Q3、売上高8.4%増の1,565億円——産業用回復で通期予想を上方修正
売上高
1,565億円
+8.4%
通期予想
2,050億円
営業利益
325億円
-5.0%
通期予想
410億円
純利益
248億円
-10.0%
通期予想
305億円
営業利益率
20.8%
コネクタ大手のヒロセ電機が発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上収益が前年同期比 8.4%増 の 1,565億4,900万円 となりました。産業用機器向けビジネスの回復や自動車向けの堅調な推移が増収を牽引した一方、営業利益は民生用機器向けの軟調さが響き、同 5.0%減 の 325億300万円 に留まりました。同社は為替動向と一般産業向けの想定以上の進捗を背景に、通期の業績予想を上方修正しています。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の売上収益は 1,565億4,900万円(前年同期比 +8.4%)と増収を確保しました。国内では設備投資を中心に需要が底堅く推移し、海外でも米国市場がインフレ鈍化の中で一定の成長を維持したことが寄与しています。特にこれまで調整局面にあった産業用機器向けビジネスが回復から成長基調へ転じたことが、全体の押し上げに大きく貢献しました。
利益面では、営業利益が 325億300万円(前年同期比 -5.0%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は 248億1200万円(同 -10.0%)と、増収ながらも減益となりました。スマートフォンやタブレットなどの民生用機器向けが軟調に推移し、製品ミックスの変化や原材料価格の高止まりが利益を圧迫した形です。ただし、四半期包括利益は為替換算差額の好転により 388億1,700万円(同 +42.7%)と大幅なプラスを記録しています。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 144,422百万円 | 156,549百万円 | +8.4% |
| 営業利益 | 34,215百万円 | 32,503百万円 | -5.0% |
| 税引前利益 | 37,468百万円 | 35,294百万円 | -5.8% |
| 四半期利益 | 27,583百万円 | 24,812百万円 | -10.0% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力セグメントである多極コネクタ事業は、売上収益が 1,379億6,800万円(前年同期比 +5.6%)となりました。スマートフォンやカーエレクトロニクス、FA機器など幅広い分野で採用されていますが、営業利益は 279億4,000万円(同 -12.0%)と苦戦しました。収益性の高い民生用の一部製品が伸び悩んだことが主な減益要因となっています。
一方で、同軸コネクタ事業は売上収益 134億3,200万円(前年同期比 +34.5%)、営業利益 42億8200万円(同 +82.2%)と驚異的な成長を見せました。アンテナ接続用の高性能コネクタがスマートフォンや自動車のGPS向けに拡大しており、高度情報通信ネットワーク化の波を的確に捉えています。利益率も大幅に向上しており、グループ全体の収益を支える新たな柱として存在感を高めています。
| セグメント | 売上収益 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 多極コネクタ | 137,968百万円 | +5.6% | 27,940百万円 | △12.0% |
| 同軸コネクタ | 13,432百万円 | +34.5% | 4,282百万円 | +82.2% |
| その他 | 5,149百万円 | +34.7% | 281百万円 | +126.6% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 多極コネクタ | 1,380億円 | 88% | 279億円 | 20.3% |
| 同軸コネクタ | 134億円 | 9% | 43億円 | 31.9% |
| その他 | 51億円 | 3% | 3億円 | 5.5% |
通期見通しの上方修正
同社は第3四半期までの好調な受注状況と為替環境を踏まえ、2026年3月期の通期連結業績予想を引き上げました。修正後の売上収益は前回予想から50億円上振れの 2,050億円、営業利益は10億円上振れの 410億円 を見込んでいます。一般産業向けビジネスが想定を上回るペースで回復していることが修正の主因です。
想定為替レートは1米ドル= 150.00円、1ユーロ= 174.00円 と設定されており、足元の実勢レートに合わせた現実的な修正となっています。期末配当予想については、前回発表の1株当たり 245円(年間 490円)を据え置いています。業績の上方修正により、1株当たり当期利益は 911.47円 まで高まる見通しです。
| 項目 | 前回発表予想 | 今回修正予想 | 前期実績(25/3) | 修正幅 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 200,000百万円 | 205,000百万円 | 189,420百万円 | +2.5% |
| 営業利益 | 40,000百万円 | 41,000百万円 | 42,672百万円 | +2.5% |
| 純利益 | 30,000百万円 | 30,500百万円 | 33,033百万円 | +1.7% |
財務状況と資本政策
財務基盤は極めて強固であり、資産合計は 4,278億2,700万円 に達しています。親会社所有者帰属持分比率は 88.3% と高水準を維持しており、盤石な自己資本を背景とした機動的な投資が可能な状態です。キャッシュ・フロー面では、営業活動により 332億7,100万円 の現金を創出し、これを将来の成長投資と株主還元に充当しています。
資本政策においては、積極的な株主還元姿勢が鮮明です。当期間中に自己株式の取得に 150億1,800万円 を投じており、総還元性向への配慮が見て取れます。また、2025年7月には半導体テスト製品事業を展開する株式会社エス・イー・アールを連結子会社化するなど、既存のコネクタ事業に留まらない成長ドライバーの確保に向けた投資も加速させています。
リスクと課題
堅調な業績の一方で、同社は複数の外部リスクを注視しています。特に製造業全般に影響を与える以下の要因が、今後の不透明感として挙げられています。
- 地政学リスクと貿易政策: 米国の関税政策の動向は、グローバルな供給網を持つ同社にとって直接的なリスク要因となります。
- 中国市場の停滞: 売上収益の 37.6% を占める中国市場において、不動産市場の調整や内需回復の遅れが長期化する懸念があります。
- 原材料・コスト増: 高止まりする原材料価格やインフレ圧力による販管費の増加が、利益率を押し下げる要因となっています。
- 民生用機器の需要変動: スマートフォン等の買い替えサイクルの長期化など、特定分野の需要軟化が継続するリスクがあります。
ヒロセ電機の決算で特筆すべきは、営業利益率が20.8% という驚異的な収益性の高さです。製造業平均を大きく上回るこの数字は、多品種少量生産や高付加価値製品への特化という同社の独自の強みを証明しています。
今回の増収減益という結果は、一見ネガティブに見えますが、中身を見ると「同軸コネクタ」という次世代の柱が 80%以上の利益成長 を見せている点が非常にポジティブです。スマホ向けへの依存を減らし、自動車や産業機器へのポートフォリオ転換が着実に進んでいると言えます。
また、持分比率 88%超 という「超ホワイト財務」は、景気後退局面での耐性が強いだけでなく、エス・イー・アールの買収に見られるような、非連続な成長に向けた積極的な投資余力として評価すべきポイントです。投資家・就活生の双方にとって、安定性と成長性を兼ね備えた優良銘柄の典型例と言えるでしょう。
