日立製作所・2026年3月期Q3、純利益48%増の6,385億円——ITと送電網が絶好調、1,000億円の自社株買いも発表
売上高
7.5兆円
+7.0%
通期予想
10.5兆円
営業利益
8,257億円
+26.1%
通期予想
1.1兆円
純利益
6,386億円
+48.2%
通期予想
7,600億円
営業利益率
11.0%
売上高は前年比 7%増 、純利益は 48.2%増 と大幅な増益を達成しました。DXを支援する Lumada や、世界的な脱炭素シフトによる送電網(パワーグリッド)の需要増が業績を強くけん引しています。好調な業績を受け、 1,000億円 の自社株買いなど株主還元も強化しています。
業績のポイント
全体の売上収益は 7兆5,017億円 (前年比 7.0%増 )となりました。
本業の儲けを示す調整後営業利益は 8,257億円 (前年比 26.1%増 )です。
利益率は前年の 9.3% から 11.0% へと大きく改善しました。
ITサービスとエネルギー事業が成長し、過去最高の業績水準にあります。
円安の影響もプラスに働き、収益を押し上げる要因となりました。
業績推移(通期)
セグメント別動向
- デジタルシステム&サービス: 売上 2兆412億円 (前年比 2%増 )。DX需要を背景に Lumada 事業が好調を維持しました。
- エナジー: 売上 2兆2,906億円 (前年比 23%増 )。パワーグリッド事業が世界的な送電網への投資拡大を捉えて激増しました。
- モビリティ: 売上 9,348億円 (前年比 12%増 )。鉄道システムの受注が堅調で、安定した収益を上げています。
- コネクティブインダストリーズ: 売上 2兆3,276億円 (前年比 2%減 )。半導体製造装置は好調でしたが、家電等の構成変化で微減となりました。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| デジタルシステム&サービス | 2.0兆円 | 27% | 2,851億円 | 14.0% |
| エナジー | 2.3兆円 | 31% | 2,907億円 | 12.7% |
| モビリティ | 9,349億円 | 13% | 719億円 | 7.7% |
| コネクティブインダストリーズ | 2.3兆円 | 31% | 2,701億円 | 11.6% |
財務状況と資本政策
総資産は 14兆6,847億円 となり、前期末より 1兆3,999億円 増えました。
営業活動によるキャッシュフローは 1兆1,618億円 と大幅な黒字です。
株主還元として、新たに 1,000億円 の自社株買いを決定しました。
中間配当は 23円 とし、前年同期の 21円 から増配しています。
稼いだ現金を成長投資と還元にバランスよく振り分けています。
戦略トピック
事業の「選択と集中」をさらに進める経営判断を下しました。
日立建機 や Astemo の株式を一部売却し、資産の効率化を図っています。
一方で、デジタル領域ではドイツのIT企業 synvert社 を買収しました。
AIやデータ活用分野の専門性を高め、IT事業の競争力を磨いています。
通期見通し
年間の業績予想を 上方修正 しました。
売上収益は 10兆5,000億円 、純利益は 7,600億円 を見込んでいます。
これは前回予想より純利益で 1,600億円 も上振れる計画です。
ITとグリーンの両市場が想定以上に強いことが修正の主な理由です。
リスクと課題
- 為替相場の急激な変動による利益の振れ。
- 地政学リスクに伴うサプライチェーンの混乱。
- 原材料価格の変動や部品不足による生産への影響。
- IT人材の確保と育成における競争の激化。
日立製作所は、かつての「重電の総合デパート」から、ITとエネルギーを核とした「高収益なグローバル企業」への変革を完全に見せつけました。
特に、スイスのABBから買収したパワーグリッド事業が、世界的な脱炭素・電化の流れに乗って爆発的な成長エンジンとなっています。IT(Lumada)とのシナジーも明確で、単なる製造業ではなく「社会インフラのDX企業」として独自の地位を築いています。
注目すべきは資本効率への意識の高さです。日立建機やAstemoといったかつての主力事業の一部を切り離す判断は容易ではありませんが、それによって得た資金を成長分野の買収(synvert社など)や自社株買いに充てるサイクルは、投資家から非常に高く評価されるポイントです。
就職活動中の学生にとっても、日本企業の中で最もダイナミックに構造改革を成功させた「グローバル・リーダー」としての魅力が一段と増した決算と言えるでしょう。
